( 248364 )  2025/01/12 18:11:56  
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ホンダと日産が経営統合の基本合意書を締結し、三菱自動車も参加する「3社連合」結成に向けて動いている。

台湾の鴻海精密工業が日産の買収を目指しており、新たな動きがある。

一方、トヨタは「モビリティカンパニー」への転換を進めており、スバルやマツダ、スズキなどとの連携を強化している。

3社連合が成立すれば、日本の自動車業界は「トヨタグループ」と「非トヨタグループ」の2つに分かれることになるが、統合の成功は未だ不透明であり、大企業同士の経営統合には多くの障壁がある。

一方で、統合が成功しない場合、日本の自動車産業は「一強」の状態に陥る可能性があり、それが日本経済に及ぼす影響も懸念されている。

(要約)

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昨年末、ホンダの三部敏宏社長と日産の内田誠社長が、両者の経営統合に向けて検討する基本合意書を締結したと発表。三菱自動車も参画する「3社連合」結成に向けての動きが活発化することになった。3社の2023年度のグローバル販売を合計すると、約837万台。トヨタ、独フォルクスワーゲンに次ぐ世界3位の自動車連合となる。 

 

ホンダ社内には「今の日産と組んで本当に大丈夫か」(幹部)との見方が広がっていた。しかし急転直下で進展したのは、台湾の鴻海精密工業が日産の買収を狙って水面下で動き始めたからだ。 

 

前編記事【「日産と組んで本当に大丈夫か?」ホンダ・日産・三菱の3社統合で進む「トヨタとそれ以外」への業界再編…そして日産を狙う「外資の巨人」】に続いて報じる。 

 

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鴻海は、米アップルのスマートフォン「iPhone」を受託生産してきたことで有名だ。最近では、EV、ロボット、AIなどの領域を強化している。 

 

スマホを造ることを最も得意とする企業が、「クルマのスマホ化」という時流に乗って自動車分野に攻め込んでくるのは、当然の戦略と言えるだろう。そこでグローバルに開発・製造拠点を持つ日産を買収すれば、ノウハウが素早く得られ、成長速度を早められると考えたわけだ。 

 

そして、2023年から鴻海のEV事業の最高戦略責任者を務めるのが、日本電産(現ニデック)社長を務めた関潤氏である。 

 

氏は日本電産に移る前、日産でナンバー3の副COO(最高執行責任者)だったから、自動車業界と日産社内の「土地勘」もある。 

 

EVへの参入は鴻海だけではない。アップルなどと並ぶ世界有数のスマホメーカーである中国の小米が北京に新工場を建設し、2024年から高性能なEVを自社開発・生産し始めている。 

 

自動車産業界はいま、EVで先行するテスラや中国のBYDに加え、異業種からの新規参入が相次ぎ、異次元の競争に突入しようとしているのである。 

 

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こうした中、世界首位の座を守り、好業績を維持し続けるトヨタでも危機感が募っている。 

 

クルマというハードを提供するだけではなく、サービスも含めた移動手段を広く提供する「モビリティカンパニー」への脱却を掲げ、2025年1月7日から米国ラスベガスで開催される家電見本市(CES)では、豊田章男会長が講演した。 

 

また、既存事業の安定化を狙ってさらなる規模拡大にも走り始めた。スバルやマツダ、スズキへ出資して商品開発や販売金融などで連携を強化し、広義の「トヨタグループ」を形成しつつあるのだ。 

 

3社連合が成立すれば、日本の自動車産業はおおむね「トヨタグループ」と「非トヨタグループ」の2つに集約される。 

 

両陣営が切磋琢磨しながら、これから始まる生存競争に立ち向かっていくことができるなら、日本の自動車産業の国際競争力向上につながるだろう。 

 

 

しかし、3社連合の成否はまだ予断を許さない。ホンダの三部社長は、会見でも「決まったわけではない」と強調。これから統合に向けて互いの財務状況などを確認し合うことになるが、大企業同士の経営統合には、企業文化の衝突など、数値には表れない大きな障壁もある。 

 

2009年にはサントリーホールディングスとキリンホールディングス、2011年には三菱重工業と日立製作所が経営統合交渉を行ったものの、いずれも最終的に破談した。ホンダと日産の経営統合も確実に行われる保証はなく、あくまで「検討」段階なのだ。 

 

しかし、この統合が成就しなければ、これから日本の自動車産業は、トヨタグループの「一強」になる可能性が高まる。そうなると、日本経済の屋台骨の衰退は、ほぼ確実になってしまうだろう。 

 

「週刊現代」2025年1月11・18日号より 

 

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【もっと読む】もしテスラが「トヨタを買収したい」と言い出したら、日本政府はどうすればいいのか…? 

 

井上 久男(ジャーナリスト) 

 

 

 
 

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