( 243289 )  2025/01/02 17:09:23  
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日本では出生率の低下と高齢化が進み、移民を受け入れる必要性が高まっているが、国内での移民政策についての議論が不十分であると指摘されている。

政党ごとに立場が別れ、移民政策をめぐって様々な意見がある。

将来的には、移民を受け入れずにいる姿勢は破綻する可能性が高いとの見方も示されている。

最悪の場合、移民問題が解決されないままでは、日本社会に混乱や対立が生じる可能性がある。

適切な移民政策を検討することが重要であるが、SNSなどでの情報収集はバイアスの影響を受けやすいため、自ら考えることが重要とされている。

(要約)

( 243291 )  2025/01/02 17:09:23  
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Photo:PIXTA 

 

 出生率低下と高齢化が進み、もはや移民の受け入れは避けられない事態とも言われる日本。しかし、国内での移民政策はまだまだ議論不足のままだ。この現状が招く最悪の未来予想図を、日米ハーフの国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが赤裸々に描く。※本稿は、モーリー・ロバートソン『日本、ヤバい。「いいね」と「コスパ」を捨てる新しい生き方のススメ』(文藝春秋)の一部を抜粋・編集したものです。 

 

● 行儀の良い移民だけが 来るわけではない 

 

 日本もIT化がより進んでいって国際化するとの報道もあります。しかし情報の国際化だけではなく、実際問題として出生率の低下や高齢化社会を迎えている以上、どうしても労働力としての「移民」を本格的に受け入れるかどうかということについて、しっかりと議論していかないといけない状況になっています。 

 

 「移民」を政治問題として考えるなら、リベラル左派政党である立憲民主党や共産党、れいわ新選組は外国人との共生と人権を優先したいと考えており、保守系の自民党と公明党、さらに日本維新の会や国民民主各党はどちらかというと彼らを便利使いしたい方向性を見せています。2023年6月に参院本会議で可決・成立した「改正入管難民法」への賛否で、政党ごとの立ち位置が鮮明に線引きされました。 

 

 現時点で政界のコンセンサスは「とにかく積極的には移民政策を考えたくない」というところに重心があり、「日本社会の郷に入っては郷に従う優良な外国人なら共生も考えていい。だが法令や納税など、ルールをしっかり守らないのであればむしろ強制退去を迅速に進めるべし」がデフォルトになっています。 

 

 日本経済が絶好調で「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と謳われ、どんどん海外進出をしていた1980年代と変わらない優越的な意識で、現在のグローバル社会に対して「いいとこ取り」を試みようとしています。結局、政治家たちの集合知は、何も考えていないのと一緒です。そんな現実逃避の姿勢ではまったくお話になりません。議論とも呼べない政界の移民政策はおいおい破綻していくでしょう。 

 

 このように政治が問題から「敵前逃亡」しても、最終的には移民政策を進めなくてはならなくなる、というのが私の見方です。現に日本政府および財界は、すでに着々と移民政策の下準備をあまり宣伝しない形で進めていると思われます。 

 

 

 2023年6月、民間有識者による令和国民会議(通称「令和臨調」)は「外国人1割時代」に向けて危機意識の共有と政府の迅速対応を要請しました。1割とはすなわち1300万人を意味します。令和臨調をとりまとめた元総務大臣(現・日本郵政取締役兼執行役社長)の増田寛也氏は、その後も日本の急速な人口減少と地方都市の消滅リスクに警鐘を鳴らし続け、真正面から移民政策について議論すべきだと主張しています。 

 

● ビジョンなき移民政策の先に 予想される最悪のシナリオ 

 

 政治が移民政策を議論せず、その都度、応急処置として外国人労働者の受け入れ枠をなし崩しに広げていくと何が起きるのか?相当にディストピアンな結末は想像に難くありません。 

 

 以下は、リドリー・スコット監督の映画『ブレードランナー』に登場するロサンゼルスではありません。予想される最悪の日本の未来の姿です。 

 

(1)まず、人口減に対する穴埋めとして数合わせのように移民が日本国内に入ってきます。自国より良い条件がインセンティブとなります。しかしそれ以上でも以下でもなく、日本への特に強い愛着はありません。日本としてもその人たちを期間限定の季節労働者とみなしているから、お互い様です。円が高くなれば移民に選ばれ、円が安くなれば見放されるというドライな関係です。 

 

(2)日本側に付加価値をもたらしてくれるIT専門家や富裕層に対しては、長期の在留資格や税制優遇、家族の呼び寄せなどがおまけに付けられる。新たに設けられた経済特区では社会サービスもマルチ言語で手厚く対応していく。 

 

(3)一方、キツい仕事や単純労働への従事者は、同等の日本人労働者を少し下回るぐらいの扱い(かつて3Kと呼ばれていた「キツい」「汚い」「危険」に加えて、最近言われている新3Kには「帰れない」「厳しい」「給料が安い」があり、それらを合わせて「6K」とも呼ばれている)。居住するのは家賃の安いエリアで、密集して暮らすようになります。日常で必要になるさまざまな手続きや医療関係の多言語化は遅れ、随所で混乱と長い待ち時間。国や行政に助けてもらえないと察知した移民たちはSNSで独自に情報交換、より断絶や分断が広がります。 

 

(4)単純労働の移民が増えると、同等の賃金で働いてきた日本の非正規労働者、ギグワーカーの賃金がなかなか上がらなくなる。「移民ががんばっているからね」と会社に言われたギグワーカーなど低賃金で働く日本人は、移民に怒りの矛先を向けてしまう。 

 

 

(5)政府のコンプライアンス基準は打ち出されるが、抜け穴だらけ。各地で移民の搾取がまかり通る。裁判も起こされるが対応はノロノロで進まず、移民たちの疎外感が高まって一部では治安も悪化してしまう。さらに移民ラッシュのどさくさに紛れて母国で犯罪を犯していた人間が日本に紛れ込み、そのままイリーガルな裏街道へ。メディアは移民の犯罪をより強めに報じるため、「移民が日本の治安を乱す」という誇張されたストーリーが定着していく。 

● 多言語・他人種が混ざった 「シンガポール化」する日本 

 

(6)定住移民が増えて、子どもたちの義務教育が問題化していく。学校に行かない移民の子も増加していくなど課題が増えてしまうと、特に地方の行政は追いつけなくなってしまう。教育を受けない子どもの一部は非行に走り、ギャングに加わる子も当然出てくる。そのため少年少女たちから始まって、その地域ごと荒れてしまうという悪循環が起こる。 

 

(7)入国管理局や警察の人員と予算が不足し、オーバーステイや犯罪被疑者の移民を手荒く扱う。移民コミュニティーには当局への不信が渦巻き、自警団やマフィアなどが成長していく。移民街の一角が「入ってはいけない」無法地帯と化す。移民排斥の運動も一部で盛り上がって、日本人と移民の対立が激化。 

 

(8)その一方で多言語や専門スキルを駆使して日本で大成功する移民も登場する。考えられる例として、若いインド人のITワーカーが合計で数十万人を突破する。最初は少数ながら移民や移民ミックスの議員も当選し、日本社会の「上澄み」では多様化、包摂が拡大していく。外国人排斥を唱えた人には訴えが起こされ、名誉毀損した側が9割負ける。だが、これが「本当のことを言えなくなった」と一部の日本人の間で不満として溜まっていく。 

 

(9)2070頃には、2020年代現在の「日本人」というアイデンティティーが相当に薄まっている。規模の大きなシンガポールのように多人種、あるいは多人種ミックスの状態になる。日本語以外に英語が公用語、中国語とハングルが準公用語の扱い。労働者階級が暮らす地区ではこれらの言語が混ざり合い、ピジン(植民地などで現地の言語と侵略した側の言語とが接触してできる混成語)化した「ストリート言語」が話されるようになる。 

 ここまでが「無為無策を続けた場合のシナリオ」です。日本社会は存続するため、そして繁栄するために変貌を必要としています。そこには不都合な「カオス」も含まれます。この「カオス」を飲み干し、新たなギラギラした日本を創造するべき時が訪れているのです。 

 

● 移民問題の解決策を SNSに求めてはいけない 

 

 しかしながら、前述したように政治の現場でこの広い意味での「国際化=日本の生まれ変わり」に向き合う気合いや態度を見せている政治家は見当たりません。マスコミもエグいところまで食い込んだ議論をしようという姿勢はありません。 

 

 そんな中、移民問題の答えをX(旧ツイッター)などのソーシャルメディアに求めてしまうと、かなり大変なことになります。今のところはソーシャルメディアを単純に「見ない」のが1番の正解のように私には思えます。移民問題に関する記事や研究報告をネット上で調べようとしただけでも、相当に強いバイアスのかかった情報がたくさん出てきてしまうので、まずは自分で考えるという心構えをしっかりすることが重要です。 

 

 あなたが情報に対して受け身の精神状態でいると、知らないうちに偏った方向に誘導されてしまいます。そしてそのスピードは、案外速い。検索アルゴリズムは閲覧数を上げるために、より情緒に訴える極端な情報アイテムへとユーザーを引っ張る習性があるからです。したがって、れいわ新選組を調べた人、百田尚樹さんの本を読んで検索した人、有機農法や反ワクチンで参政党のサイトを見た人の終着駅はそれぞれまったく違うものとなり、交わることがなくなってしまいます。 

 

 

 れいわ新選組、百田尚樹さんワールド、参政党それぞれの考え方で次第に手なずけられた人々はスタート地点の問題意識が同じだったとしても、到達する考え方や価値観が相容れなくなり、お互いの縄張りや主張を超えた会話や意見交換ができなくなっていき、最終的には敵同士になってしまうのです。もう、その時にはバイアスのかかっていない情報や声に対して貸す耳は無くなっており、偏見の塊になっていることに気づけなくなっています。 

 

● 根が真面目な人ほど 検索結果を鵜呑みにしてしまう 

 

 なぜこんなことが起きるのか? 

 

 大前提として「検索結果はニュートラルに情報を提供してくれる」と多くの人が無意識に信じてしまっているからです。ネットで検索することで出てくる情報は正しいと思い込む、まるで性善説のようです。そのため根が真面目な人ほど、リンク先をクリックし続け、それぞれのまるっとしたテーマパークに居場所を見つけてしまい、「真実を知って」しまうのではないでしょうか。 

 

 その人にとっての「真実」である陰謀論的な世界観はとても気持ちの良い迷宮であり、ずっと居続けたくなる竜宮城でもあります。自分がカモられていることは、ずっと後になって玉手箱を開けた時に思い知るのです。その時にはすでに遅く、もう大事なものはあなたの手には残っていない。まずは「検索結果はニュートラルに情報を提供してくれない」ということを知っておいてください。そして、あなたの大切な人が検索結果で出てくるものを鵜呑みにしてしまっているなら一声かけてあげてください。もしかすると言い争いになるかもしれません。それでもその人が竜宮城で何年も知らずに過ごすことを防げると思えば、やってみるだけのことはあるかも。 

 

モーリー・ロバートソン 

 

 

 
 

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