( 249874 )  2025/01/15 17:14:27  
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就職活動では売り手市場が続いているが、SNSや情報の乱れにより学生たちが翻弄される現状があり、ビジネス用語の使用や知識が重要視されていることに苦悩する学生もいる。

競争の激しい就活において、横文字やビジネス用語を使うことが企業受けが良いとされる一方、それに振り回される学生も多い。

(要約)

( 249876 )  2025/01/15 17:14:27  
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売り手市場といえど、さまざまな情報に振り回されるのが現実だ(イメージ) 

 

 企業の新卒採用においては“売り手市場”が続いているが、当の大学生の間からは、「年々、就職活動対策は“シビア”になっている」という声も漏れ聞こえてくる。背景には、SNSで乱れ打ち気味に発信される「情報」があり、何が正解なのか、何を信じていいのかわからず、翻弄され、疲弊する学生も少なくないようだ。“就活情報疲れ”した現役大学生の声を追った。 

 

 就活生はガクチカ(学生時代に力を入れたこと)の深堀りやウェブテスト対策などに力を入れるものだが、都内の国立大学に通うMさん(21歳)は、「(就活現場で)他大生が口にしていて、ドン引きした」と明かすのは、「横文字の多用」である。 

 

「まだ行く業界を絞りきっていない段階で、練習のために受けたベンチャー企業のグルティス(グループディスカッション)でのことです。お題が“売り上げ向上施策”だったのですが、『シナジー』とか『マネタイズ』とか、はては『KPI』とか、およそ学生生活にはない横文字が飛び交っていて、びっくりしたことがあります。大学の授業の知識で意味がわかるものもあったけど、それでも面食らったというか……。 

 

 まだ社会人にもなっていないのに、ビジネス用語を操れるほうが偉い、みたいなマウンティングの空気感が怖くて、一言も喋ることができないまま終わりました。就活のシビアさにとにかく震えました」 

 

 ちなみにKPIとは「重要業績評価指標」の略称で、KGI(重要目標達成指標)の達成に必要な要素を分解したものだという。そんな横文字を使う就活生があまり好きではないMさんだが、ジレンマもある。 

 

「正直、言っていることは大したことないんですよ。例えば『ステークホルダー』なんて利害関係者と言えば伝わるし、『アセット』は企業の資産や持っているものと言えばわかりやすい。それなのにあえて横文字を使って、“ビジネスできます風”を漂わせるのがイラッとくるというか(笑)。正直イキってるなあと思うんだけど、そういう人が企業受けもいいみたいなので、ダルいです」(Mさん) 

 

 

 就活と言えば自分自身のアピールの場であることは間違いないが、アピールは用語の多用だけにとどまらない。都内の公立大学に通うSさん(22歳)は、コンサルティング会社志望。「専門のビジネス用語を“知っている前提”がウザい」と言う。 

 

「横文字を使うだけだったら別にいいんですよ。市場分析のために『PEST分析』とか、サービスの分析のために『4P分析』とか、色々思考の枠組みがあるし、それを知っているのは強いとは思います。 

 

 ただ、グルディスなんかでサラッと『今回は“4Pを使う”ということでいいですかね?』みたいに、全員が知ってる前提で話してる人は嫌いですね。『知らないやつは置いていくけどいいよね?』という宣戦布告のようにも感じられ、こういうやつとは一生働きたくないなって思います」 

 

 ちなみに、PEST分析とは、「政治(Politics)」、「経済(Economics)」、「社会(Society)」、「技術(Technology)」の4つの点から外部環境を分析し、自社に与える影響を予測するもの。4P分析は、「Product(商品・サービス)」、「Price(価格)」、「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」の4つの要素を分析する手法のことだ。 

 

 就活は“競争”だ。他の就活生を蹴落さなくては、限られた正社員の枠を手に入れることはできない。そんな就活生たちが自分と似たような境遇の就活生がいないかと助けを求めるのがSNSだが、そこにこそ落とし穴がある。前出・Sさんが続ける。 

 

「専門用語に戸惑ったという投稿はあるっちゃあるけど、それよりも『就活で知っておくべき頻出ビジネス用語集』といった用語情報を垂れ流すアカウントが多数出回っているのを目の当たりにして、余計焦ったのが正直なところでした」 

 

 Sさんが目にした情報の多くは、就活アプリや就活支援アカウントが発信しているもの。Sさんは、「最初からこういうアカウントの情報を元に、ビジネス用語を勉強している人がたくさんいることを知り、負けたと思った」と言う。 

 

「いろんなビジネス用語を勉強しても、実際に仕事をしているわけでもないし、社会人の人からしたら所詮どうということもないレベルだろうなと思います。でも、知っておかないと議論に参加できず、グルディスとかグループ面接も通らない。勉強する人が少しでもいれば、最初違和感を抱いている僕のような人間も勉強せざるを得なくなるんです。正直いって、ノウハウ(笑)にうんざりしつつ、振り回されている時点で、僕の負けです。本当にそれらのビジネス用語は、“知っておかなくてはならない”ことなのでしょうか……」(Sさん) 

 

 さまざまな「勝ちノウハウ」が拡散し続ける今の時代。Sさんは「学生時代に力を入れたことは就職活動、ってことになりそうです」とため息混じりに笑う。 

 

 

 
 

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