( 246534 )  2025/01/09 04:33:30  
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2025年度の財政状況について、国と地方の基礎的財政収支(PB)が黒字になると試算されているが、実際には統合政府を含めた財政状況を見ると既に黒字化していることが示唆されている。

財務省はPB黒字化を狙っており、企業の配偶者手当や3号被保険者制度の見直しを提案している。

さらに、PB黒字化を維持しつつ、防衛力や子ども・子育て政策にかかる支出増について、財源を確保していくべきとしている。

(要約)

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財務省=東京・霞が関 

 

【日本の解き方】 

 

2025年度の財政状況については、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)が黒字になると試算されている。 

 

まず、言っておきたいことは、今のPBは正しくない。というのは、本コラムで何度も指摘しているが、政府の一部だけを取り出してPBを計算しているからだ。真の政府の財政状況を示したければ、中央銀行を含めた統合政府の貸借対照表(バランスシート)をみるべきで、そのうえで「統合政府のPB」をきちんと計算すべきだ。 

 

それを行えば、とっくに黒字化していることが分かるだろう。ちなみに、国際通貨基金(IMF)のデータによる統合政府でみれば、日本の財政状況は先進7カ国(G7)の中でカナダに次いで2位の健全度である。 

 

政府の計算するPBの黒字化は、昨年7月29日、経済財政諮問会議に提出された「中長期の経済財政に関する試算」で示されている。そこで想定されていた名目経済成長率は、24年度に3・0%、25年度に2・8%だったが、12月25日に閣議決定された経済見通しでは、24年度に2・9%、25年度に2・7%なので、25年度のPB黒字化は、今のところ変化はないだろう。 

 

これを前提として、財務省は何を狙ってくるのか。12月26日に経済財政諮問会議が開かれ、民間4委員が「マクロ経済財政運営」というタイトルで資料を出している。民間委員のペーパーは、財務省の〝隠れみの〟とされているので、そこから財務省の意図を読んでみよう。 

 

「103万円の壁」問題の解決には一定の理解を示しつつ、企業の配偶者手当と、専業主婦ら「3号被保険者制度」の見直しに言及している。企業に対応を求め、3号被保険者を廃止し、そこから保険料を取ろうという意図がうかがえる。 

 

また、「金利のある世界」になるので、財政に対する信任が欠かせないとして、PB黒字化という財政健全化の旗は降ろさないという。今のPBは正しくないが、その間違いを「これからも無視していく」ということだ。 

 

そのうえで「防衛力強化」や「子ども・子育て政策」にかかる恒常的な支出増について、歳出改革、税外収入、税制措置などの財源を計画的に確保していくべきだとしている。「子ども・子育て拠出金」は税ではないが、今後も取り続け、防衛増税も外国為替資金特別会計などの財源はあるが、やめないということだ。子ども・子育て予算の中身は、NPO団体への丸投げが多いが、そうしたものにメスは入れないのだろうか。 

 

以前の本コラムで、財務省がしばしば引用する内閣府の「短期日本経済マクロ計量モデル」の問題点を指摘した。減税が何倍の国内総支出などの増加をもたらすかを示す「減税乗数」が異様に低いのだ。最近の研究では、政府の財政支出の効果を示す「政府支出乗数」と減税乗数は同じか、減税乗数がやや高いというものが多い。せめて、政府のモデルを修正して財政運営をすべきだろう。それを今年1月に示される新たな中長期試算に反映すべきだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一) 

 

 

 
 

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