( 250879 )  2025/01/17 16:43:07  
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米国企業の間では、多様性推進施策の見直しの動きが広がっている。

これまで重視されてきた多様性に批判がある中、マクドナルドやメタ(旧フェイスブック)、ウォルマートなどの企業が多様性に関する施策を縮小・廃止している。

20年の「ブラック・ライブズ・マター」運動を受けて進んできた施策が、連邦最高裁の判断やトランプ次期大統領の政治的配慮で変わりつつある。

日本企業の対応は分かれており、一部は方針の変更をしているが、経済同友会は多様性がイノベーションの前提であり、日本企業も進めるべきだと強調している。

(要約)

( 250881 )  2025/01/17 16:43:07  
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 【ニューヨーク=山本貴徳】米国企業の間で「多様性」の推進施策を見直す動きが広がっている。移民社会の米国では採用や昇進などで重視するのが企業の役割とされてきたが、保守派から批判が強まり、幅広い業種で施策の廃止・縮小が相次ぐ。トランプ次期大統領の就任をにらんだ政治的配慮が背景にあるようだ。 

 

多様性に関する目標の一部を取りやめると表明したマクドナルドの店舗(ニューヨーク・マンハッタンで)=山本貴徳撮影 

 

 米マクドナルドは6日、多様性に関する目標の一部を取りやめると発表した。これまでの取り組みで管理職への女性登用が進み、男女の賃金格差の解消も実現したと指摘。取引先に求めていた「DEI」と呼ばれる取り組みへの誓約なども終了するとした。 

 

 同社は方針転換の理由として、2023年に連邦最高裁が下した判断に言及した。大学の入学選考で黒人らを優遇する差別是正措置を違憲と判断したもので、「法的環境の変化も考慮した」(同社)と説明した。 

 

 見直しの動きは、リベラルな気風で多様性を重視してきたテック業界にも広がる。 

 

 米ニュースサイトのアクシオスは10日、IT大手メタ(旧フェイスブック)が採用活動で多様性への配慮をやめる計画だと報じた。同社幹部は従業員宛ての書簡で「法律や政策の状況が変化している」と説明。社内の専門部署を廃止し、多様性に考慮した取引先の選定もやめるという。 

 

 米ブルームバーグ通信によると、小売り大手ウォルマートも取引先との契約で人種・性別を考慮することや、DEIという用語を使うことをやめる。性的少数者を支援するイベントへの支援も見直すという。 

 

 企業に多様性施策が広がったのは20年、白人警官による黒人暴行死事件に端を発した「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)」運動が契機だ。この後、企業間で専門の部署や役職を設ける動きが相次いだ。 

 

 しかし、23年の連邦最高裁判断を境に流れが変わった。保守派がDEIを支持する企業の商品のボイコットを呼びかけるなど、多様性施策に批判的な世論がじわりと広がった。 

 

 こうした風潮に拍車をかけたのが、20日に就任するトランプ氏だ。昨年の大統領選では「連邦政府のあらゆるDEIプログラムを終了する」と宣言。新設される「政府効率化省」のトップに就く予定の実業家イーロン・マスク氏も「人種差別だ」と批判した。 

 

 

 もっとも、企業イメージの悪化を恐れ、DEIの考え方自体に反対していないことを強調しているケースも多い。ウォルマートはDEIの代わりに、政治色が薄く柔らかい表現と受け止められる「帰属意識(Belonging)」を使用しているという。 

 

 急激な方針転換によって従業員から反発が上がり、人材流出などにつながる恐れもある。トランプ氏の政策が読めない中、米企業の困惑は当面続きそうだ。 

 

 日本企業の対応は分かれている。 

 

 トヨタ自動車の米国法人は採用サイトなどに、米国のLGBT人権団体が「性的少数者の働きやすい企業」として高く評価する調査結果を掲載していた。今後は調査を受けるのをやめる。 

 

 日産自動車の米国法人もDEIに関する活動方針を一部見直し、政治活動に重点を置く団体の調査などへの参加を取りやめるとしている。パートナーやスポンサーの選定基準も改める。 

 

 一方、日本マクドナルドは「米国に合わせて目標を変更する予定は今のところない」(広報)とする。同社は女性管理職比率を2030年度末までに40%とする目標を設定しており、今後も推進していく考えだ。 

 

 大手商社の三菱商事や丸紅もDEIを重視する姿勢について「現時点では方針の変更は予定していない」としている。 

 

 経済同友会の新浪剛史代表幹事は15日の記者会見で「DEIはイノベーションの大前提であり、日本においてますます重要だ。日本企業はもっと進めていかねばならない」と強調した。 

 

 ◆DEI=多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包括性(Inclusion)の頭文字をとったもの。企業は社員の持つ多様な個性を最大限発揮し、価値向上を目指すことが重要との考え方から近年、推進の動きが広がった。 

 

 

 
 

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