( 242369 )  2024/12/31 17:26:31  
00

「おふたりさま」の増加による老後の不安や心配がある状況を踏まえ、著者である終活の専門家の松尾氏が、高齢者がお金を溜め込みすぎる問題について解説している。

高齢者たちが「お金を残す過剰貯蓄」の問題を提起し、老後に必要な金額を見極めて計画的に使うことの重要性を指摘している。

年を取れば食費や娯楽費は減る一方で、健康や体力も衰えるため、お金を残し過ぎてしまう高齢者が増えている実態を伝えている。

(要約)

( 242371 )  2024/12/31 17:26:31  
00

お金を溜め込みすぎる高齢者について解説します(写真:tsukat/PIXTA) 

 

結婚しても子どもをもたない夫婦、いわゆる「おふたりさま」が増えている。 

共働きが多く経済的に豊か、仲よし夫婦が多いなどのメリットはあるものの、一方で「老後に頼れる子どもがいない」という不安や心配がある。 

そんな「おふたりさまの老後」の盲点を明らかにし、不安や心配ごとをクリアしようと上梓されたのが『「おふたりさまの老後」は準備が10割』だ。 

 

著者は「相続と供養に精通する終活の専門家」として多くの人の終活サポートを経験してきた松尾拓也氏。北海道で墓石店を営むかたわら、行政書士、ファイナンシャル・プランナー、家族信託専門士、相続診断士など、さまざまな資格をもつ。 

 

その松尾氏が、お金を溜め込みすぎる高齢者について解説する。 

 

■「お金を残しすぎる高齢者たち」の問題 

 

 2019年頃、「老後2000万円問題」という言葉が話題となりました。 

 

 これは金融審議会「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書による「老後30年間で約2000万円の金融資産が不足する可能性がある(平均的な高齢夫婦の場合)」という指摘です。 

 

 では、実際はどうでしょうか。 

 

 総務省の「家計調査(貯蓄・負債編)」(2023年)によれば、60~69歳の平均貯蓄額は2432万円、70歳以上では2503万円となっています(2人以上の世帯)。 

 

 平均だけを見れば、十分クリアしていることになりますね。 

 

 しかし、あくまでもこれは平均値です。 

 

 実際には「貯蓄ゼロ」の世帯もあれば、5000万円オーバーから億単位のお金を持っている方もいます。 

 

 もちろん、お金がなさすぎるのは不安なものですが、実際には年金+α(少々の貯蓄)でも、意外に暮らしていけているという人が多いのも現状です。 

 

 「なければないで、なんとかなる」という考え方もあるのです。 

 

 むしろ私が問題だと思うのは「お金を残しすぎる高齢者たち」の問題です。 

 

 私は「終活の専門家」として、日々多くの人たちから老後のお金の相談を受けています。 

 

 そこで強く感じるのは、「お金を貯め込みすぎている人がとても多い」ということです。 

 

■年をとるほど、お金はいらなくなる 

 

 年金で足りない分を補うために、2000万円程度を目指して貯蓄するのであればいいのです。 

 

 しかし、とうてい使いきれないほどの金融資産を抱えたまま老後に突入し、ほとんど手つかずのまま亡くなっていく人のなんと多いことか。 

 

 

 老後が不安なのはわかります。 

 

 でも現実を見れば、老後は現役世代のようにお金がかかるわけではありません。 

 

 70代、80代になれば、それほどたくさん食べられません。 

 

 旅行や遊びに行こうにも、気力も、体力もなくなります。 

 

 物欲も薄れ、欲しいものもなくなります。 

 

 若いときはゴルフや旅行などのぜいたくを好んでも、年をとれば「いまは庭いじりをするのが何より幸せ」「出かけるのは朝の散歩と日常の買い物だけ」といった人が増えてきます。 

 

 80歳の人に100万円を渡して「好きに使え」と言っても、使いどころがなくて困ってしまうのが現状なのです。 

 

 そう、高齢になればなるほど、お金は不要になるのです。 

 

 もちろん、現役時代よりも医療費や介護費などは必要になるかもしれません。 

 

 しかし国民皆保険制度のある日本において、自己負担額が何千万円にも上るといった可能性はほぼないと言ってよいでしょう。 

 

 ですから、まだまだ元気な50代、60代のうちに、「計画的にお金を使って楽しむ」ことをしてほしいと思うのです。 

 

 もちろん、お子さんやお孫さんに財産を残したいという気持ちもわかります。 

 

 でも、自分で築いた財産は、自分の楽しみに使ったほうがいいというのは、たくさんの高齢者を見てきた私の思いでもあります。 

 

 それに、親のお金をあてにしない人生のほうが、結果的にはお子さんやお孫さんのためになるのではないでしょうか。 

 

■「いまさら『お金の使い道』も『欲しいもの』もない」 

 

 ここで、2つのケースを紹介します。 

 

独身でコツコツ働いてきたKさんのケース 

 

 独身で長年働き続け、慎ましい生活を送りながら老後のためにコツコツと数千万円の資産を築いたKさん。 

 

 いざ老境に入ると、「いまさら『お金の使い道』もないし、『欲しいもの』もない」とおっしゃいます。 

 

 遺言書も作成済で、すべて団体等に遺贈するとのこと。 

 

 Kさんは現在施設に入居されていますが、「もっと設備の整ったいい施設がありますよ」とすすめても「近くの、普通のところでいい」というのです。 

 

 なんのためにまじめに働き、お金を貯めてきたのかと思うと、せつなくなります。 

 

 

一度に億単位のお金を手にしたNさんのケース 

 もうひとりは、長年社長を務めてきたNさんです。 

 

 Nさんは在職中に会社をどんどん大きくし、引退時に保有していた自社株をお金に換えたため、いきなり数億円を手に入れることになりました。 

 

 実際には、資産管理会社を設立するなどのアドバイスをしていますが、「この年でいきなりこんなにお金をもらっても、どうしたらいいかわからない。もっと早くお金が欲しかった」というのが正直なところだそうです。 

 

■アリは本当に幸せだったのか 

 

 お金を上手に使って人生を楽しむにも、知識や経験が必要です。 

 

 旅行に行ったことがない人に「旅行でもしてみたらどうですか?」とすすめても、どうやって手配をすればいいのかわからないのです。 

 

 若いうちからある程度、自分の好きなこと、やりたいことにお金を使う訓練をしておくのは、老後生活を楽しむコツといえるかもしれません。 

 

 「アリとキリギリス」というイソップ寓話があります。 

 

 備えることに夢中で遊ぶことを忘れたアリよりも、人生を楽しんだキリギリスのほうがじつは幸せなのではないか──そう感じることも多いのです。 

 

 若いときに爪に火を灯すような生活を送り、年をとって気力も体力も衰えてからお金持ちになっても意味はない、と私は思います。 

 

 必要なお金を貯めることも大切ですが、しっかり使って人生を楽しむことも忘れないでください。 

 

松尾 拓也 :行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家 

 

 

 
 

IMAGE