( 247284 )  2025/01/10 16:19:21  
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2024年末、セブン-イレブンの売上高伸び率が低調であることが問題となっています。

これまでセブン-イレブンは高級路線の商品で他社と差別化を図ってきましたが、物価高が続く中で高価格戦略が逆効果となり、売り上げが伸び悩んでいると報じられています。

 

 

その一方で、セブン-イレブンは「エコだ値」と「うれしい値!」という値下げ戦略を推進しており、これを原動力として期待されています。

しかし、値下げが成功するかはまだ不透明であり、消費者からの反応も様々です。

セブン-イレブンの「消費者の目線」不足が問題視されており、ファミリーマートなど他社の値下げ戦略の中で、消費者の感情に訴えかけるアプローチが成功している例も挙げられています。

(要約)

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セブン-イレブンの売り上げが伸び悩んでいるという(写真:プレミアムフォトスタジオ Takashi Images/PIXTA) 

 

 2024年末、セブン-イレブンの売上高伸び率の低迷が話題となった。 

 

 同社はこれまで「セブンプレミアムゴールド」をはじめとする「付加価値」に重きを置いた高級路線の商品で他社との差別化を図ってきた。しかし、相次ぐ物価高の中での高価格戦略があだになり、売り上げが伸び悩んでいるという。 

 

 一方、筆者が気になっているのはこうした「高価格路線」から舵を切ったセブン-イレブンの「値下げ戦略」だ。実はここにこそ、同社の苦戦の要因が隠されていると筆者は考えている。 

 

■値下げ戦略として期待される「エコだ値」と「うれしい値!」 

 

 高級路線の低迷を受けて、セブン-イレブンが取り組みはじめたのが「エコだ値」や「うれしい値!」という取り組み。それぞれ、簡単に説明しよう。 

 

【画像14枚】割高に思えた商品も、これで標準的な価格に…?  セブンが始めた「うれしい値」「エコだ値」 

 

 「エコだ値」は、2024年5月から全国の店舗で開始された取り組み。食品ロスの削減を目指し、販売期限が近い商品を値下げして販売する。 

 

 対象商品には「エコだ値」と書かれた緑色のシールが貼られ、通常の「値引きシール」に抵抗感を持つ人にも配慮したという。 

 

 確かに夕方ぐらいの店内を歩いていると、この緑色のシールが貼ってある商品を多く目にする。値下げ幅は「20円」や「30円」から「100円」までと幅広い。 

 

 「値下げ」と「環境配慮」を両立させた取り組みとして、令和6年度の食品ロス削減推進表彰において「消費者庁長官賞」も受賞している。 

 

■「うれしい値!」も2024年9月にスタート 

 

 一方の「うれしい値!」は、2024年9月から本格的にはじまった取り組み。いくつかの商品について、原材料の調達や製造工程を見直し、より安い価格で提供するシリーズだ。 

 

 セブン-イレブンの強みである、食品の質の高さと低価格を両立させる狙いがある。店内で、ピンク色の張り紙に「うれしい値!」と掲げられているのを見たことがある人も多いと思う。 

 

 これによって、「麻婆丼」や「バターチキンカレー」などのお弁当は税込348円、パンやセブンプレミアムのおかずはおおむね税込150円以内、カップデリなどは200円台前半で提供されている。 

 

 

 後で説明するようにこの取り組みは好調で、現在では300種類の商品が「うれしい値!」シリーズに加わっている。 

 

 この2つは高価格が成長の阻害要因となっているセブン-イレブンにおいて「値下げ」を意識した戦略で、今後の原動力として期待されている。 

 

■「エコだ値」「うれしい値!」は成功するのか?  

 

 では、この値下げ戦略は功を奏するだろうか。 

 

 実際、食品新聞の取材に対してセブン-イレブン・ジャパン社長の永松文彦氏は「20代男性と女性の新規顧客が増えている」と述べている。 

 

 実際、国内のセブン-イレブンの前月比の売上高は、2024年10月が100.4%、11月が100.3%でわずかに上昇。前月比の客数も2024年10月が100.1%、11月が100.5%と微増している。 

 

 「うれしい値!」は9月より本格始動しているので、その効果が早くも表れたのだろうか。 

 

 ただ、気になる点もある。というのは、前月比で見たときの客単価は2024年10月が100.3%に対し、11月が99.8%と減少しているのだ。 

 

 まだ2カ月分のデータだから断定するには早いが、増えた客は「うれしい値!」商品を中心に、低価格商品のみを購入している可能性が高い。必然的に「うれしい値!」商品は利幅が少ないことが予想されるから、利益ベースで見れば、本当の意味でこの政策が功を奏しているのかは、まだ判断ができない。 

 

 さらに社長が述べる「新規顧客が増えている」というのも、解釈が難しい。というのも、セブン-イレブンのような全国チェーンのコンビニは、多くの人が一度くらいは何気なく利用したことがあるもので、新規顧客が本当の意味での「新規」なのかどうかはわからないからだ。 

 

 例えば「週3回以上訪れる顧客が増えた」というように、その定義を明確にしなければ、その効能を真に計ることは難しい(まあ、セブン側では精緻なリサーチをしていて、取材にはざっくり話している、というだけの話なのかもしれないが)。 

 

 さらに、客数の増加と客単価の減少という「薄利多売」モデルは、人口減少が続く日本で長期的に見て有効なのかどうか、という点も気に掛かる。 

 

 さらに指摘しておくべきは、「うれしい値!」に先駆けてはじまった「エコだ値」の効果が、業績を大きく回復させるほどの貢献はしていない、ということだ。 

 

 

 既存店売り上げで見れば、同取り組みがはじまった2024年5月以降、セブン-イレブンの売上高はわずかに減少傾向が続いていた。 

 

 その理由を1つに断定することはできないが、私はこの取り組みについて、「消費者目線」から見た違和感を抱いてしまう。というのも、「エコだ値」は、ネーミング的にセブン-イレブンが思う「エコ」を私たち消費者に押し付けている感じが否めないからだ。 

 

 端的に言って、なんだか上から目線なのだ。もちろん、それがエコなのは間違いないのだが、客としてはどこかセブン-イレブンの言う「エコ」に巻き込まれている、と思ってしまう。もっと言えば「で、結局その商品を売って儲けたいんでしょう?」とうがってしまう。 

 

 これは「うれしい値!」でも同じだ。しかもこちらは「!」まで付けている。圧が強い。 

 

 これは筆者の体験だが、友人とセブンで「うれしい値!」の商品を見たとき、「安くないよね?」と言われた。私自身はそこそこ安いのでは? と思っていたから「お、おう……」としか返答できなかったのだが、このときに気が付いた。 

 

 本来、商品が高いか安いか、その値段がうれしいかそうでないかを決めるのは、私たち消費者なのだ。それは店側が決めるものではない。つまり、「うれしい値!」とセブン-イレブンが言うのは、店側の思いを顧客に押し付けているに過ぎないのではないか?  

 

 実際、ネットで検索してみれば「うれしい値!」の予測変換として「うれしい値 高い」なんて候補が出てくるぐらいだし、ニュースへのコメントを見ても「でも、結局スーパーとかのほうが安いしな」なんてコメントも、わんさかある。 

 

 この話をした時、別の友人は「自分は、弁当だけじゃお腹が膨れないので追加でカップデリを買うんですが、そうなると1000円近くなるんです。弁当だけでお腹が膨れて、他に買わずに済むのが、自分にとっての『うれしい値!』なんですけどね」と話していた。これは今のセブンに対して、少なくない人が抱いている感想ではないだろうか。 

 

 

 いくら「セブン」が「うれしい値」と思っても、それが「高い」「うれしくない」と思われてしまったら、それは感情の押し付けにしかならない。これはビジネスの大原則だが、企業が提供する商品やサービスをどう感じるかは、企業ではなく消費者が決めることなのだ。 

 

■セブン-イレブンには「消費者の目線」が足りていない?  

 

 この点、ファミリーマートはセブン-イレブンと同じような値下げ政策を行っているが、より顧客の心情に寄り添っていると思う。 

 

 ファミリーマートでは2024年10月から11月までの4週間、東京都と神奈川の一部店舗で食品ロスの軽減のための値引き政策の実証実験を行った。 

 

 廃棄が近い商品に貼るステッカーに、値引き額の表示と共に、おにぎりのキャラクターが「たすけてください」と涙目で訴えるイラストを付けたのだ。 

 

 ちなみに、このキャラクターがなんともいえないかわいさで、こんな目で訴えられたら、つい手に取ってしまいそうになる。 

 

 私のような人が多いのだろう、この実験の結果、割引対象商品の購入率は5%アップしたという。 

 

 この結果から、ファミリーマートではこの「涙目シール」が全国に展開されることが決まっている。 

 

 ここでは、「エコ」「食品ロス」といった「意識高い」言葉を明示するのではなく、「かわいいキャラクターが泣いている」と感情に働きかけることで、「エモ消費」にも近い行動を顧客に起こさせることに成功している。 

 

 セブン-イレブンの「エコだ値」と比べて、どこか親しみやすく、顧客の「買おうかな」という気分を刺激する。感情の押し付けにならず、顧客の側から自発的に商品購入を促している。 

 

 この「消費者の目線」「下から目線」が、セブン-イレブンには足りていないのかもしれない。 

 

■これまでのセブンの騒動も「消費者の目線」欠如が生み出してきた 

 

 思えば、セブン-イレブンの不調が取り上げられるとき、常に問題になってきたのは、この「消費者目線の欠如」だった。 

 

 昨年、各種媒体で取り上げられまくった「上げ底(疑惑)弁当」もそうだろう(私も取り上げた)。 

 

 ここにセブン-イレブン側の「値上げするまい」という努力が確かにあったのだが、「それがどう消費者から見られるのか」についての意識が足りなかったのかもしれない。結果、こうした容器は炎上にも近い形で大きな不評を呼んだことは記憶に新しい。 

 

 

 
 

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