( 242334 )  2024/12/31 16:44:22  
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定年後も働き続ける高齢者が増えており、その理由は経済的な問題が大きい。

記事では、元エリートだった亀井さん(仮名)の事例を通じて、高齢者の就労現状や課題についてFPの三原由紀氏が解説している。

亀井さんは定年後に離婚と資産分与で厳しい経済状況に直面し、リゾートバイトなどの仕事を経て収入を得ようとしたが、厳しい現実を知ることとなった。

高齢者が働く理由の多くは収入不足であり、将来の老後破産を避けるためには早期から資産形成やリアルな老後設計、年金以外の収入源を確保することが重要とされている。

(要約)

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(※写真はイメージです/PIXTA) 

 

定年後も働き続ける高齢者が増えています。その理由はさまざま、経済的な理由で仕方なく働く人は少なくありません。なかには、現役時代の収入が高いにもかかわらず、セカンドライフになって経済的に困難な状況に陥るケースもあるようで……。本記事では、亀井さん(仮名)の事例とともに、高齢者の就労の現状と課題について、合同会社エミタメの代表を務めるFPの三原由紀氏が解説します。 

 

亀井さん(仮名/67歳)は専門商社で部長を務めた元エリートです。現役時代の最高月収は90万円程度。38年にわたる会社人生で培ったスキルと経験は、誰もが羨むキャリアの証。しかし、定年退職後に待ち受けていたのは、予想もしなかった人生の急展開でした。 

 

60歳で突然の熟年離婚、財産分与により手元に残ったのは、わずか預貯金1,000万円と分割された月14万円の年金。かつての「勝ち組」と呼ばれた彼の人生は、一転して厳しい経済的現実に直面することになります。 

 

シニア求人を探す日々 

 

65歳までは継続雇用でなんとか暮らせていましたが、年金生活に入ると首都圏での賃貸暮らしは経済的に厳しくなりました。ハローワークで求人を探す日々。警備や介護施設の送迎業務など、デスクワーク一筋だった彼にはピンと来ない仕事ばかり。 

 

そんななか、ネットで求人情報を検索していた彼の目に留まったのが「リゾバ」の文字。リゾートバイトの略です。「この年で求人なんてあるのかな」と半信半疑で調べてみると、60代でも少ないながら求人があることがわかりました。 

 

学生時代のスキー場バイトの懐かしい思い出と、自由を謳歌したいという渇望が、亀井さんを新たな挑戦へと突き動かしました。 

 

「住居と食事が提供されるなら一石二鳥。いや、収入もついてくるから一石三鳥だ!」と確信します。元来、自由奔放な性格で、束縛が嫌いだった亀井さん。「離婚していまや自由を謳歌できる! 全国を移動しながら働けるなんて最高じゃないか」人生最後の冒険に、期待と不安が入り混じりながら、リゾートバイトの世界へ飛び込んでいきます。 

 

 

勤務先は山間部にあるホテル。配属先は洗い場、調理補助、客室清掃などの裏方業務です。デスクワーク歴43年の亀井さんにとって、フィジカルな仕事は想像以上に過酷でした。また、亀井さんが働き始めたのは、12月の初旬。年末年始はこのホテルが1年で最も忙しい繁忙期です。慣れない環境に心身の疲労もピークに達し、ついに大晦日の午後、失態を犯してしまいます。 

 

「おっさん、ちんたらすんな。チェックインに間に合わねーぞ!」 

 

 

すれ違いざまに20代のガテン系バイトリーダーから「……チッ!」と聞こえました。「えっ、いま俺、舌打ちされたのか? あんな40も年下の子に?」と亀井さんは動揺を隠せません。単純作業だと甘くみていましたが、教わったことが覚えられず、要求されるスピードについていけないのです。なんとか2ヵ月の契約期間を死に物狂いで乗り切りましたが、「こんな生活を続けるなんて無理だ」と悟ります。 

 

 

三食しっかり食べられて、家賃光熱費は会社持ち、そのうえで給与が出るなんて最高だと思っていましたが、現実は厳しかったのです。時給換算すると1,200円。2ヵ月働きつづけて手元に残ったのは30万円ほど。頑張った自分を褒めてあげたいですが、これは続けられないと痛感した亀井さんでした。 

 

総務省「家計調査年報」(2023年)によると、単身の65歳以上無職世帯の1ヵ月の支出は14万5,430円、そのうち住居費は1万2,564円です。この住居費の金額からみて、持ち家がないと、この金額で暮らしていくのは厳しい状況だといえます。 

 

内閣府の「高齢者の経済生活に関する調査」によれば、高齢者が仕事をしている理由として「収入がほしいから」が45.4%で最も多いです。つまり、経済的な理由で働かざるを得ない高齢者が少なくないのが現状です。 

 

亀井さんのように、定年後も働き続ける高齢者が増えている背景には、年金だけでは生活が厳しい経済状況があるといえます。特に、持ち家がない場合や離婚などで資産が減少した場合、老後破産のリスクは高まります。 

  

 

 

亀井さんのケースから学べる老後破産を避けるための対策は以下のとおりです。 

 

早期からの資産形成 

 

現役時代から、投資や貯蓄を通じて資産形成を行います。特に、老後の住居費を抑えるため、可能であれば持ち家を確保します。 

 

亀井さんは想定外の離婚で持ち家を失いましたが、田舎にある実家を妹との共有名義で所有しているとのことです。売却しても二束三文とのことで処分を決めかねていましたが、妹の持分を買い取ることができれば、住まい問題は解決できます。 

 

リアルな老後設計 

 

離婚や予期せぬ出費など、最悪のシナリオも想定した老後の生活設計を行いましょう。亀井さんが離婚したのは60歳ですが、65歳までに真剣に向き合っていれば、もう少しマシな判断ができたかもしれません。 

 

ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談すべきでしたが、いまからでも遅くはありません。90歳(できれば100歳)までのお金の流れをキャッシュフロー表で確認したほうがよいでしょう。 

 

年金以外の収入源の確保 

 

副業や趣味を活かした小規模ビジネスなど、年金以外の収入源を確保します。 

 

老後破産は、まじめに勤め上げた会社員であっても起こりうる問題です。亀井さんのような苦い経験をしないためにも、早い段階から老後に向けた準備を始めることが重要です。年金だけに頼らず、複数の収入源を確保し、柔軟に対応できる経済力を身につけることが、安定した老後生活への近道と言えるでしょう。 

 

三原 由紀 

 

合同会社エミタメ 

 

代表 

 

三原 由紀 

 

 

 
 

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