( 242546 ) 2025/01/01 04:06:15 0 00 スキー場のレストハウスではアルコールを提供するケースも(イメージ)
本格的に冷え込み、ウインタースポーツが盛んになる季節だが、Xではスキー場での飲酒に関する投稿が議論を呼んでいる。表示回数120万を集めたあるポストでは、スキー場で飲酒をしていたら“マナー違反”だとして非難されたことを明かしたうえで、「飲酒がだめならスキー場でビールは売ってません」と主張。これに対し、様々な意見が飛び交っているのだ。
全国スキー安全対策協議会が国内統一の基準として制定した「スノースポーツ安全基準」によると、「飲酒や薬物等の影響により、心身が正常でない状態で滑走すること」は危険行為として禁止、さらに「酩酊状態での滑走は禁止」とされている。とはいえ、「リゾート施設」としてアルコールの提供を行うスキー場も多いことから、意見が分かれているのが現状だ。
実際、スキー場での飲酒はどこまでOKなのだろうか。現場に携わる人たちの話を聞いた。
長野県のスキー場でインストラクター経験があり、毎冬スキーを楽しんでいるAさん(30代)は、「お酒を飲むのもスキー場の楽しみ方のひとつではある」と語る。
「冬のゲレンデはリゾートでもあることから、アルコール提供は当たり前のように行なわれてきました。法律違反ではないので、飲酒運転ほど厳しい取り締まりもない。酔っ払った状態で滑っている人がいなかったとは言い切れませんが、怪我をするのは本人なので、ベロベロに酔った状態で滑る発想はない人が多かったのでは。少なくとも、僕がインストラクターをするなかで、飲酒による事故が起きたという話は聞いたことがありません」(Aさん)
ただしAさんは、「客層の変化によるマナーの低下」は懸念する。そしてたしかに、“飲酒スキー”の痕跡を目にしたこともあるという。
「最近は外国人観光客も多くなり、滑るというよりは、騒ぐことを目的に訪れる人が増えた印象です。ゲレンデマナーが悪い人は以前からいて、代表的なのはタバコのポイ捨てですが、最近はビールやチューハイの空き缶がポイ捨てされているのも珍しくなくなりました。リフト付近やコースの脇などで、雪に埋められるように捨ててある場合もあり、非常に危険です」
ただ、スキー場にとってアルコールの売上は無視できない。Aさんは、「利用約款を遵守する意識を持ってもらうよう、働きかけることが現状の対策として精一杯ではないか」と話す。
スキー場でのアルコール摂取については、すでに2021年、プロスキーヤーの吉田勝大さんが自身の公式YouTubeチャンネルで問題提起していた。吉田さんは、アルコール販売を全面的に否定しているわけではないとしたうえで、飲酒スキーの実態に、“もしかしたらいつか問題が起こるのではないか”と不安になったことを告白。X(当時のTwitter)で募集した意見を発表した。
動画で紹介された声は、「アルコール類の販売はいいと思う。気持ちだけでルール化すべきでない」「法的に問題がなくても、そもそも危険行為なのだから禁止すべき」など、様々な意見があった。吉田さんは、「スキー場が、今より少しでも誰もが安全に楽しめる場所になればと思う」と暗にマナー遵守を呼びかけた。
実際、スキー場の運営会社はどう思っているのか。前述「スノースポーツ安全基準」では飲酒により『心身が正常でない状態で滑走すること』を禁止しているが、“心身が正常でない状態”の解釈として、人によっては「ビール1缶ならそれほど酔わないし、特に影響はない」と考える利用者がいるのは想像に難くない。
冒頭のXで話題となった“現場”である、九州最大規模を誇るスキー場「九重森林公園スキー場」(大分県玖珠郡九重町)に話を聞くと、担当者は「酔った状態での滑走は危険と考えており、張り紙や館内放送による注意喚起などを行っています」と対策を話す。一方で、「アルコール類の提供中止」や「飲酒の全面禁止」には、なかなか踏み出せない事情があるという。
「スキー場はスキー・スノーボード等をするスポーツ施設ではありますが、リゾートという側面もございます。現状では、ゲレンデやレストラン、ハウス内等で酩酊状態のお客様にはお声をかけさせていただき、滑走禁止を通告することはございますが、その他の状況であれば利用者のモラルに委ねております」
担当者は、「この議論の先には『スキー場内全面飲酒禁止』というリゾート施設としましてはあまり望ましくない状況も考えられます」とも話した。個々人が判断するしかない問題だからこそ、周囲への迷惑にならないように留意したい。
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