( 242814 )  2025/01/01 17:02:31  
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日本の経済が失速し、会社と社員の関係、仕事と個人の関係が変わったことが理由で、入社後3年以内に辞める若手が多い。

過去には終身雇用や年功序列の制度が主流で、会社が育成し続けてきたため離職率は低かった。

しかし、成果主義が注目されるようになり、若者は自分のキャリアを設計し、働きがいを重視するようになった。

早い段階で転職することで自分に合わない会社で時間を無駄に過ごさず済む可能性もあるが、上司や先輩が若手社員と向き合い、働きがいを提供することが重要だと指摘されている。

(要約)

( 242816 )  2025/01/01 17:02:31  
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「3年以内に辞める若手」が多いのはなぜ? 

 

 入社後3年以内に離職する大卒者の割合は、過去20年間、概ね3割前後で推移しています。先に結論を言ってしまうと、これは日本経済が失速して、会社と社員の関係、仕事と個人の関係が変わってしまったことに由来します。 

 

 1980年代、まだ日本の景気が良かったころは、求人が多く、企業の採用基準が引き下げられていました。 

 

 企業にはまだ体力があり、「やる気」さえあれば会社が面倒をみてくれた時代です。社員数が売り上げに直結していたため、多くの学生を採用し、「辞めさせない人事」が主流でした。当然、離職率も低下します。 

 

 反対に不景気には求人が減り、採用基準は引き上げられました。学生は、不本意ながら志望に合わない企業に入社する「不本意就職」をせざるをえなくなり、離職率が上がりました。 

 

 1990年代、とうとうバブルが崩壊し、製造業の就業者数が激減しました。 

 

 その一方でサービス業への就業者数が増加。製造業では、終身雇用が色濃く残ります。長期的視点で人材育成をしており、福利厚生も手厚いため、離職率は低い傾向でした。反対に飲食業界などのサービス業は早期離職率が高く、どんどん採用しなければ間に合わなかったため、積極採用を続けたのです。 

 

 そして2000年代に入り、終身雇用や年功序列と呼ばれる日本の雇用制度が崩壊し始めます。このころから成果主義が注目されるようになったのです。 

 

 こうして、システマチックな人事制度に基づいて右肩上がりで昇給する将来は来なくなりました。この現実を目の当たりにし、「こんな会社、辞めてやる!」と若者の早期退職に拍車がかかります。 

 

 会社に人生を預けることができなくなった就活生は、「自分の人生=仕事=キャリア」は自分で設計しなければいけないと考えるようになりました。そして「働きがい」を重視した就職活動を始めます。 

 

 キャリアに対する意識が高い学生ほど、会社に固執せず、スキルを身に付けたいと考える傾向にありました。 

 

 その一方、思っていた仕事ではないからと、安易にダイレクトリクルーティングで転職してしまい、結果的にキャリアが積みあがらなかった話も多く聞きます。 

 

 入社3年目の若手は、ダイレクトリクルーティングを活用して転職すれば、自分に合わない会社でこの先何十年とくすぶった時間を過ごさずに済むかもしれません。企業もミスマッチングな社員を何十年も抱えずに済みます。 

 

 しかし、「入社3年で3割離職」は、直属の上司や先輩がきちんと向き合うかどうかで決まると思います。若手社員にとって、働きがいの要素を占めるのは「上司・先輩が自分の仕事を認めてくれるか」「所属チームの一員として頑張れているか」「仕事の仲間がいるか」だからです。 

 

 木を見ても森を見ることができない入社3年生の「目」となり、森の景色やその素晴らしさを教えることが、上司や先輩の仕事です。そういった人材が会社にどれだけいるかがこの課題を乗り越えるポイントではないでしょうか。 

 

(水野臣介、オーピーエヌ 代表取締役社長) 

 

ITmedia ビジネスオンライン 

 

 

 
 

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