( 250604 )  2025/01/17 04:33:41  
00

長らく不況が続いていた日本社会では、就職氷河期世代と呼ばれる1990年代から2000年代に就職活動を行った世代が厳しい状況にあります。

バブル崩壊後、非正規雇用者が増加し、正規雇用が減少しています。

現在は不況とコロナ禍で厳しい生活を余儀なくされる人々がいます。

特に非正規雇用や雇用条件が整っていない場合、厚生年金に加入できず、老後の年金受給にも影響が出てきます。

政府も70歳までの任意加入制度などを導入していますが、十分な情報が提供されておらず、課題が残っています。

将来的には高齢者が支え手になる社会を目指す動きもありますが、現状では就職氷河期世代が老後に直面する問題に対する社会全体での支援が必要です。

(要約)

( 250606 )  2025/01/17 04:33:41  
00

(※写真はイメージです/PIXTA) 

 

長らく不況に苦しめられてきた日本社会。コロナ禍を経て物価高に苦しむ現在、厳しい生活を強いられ続けている人々がいます。 

 

厚生労働省HP『就職氷河期世代活躍支援プラン』によると、「就職氷河期世代」とは、1990年代から2000年代の雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代のことを指します。 

 

1980年代まで、日本は好景気でした。しかし1990年代に入って間もなく、株価・地価が暴落し、バブル崩壊。企業は人件費の節約・削減のため、一気にその門戸を閉めます。何百社と面接を受けてもなお採用されず、非正規雇用を余儀なくされた若者が相次いだのです。 

 

非正規雇用者が増えた過程について、厚生労働省『労働白書』には次のように記されています。 

 

“1987〜93年の雇用拡大期の状況をみると、大企業ほど雇用増加率が高まり、特に、正規雇用の増加寄与が大きかった。この時期には、大企業による同時一斉的な新規学卒採用の増加がみられ、中小企業の採用活動に支障を与えた可能性もあり、また、この過程で、中小企業における人材確保手段として非正規雇用が定着した面があったと思われる。 

 

バブル崩壊後は、1993年以降、大企業で入職抑制がなされ、正規雇用は減少寄与を示したが、1993〜97年の間は、1〜29人規模、30〜499人規模では正規雇用者の増加がみられた。しかし、1997年以降は全ての企業規模で正規雇用者は減少し、大企業ほどその減少寄与は大きかった。雇用は非正規雇用で増加し、非正規雇用比率の上昇も大企業を中心に高まることとなった。” 

 

現在では都合に合わせて「あえて非正規」の選択肢をとる方も存在します。しかし内閣官房 就職氷河期世代支援推進室の資料『就職氷河期世代の就業等の動向』によると、2022年時点で「不本意非正規雇用労働者」は39万人いるということです。 

 

■「日々の生活が不安」…追い打ちをかける「老後破綻の現実味」 

 

非正規雇用かつ、何らかの理由で短時間労働だったり、勤務先の雇用条件が整っていなかったりする場合、就労していても厚生年金に加入できないことがあります。 

 

就職氷河期世代の年金問題は、正規社員になれず、厚生年金に加入していなかった期間が長いことだけに留まりません。当時、「年金制度は破綻している。どうせ自分たちの時代にはもらえないのだから、払うだけ損だ」という考えが若いフリーターを中心に流行、実際に国民年金を支払っていなかった層も一定数いたのです。 

 

厚生労働省年金局が発表した『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、年金の平均受給状況は下記のとおりです。 

 

*************** 

 

●令和5年度末現在における厚生年金保険(第1号)の老齢給付の受給者の平均年金月額は、併給する老齢基礎年金の額を含めて、老齢年金が14万7千円、通算老齢年金・25年未満が6万5千円となっている。 

 

●国民年金の老齢年金受給者の平均年金月額は、令和5年度末現在で5万8千円、令和5年度新規裁定者で5万5千円となっている。 

 

*************** 

 

年金受給額は、現役時代に年金保険料を「しっかり払っていたかどうか」に直結します。様々な原因・理由があれど、指定された金額を納めていないまま老後を迎えると、老後破産をはじめ、かなり厳しい生活を余儀なくされることは間違いありません。 

 

政府は、この問題を解決するために、60歳を超えた場合でも70歳まで任意で国民年金に加入できる制度を設けています。これにより、保険料納付期間が足りない場合でも年金受給資格を得ることができます。しかし、この制度を利用するのに十分な情報が提供されているとは言えず、多くの人がその存在を知らないまま、年金受給資格を得られないままであるのが現状です。 

 

 

支える側が「支えられる側」になる未来。経済産業省は「老後も働く」という提案を以って、その構図を変えようとしています。 

 

“高齢者が支え手になれば、無理なく支えられる社会へ 

65歳以上を「支えられる側」とすると、2017年に現役世代2.1人で1人の高齢者を支えることに。2065年には1.3人で1人の高齢者を支えることに。 

 

75歳以上を「支えられる側」とすると、2017年に現役世代5.1人で1人の高齢者を支えることに。2065年であっても、2.4人で1人を支えることが可能。”経済産業省『2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について』(平成30年) 

 

実際、高年齢者雇用安定法の改正によって、65歳から70歳までの就業機会を確保するための努力義務が新設されました。とはいえ実情を見れば、「嘱託社員になって給与半減」「そもそも会社が再雇用に積極的ではない」という声も聞かれます。 

 

就職氷河期世代が老後に直面する問題は、単なる個人の問題にとどまりません。社会全体としての対策が急務です。例えば、以下のような施策が考えられます。 

 

(1)非正規雇用者の正規雇用への転換支援:非正規雇用者が安定した正規雇用に就けるよう、企業に対するインセンティブ制度や教育訓練プログラムを充実させる。 

 

(2)年金保険料の納付支援:低所得者向けの保険料減免制度や、保険料を後払いできる仕組みを整備する。 

 

(3)情報提供の充実:年金制度に関する正確な情報を広く提供し、個々の状況に応じた相談体制を強化する。 

 

就職氷河期世代が安心して老後を迎えるためには、社会全体での支援と制度の改善が不可欠です。これらの課題に対する早急な対策が求められています。 

 

THE GOLD ONLINE編集部 

 

 

 
 

IMAGE