( 248799 )  2025/01/13 16:40:10  
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ゲームセンター業界では倒産が増加しており、店舗数も減少している。

大型店と小型店の二極化が進んでおり、大型店は急成長している一方、中小のゲームセンターが苦境に立たされている。

特にGiGOなどの大型店が増加し、IPコンテンツを活用したクレーンゲームなど新たな展開を行っている。

業界全体でもクレーンゲーム専門店が増加するなど、「消費の場所」としての側面が強まりつつある。

時代と共にゲームセンターの空間や機能も変化し、消費者のニーズに合わせたビジネス展開が求められている。

(要約)

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相次ぐ倒産が報じられているゲーセン。業界全体が変化するなかで、「昔からのゲーマー」が排除されつつある(写真:ユウスケ/PIXTA) 

 

デフレが終わり、あらゆる物が高くなっていく東京。企業は訪日客に目を向け、金のない日本人は“静かに排除”されつつある。この狂った街を、我々はどう生き抜けばいいのか?  

新著『ニセコ化するニッポン』が話題を集める、“今一番、東京に詳しい”気鋭の都市ジャーナリストによる短期集中連載。 

 

 2024年を振り返ると、いろいろな業種での倒産数が過去最高を記録したことが印象深い。 

 

 その1つが、ゲームセンターだ。 

 

 帝国データバンクが昨年4月7日に発表したデータによれば、ゲームセンターの倒産が過去5年で最多となった。2年連続で倒産数は増加している。ゲームセンターの店舗数自体、10年間で8000店近く減少しており、直近5年間では3割減だ。 

 

 他業種との比較を踏まえると、ゲームセンターだけが苦境に立たされている、とは言い切れない。しかし、こうしたゲームセンター数の変化には、その空間の変化も表れていると感じる。そんな変化を解説しよう。 

 

■二極化するゲームセンター  

 

 こうしたゲームセンター業界の変化については、『ゲームセンター文化論』の著作がある加藤裕康が詳細な分析を加えている。 

 

 加藤は日本アミューズメント産業協会『アミューズメント産業界の実態調査』(最新データは2021年まで)から、ゲームセンターにおけるゲーム設置台数を比較し、「ゲームセンターの小型店と大型店の二極が増加している」と述べる。ゲーム機設置台数が201台以上の店舗の数は増加しているのだ。 

 

 これは、例えばラウンドワンや、SEGAが名称を変えた「GiGO」などの大型店の割合が増えていることを想像すれば、わかりやすいだろう。数年前ぐらいからだろうか、「GiGO」という看板を街中でみる機会が増えた気がするが、それはデータ的にも合っているのだ。 

 

 一方で、ゲーム機20台以下の店舗も増加傾向にあるが、加藤はこれについて「カプセルトイショップ」の増加ではないか、と推測する。実際、カプセルトイの2023年度の市場規模は約1150億円で、前年度(約720億円)から59.7%アップしている。 

 

 

 しかし、それ以外の店舗は減少傾向にあって、カプセルトイショップでもなく、大手の大きなゲームセンターでもない、中小のゲームセンターの苦境が際立っている。イメージするなら、昔ながらの格闘ゲームやアーケードゲームが主体の小さなゲームセンターが無くなりつつある……というイメージだろうか。 

 

■GiGOの躍進の背景にはなにがあったか 

 

 こうした大型店の増加を象徴するのが、GiGOであろう。その拡大ぶり、成長ぶりを見ていると「ゲーセンが苦境」とは、とてもいえない気持ちになってくる。 

 

 GiGOを運営しているのは、GENDA。2022年にセガのゲームセンター事業を買収し、GENDA全体でのアミューズメント施設の数は339店舗となる。 

 

 同社は「ロールアップ型M&A」という、同じ業界内の小規模事業者を連続で買収することによって、その業界でのポジションを拡大させるM&Aを行い、特にアミューズメント施設の中での存在感を増している。 

 

 ちなみに最近も、アミューズメント施設を運営する「ハローズガーデン」を買収しており、主に地方を中心とする中小ゲームセンターの買収を連続的に行っている。 

 

 さらにGENDAは、アミューズメント施設だけでなく、広く「エンタメ」という軸で近接領域も貪欲に取り込みながら事業拡大しているのも特徴だ。例えば、同社は映画配給会社であるGAGAもグループ会社としているが、ここで配給された『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』をIPとして、そのオリジナルグッズをGiGOのゲームセンターのプライズとして導入している。 

 

 さらには飲食分野にも手を伸ばしていて、かわいい顔が付いたパッケージでおなじみのアルコール「クライナー」の卸売りを行うシトラムも買収し、「クライナー」をプライズとして導入している。 

 

 同社の決算説明会資料を見ると、その成長戦略として「IPコンテンツ×プラットフォーム」を掲げ、ゲームセンターを「プラットフォーム」として、IPコンテンツを商品としたクレーンゲームの展開を行っている。 

 

■GiGOの「推し活」化、クレーンゲーム化 

 

 特に、こうしたIPコンテンツを景品としたクレーンゲームについては、その熱狂的なファンがゲームセンターに繰り返し訪れたり、その景品を取ろうと何度もクレーンゲームをプレイすることにより、相対的に利益率が上がる。 

 

 

 帝国データバンクによれば、ゲームセンターの利益率は100円につき6円であり、いかに何度ゲームセンターに足を運んでもらうか、あるいはこれまでゲームセンターに来ていなかった人々に足を運んでもらうのかが重要になっている。 

 

 その際、IPコンテンツを利用した「推し活」とのコラボレーションは有効な手段だ。すでに知られているが、「推し活」は購買行動を伴うことが知られており、ある調査では、推し活をしている人の55%が「グッズを買う」と答えている。 

 

 実際、GiGOは「推し活センター」としての機能を進めていて、12月には、福岡の天神で国内5店舗目となる推し活専門ショップの「fanfancy+ with GiGO」をGiGO内に設置した。これ以外にもコラボカフェを併設した店舗などもあり、「推し活」を意識したさまざまな施策を展開している。 

 

■「コミュニケーション」から「消費」の場所へ?  

 

 GiGOの方向性は、ゲームセンターの「推し活」化、「クレーンゲーム化」だが、特に後者の「クレーンゲーム」化は、業界全体でも起こってきている。 

 

 例えば、パチンコ大手のマルハンは、最近自社のパチンコ店の跡地にクレーンゲーム専門店である「ME TOKYO」を相次いでオープンさせている。異業種から参入するほど、魅力のある業態だということだろう。 

 

 いずれにしても、「欲しい商品目当てで行く」という目的を持った行動でゲームセンターに行くことが増えているのは確かだ。 

 

 その意味では、ゲームセンターの空間の意味合いも変わってきたといえるかもしれない。 

 

 前述した『ゲームセンター文化論』の中で加藤裕康は、ゲーセンを介して、そこに集う人々の間にコミュニケーションが生まれる様子を描いた。若者が集い、たむろする場所としてゲーセンがあったのだ。 

 

 そこは、時代とともにさまざまな人を受け入れてきた。例えば、1990年代以降、ゲームセンターは「アミューズメント施設」へと舵を切っていて、プリクラなども増えている(先立つ1984年に風営法が改正されたことが大きい)。 

 

 すると、そこにはプリクラを撮るために女子高生が集まる。また、1990年代から、いわゆる「音ゲー」も全盛期を迎え始め、凄腕の「音ゲーマー」がプレイする周りには、見物客が多く集まるようになった。 

 

 

 ある種のコミュニケーションがそこから生まれ、「そこに行くだけでなんだか楽しい」場所として、ゲームセンターはあったのだ。 

 

 その客層は異なれど、若者が集まる場所としてゲームセンターは機能していた。そして、それは、あまりたくさんお金を使うことなくいられる場所だったからかもしれない。 

 

 これは私自身の経験だが、「音ゲー」は100円でそこそこ長く遊べて、ゲーセンでのたむろを引き起こしていたようにも感じる。ある種の「コミュニケーションの場」だったことは、確かに実感としてある。 

 

 一方、現在の「クレーンゲーム」が主体となったゲーセンはどちらかといえば、より「消費の場所」という意味合いが強くなってきつつあるのではないか。 

 

 昔ながらの格闘ゲームやアーケードゲームが主体の中小規模の店舗が減り、クレーンゲームを中心とする大型店への流れは、こうした「コミュニケーション」から「消費」へ、という流れを表しているのかもしれない。 

 

■時代とともに変わりゆくゲーセンの空間 

 

 もちろん、この2つは完全な対立項ではないし、あまりにも単純化しすぎた図式かもしれない。ただ、現在のゲームセンターの状況を見ていると、どことなくこうした風景があるのではないか、と感じられるのだ。 

 

 もちろん、こうした変化は、否定すべきことではない。あらゆる種類のものの値上げや、電気代の高騰を含め、時代状況に対応した結果だからだ。 

 

 必然的な進化だといえるし、そもそもこうした変化が受け入れられる背景には、こうしたゲームセンターの姿が消費者に受け入れられているからでもある。だから、ゲームセンターの変化は我々自身の変化でもある。 

 

 逆に言えば、こうしたクレーンゲーム化するゲームセンターが今後も受け入れられ続けるかどうかは、それが消費者のニーズに応えられ続けるかにもかかっている、ということだ。 

 

 「なんだかお金ばっかり使っちゃってゲームセンター、面白くない」となれば消費者が離れるのは早いだろう。そうなったとき、ゲームセンターの空間は、また別の形を模索するかもしれない。良い悪いではなく、商売の在り方は常に変化していくものであり、消費者に受け入れられないビジネスは、自然と淘汰されていくのだ。 

 

谷頭 和希 :都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家 

 

 

 
 

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