( 243229 ) 2025/01/02 15:58:48 1 00 兄弟コンビのミキの昴生さんが、弟の亜生さん扮した獅子舞にドッキリでかまれ続ける様子が「秒で獅子舞がはなさない」として話題になっている。 |
( 243231 ) 2025/01/02 15:58:48 0 00 兄弟コンビ・ミキの昴生さんが、弟の亜生さん扮した獅子舞に延々とかまれ続けるドッキリ「秒で獅子舞がはなさない」。“正月の風物詩ドッキリ”として愛されている(写真:©️フジテレビ)
近年、テレビ業界においても無視できないほど“コンプライアンスの波”が押し寄せている。特にバラエティ番組では、ツッコミひとつとっても、すぐに「いじめではないか?」と炎上してしまうことが多々ある。
「コンプライアンスを気にするがあまり、テレビがつまらなくなった」という声も上がるほど、その影響は番組制作にも大きな影響を与えている。
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■「コンプライアンス」という壁にどう向き合うのか
毎週土曜日19時からフジテレビ系で放送されている『芸能人が本気で考えた! ドッキリGP』(以下、『ドッキリGP』)も、コンプライアンスという壁に向き合っている。総合演出を務めるフジテレビの中川将史さんは言う。
「よく、コンプライアンスがあるからテレビで表現できることが減った、という声を聞きますけど、それはちょっと違うなと思います。
確かに、昔やっていたバラエティ番組は過激です。でも、それらを今の価値観で見たら、笑えるものって半分もないような気がするんです。『これは今だと面白いとは言えない』というのがコンプライアンスの意識に近かったりするのかなと。
その時代によって笑えるものは少しずつ変わってきている。僕らも笑えないものは作りたくない。それは自然な流れだし、コンプライアンスに萎縮するつもりはありませんが、そういう感覚を番組作りの参考にしています」(中川さん)
実際にドッキリ番組は、その演出方法からも、コンプライアンス違反や行きすぎた内容ととらえられ、批判やクレームの対象になるケースが多い。それは『ドッキリGP』も例外ではない。それでも中川さんは、コンプライアンス時代であってもドッキリ番組を続けていくべきだと考えている。
「あらゆるジャンルの番組に好き嫌いがあるわけで、ドッキリも好きな人、嫌いな人といると思います。
番組を作る際、僕の最大目標は『視聴者の皆さんに腹筋が崩壊するほど笑ってもらいたい』という一点だけ。どんなに過激なことや派手なこと、斬新なことをしても笑えないものは失敗なんですよ。『可哀想、笑えない』という声が強すぎるものは決して面白いものではない。
『ドッキリGP』には否定的な意見があれば好意的な意見もあります。双方の声をしっかり受け止めて、僕らなりの“スパイシー料理”を視聴者の皆さんにお届けしていきたいですね」(中川さん)
■「痛みを伴う笑い」のとらえ方
2022年4月、放送倫理・番組向上機構(BPO)によって、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」番組は、「青少年の共感性の発達や人間観に望ましくない影響を与える可能性がある」という見解が発表されている。これは『ドッキリGP』をはじめとしたドッキリ企画を売りにしている番組にとっては無視できない話題だ。
「この“痛みを伴う笑い”というのが、一時期すごくネガティブな状況になりましたけど、個人的には“痛みを伴う笑い”=完全NGではないと考えています。
日常の中でも、人が転んでちょっとヒザを打って笑っちゃうことってあるじゃないですか。逆にヒザを打っちゃったほうも、痛いけど周りが笑っていたらなんかうれしくなっちゃった、みたいな。
笑えるという範疇であれば、“痛みが伴う笑い”はあってもいいと思っています。やっぱり身体を張った笑いは面白いですし、それがダメとなると困る演者さんもたくさんいます。ただ、やりすぎてドン引きされるのはダメ。そのギリギリのラインを守りながら、今後もチャレンジしていきたいですね」(中川さん)
中川さんが語るように、ドッキリはスパイシー料理なのかもしれない。だが辛くて食べられない代物では、料理として成立しない。辛くても美味しいからこそ、スパイシー料理ではないだろうか。
実際にドッキリ企画には「いじめじゃないの?」「不快すぎて見てられない」という批判的な声が上がることもある。そのようなネガティブな要素を感じないように視聴者を楽しませるのが、番組の総合演出である中川さんの腕の見せどころである。
「これまで多くのドッキリ番組では、騙された演者さんがドッキリだと知らされたところで、『びっくりした!』みたいなことをひと言話して終わりというパターンが多かったんですよ。
でも『ドッキリGP』では、ネタバレしたら必ず騙された演者さんにしっかりインタビューをするようにしています。ドッキリが終わった後に演者さんの“見せ場”をもう1つ作るんです。こっちがボールを一方的に投げるのではなく、向こうからも投げ返してきて爆笑をとってからVTRが終わるという、“笑いのキャッチボール”をしっかり描きたいんです。
そうすることで、笑いと同時に安心感を視聴者の皆さんに届けることができるのではないかなと思います」(中川さん)
■ドッキリ番組に必要な「お作法」
とはいえ、番組が細心の注意を払ったとしても、意図しない方向に炎上してしまうこともある。中には意図的にプチ炎上を引き起こし、世間からの注目を集めるという手法もあるが、中川さんは「番組が炎上することはあっても、演者さんが炎上してしまうことは絶対にあってはならない」と語る。
「当たり前ですがロケをするときには、『この人にドッキリを仕掛けたとき、ちゃんと笑えるようになるのか?』ということをまず考えています。
番組に出てもらった演者さんが『感じの悪い人』や『ひどい人』に見えたり、炎上したりすることは絶対に避けなくてはならない。そうなってしまうのは、演者さんに対して愛情が足りないのではないかと。
もちろん僕らもそれを完璧にできているわけではないですが、演者さんに出てもらうからには必ず面白く見えて帰ってほしい。それが“ドッキリのお作法”だなと考えています」(中川さん)
2025年1月2日の18時25分から3時間半にわたって特番『お笑いオムニバスGP 2025』が放送される。その中の人気企画といえば、お笑い芸人の猛者たちがドッキリのリアクションを競う「ドッキリツッコミGP」である。
この「ドッキリツッコミGP」は近年、「元気がない」「勢いがない」とも言われがちなフジテレビが規格外の予算をつぎ込み、新春からただひたすら視聴者を爆笑させるために総力を結集させた「お笑い祭り」である。
「さまざまなお笑いジャンルの頂点を決めるというコンセプトの特番『お笑いオムニバスGP』を立ち上げたときに、一番の得意分野を入れておきたいなということでドッキリは外せませんでした。『ドッキリGP』で仕掛けられた後に、言い返してくるのが本当に面白いひとたちがいて。『この言い返しの頂点を決めたら面白そうだな』と思ったら、『ドッキリツッコミGP』が生まれたんです」(中川さん)
■目指している「笑いの最終到達」
『ドッキリツッコミGP』の視聴者からは「久しぶりに腹の底から笑えました」「腹筋がちぎれるほど大笑いしました。人間関係で悩んでいたのですが、全部吹っ飛びました」と称賛の声が集まっている。中でも、「レジェンド・オブ・レジェンド」と呼ばれるお笑い芸人のカンニング竹山さんが放つ笑いの爆発力は凄まじい。
「僕が以前担当していた『とんねるずのみなさんのおかげでした』の中のドッキリ系の企画でも、竹山さんはつねに爆笑をさらっていました。竹山さんとは、僕が20年前にフジテレビのCSチャンネルでやっていた番組『お台場お笑い道』から一緒にやってきた関係性があって、『ドッキリGP』にも出てくださっていたので『ドッキリツッコミGP』にも竹山さんは絶対外せないなと」(中川さん)
中川さんは現在、『ドッキリGP』の他に、timeleszの菊池風磨さんとシソンヌ長谷川忍さんがタッグを組んだ『何か“オモシロいコト”ないの?』の総合演出も担当している。双方、タイプの違うバラエティ番組だが、どちらにも共通して目指している「笑いの最終到達点」があるという。
「日本人全員、息もできなくなるくらい笑い転げている、というのが、僕がバラエティ番組を制作するうえでの最終到達点なんです。でもそれはもちろん難題で、100人中100人を笑わせるのは無理かもしれません。でもできるだけ、80~90人が笑える番組を目指して作ることがマスメディアにおけるテレビバラエティのあり方であり、義務だと思います。
ドッキリ番組に対しては特に『これはダメだ』『これはひどいじゃないか』という人たちがいるのもありますが、それでも、1人でも多くの皆さんに笑っていただき、明日からまた元気に仕事や学校に行って生活してほしいなと思ってドッキリを作っているんです」(中川さん)
■ドッキリは「ある種のドキュメンタリー」
ドッキリは台本があるトーク番組やコント番組とは違って、タレントの素が見える貴重なジャンルであり、ある種のドキュメンタリーという言い方が正しいのかもしれない。
世間から賛否両論の声も上がるドッキリ番組だが、「日本全国で笑いの渦を巻き起こしたい」と願い、来る日も来る日も新企画を生み続け、我々に爆笑を届けている“お笑い番組のプロフェッショナル”がいることを忘れないでいたい。
ジャスト日本 :ライター
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