( 250959 )  2025/01/17 18:21:27  
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笠原健治氏は、mixiとmixi2の両方を発案・開発した人物であり、mixi2は20年前に生み出したmixiから20年後に登場した新しいSNS。

mixi2は初代mixiと異なり、短文投稿型でTwitterに似た特徴を持っており、開発チームは現在10人で構成されている。

mixi2の開発の背景や特徴、SNSの問題点について笠原氏が語っており、mixi2は「心理的安全性」を重視し、穏やかでほっこりした雰囲気を大切にしている。

また、初代mixiとmixi2は連携しておらず、mixi2ではゼロベースで再定義されたSNSを提供することで、初代mixiと共存しつつも新たなコンセプトを実現している。

(要約)

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MIXI取締役会長、ファウンダー 笠原健治氏。SNSのmixi、mixi2の両方を発案・開発した人物でもある Photo:Diamond 

 

 昨年末に突然、「mixi2」が登場してから、今日(1月16日)でちょうど1カ月。mixi2をつくったのは、20年前にSNS「mixi」を生み出した笠原健治氏その人である。初代mixiから20年がたった今、なぜ新たに「mixi2」を立ち上げたのか。mixi2の開発を始めた3つの理由や、mixi2と初代mixiとの関係、笠原氏の思う現状の他社SNSの問題点などについて、詳しく聞いていく。(ダイヤモンド・ライフ編集部 吉岡綾乃) 

 

● 初代mixiから20周年の2024年、突然登場した「mixi2」 

 

 2024年12月16日、突然「mixi2」なる新しいSNSが現れた。20年前、まだTwitter(X)もFacebookもなかったころに絶大な人気を誇った国産SNS「mixi」と同じ名前を冠した新しいSNSが登場したという知らせに、XやFacebookの私のタイムラインは「mixi2始めました」「mixi2の招待コード貼ります」という、かつてのmixiユーザーたちの投稿であふれかえった。 

 

 大々的に発表会が行われたわけでも、プレスリリースが出たわけでもなく、ひっそりとしたスタートだったにもかかわらず、私の周りはその日のうちにお祭り騒ぎになった。お祭り騒ぎだったのは私の周りだけではなかったようで、mixi2はリリースからわずか1週間で120万ユーザーを突破(プレスリリース)、AppStoreのアプリランキングでも1位になった。 

 

 スタートから1週間ほどで、当初の盛り上がりはいったん落ち着いた。サービス開始から1カ月がたった今、周りを見回すと、毎日mixi2を活発に使う人、適度なペースでたまに覗いている人、アカウントを作ったきり放置している人……と、現在のmixi2へのスタンスは人それぞれのようだ。 

 

● mixi2の特徴〜X(Twitter)に似た短文投稿型SNS 

 

 2024年は奇しくもmixi誕生20周年という節目の年であった。そのタイミングで出てきたmixi2の開発を統括しているのは、かつて初代mixiをつくった笠原健治氏だ。2013年にMIXI社の社長の座を譲り、現在は取締役会長として新規事業に注力している。 

 

 笠原氏のインタビューに入る前に、mixi2がどんなSNSなのかを簡単に紹介したい。 

 

 初代mixiの基本方針が(1)ユーザーの日記が中心コンテンツ(日記の日付は変更不可)(2)日記とは別に、コミュニティがあり、イベント機能もある(3)パソコンで書き込む(後にケータイ、スマホに対応)(4)ストック型コンテンツ(5)相互にフォローしあうことで「マイミク」になれる、だったのに対して、mixi2は以下のような特徴がある。 

 

■mixi2の特徴 

(1)ユーザーの短文投稿(最大149.3文字:逆から読むとミクシィ)が時系列に並ぶ 

(2)コミュニティ機能、イベント機能があり、フォロワーの投稿と同じタイムラインに並ぶ 

(3)スマホアプリで利用(iPhone版、Android版アプリあり) 

(4)フロー型コンテンツ 

(5)フォローする/外すのは自由 

(6)投稿する時の文字を大きくしたり、スマホを震わせたりできる「エモテキ」機能 

(7)投稿内容に対して、さまざまな絵文字でリアクションできる(基本はポジティブなもの)。リアクション用の絵文字は、コミュニティなどでは自作して種類を増やすこともできる。 

 短文投稿が時系列で一列に並ぶため、見た目や使い勝手としてはX(Twitter)に近い。投稿に対して、返信/いいね(リアクション)/リポストができるのもほぼXと同じだ。「フォロー」タブには自分がフォローしている友人やコミュニティの投稿内容が時系列で並び、「発見」タブには興味がありそうなコミュニティの投稿や“最近mixi2を始めたユーザー”など、運営サイドのおすすめする内容が表示される。 

 

 リアクション用の絵文字はSlackやMisskeyと似ている。Xでは「いいね」しか付けられないが、mixi2では「いいね」「最高」「尊」「笑」「wwwwww」「わかる」「ありがと」などなど数十種類のリアクション絵文字が選べ、1つタップするだけで相手に気持ちが伝わるのがポイントだ。テキストでいろいろ書き込むよりも手軽なので、なんということのない日常的な投稿でも反応がつきやすい印象がある。 

 

 

● mixi2の開発チームは現在10人 

 

 今日(1月16日)で、mixi2リリースからちょうど1カ月がたつ。リリース直後の盛り上がりが激しすぎて、登録だけしてその後使わなくなってしまった人も多かったため、口が悪い人は「Clubhouseみたい」などと揶揄しているようだ。リリース直後のお祭り騒ぎ、そして年末年始を経て、今、mixi2はどうなっているのか? 笠原氏に聞いていこう。 

 

 「実数は公表していないのですが、アクティブ率、アクティブユーザー数、投稿ユーザー数、投稿総数、いずれもジワジワと上がっています。12月31日、1月1日に年末年始の季節性でぐっと上がった後、1月2日には下がりましたが、12月30日以前よりも高い水準です。そして1月2日以降、ジワジワとそれらの数値が上がっています」(以下、鍵カッコ内の発言はすべて笠原氏) 

 

 開発チームは、当初より少し増えて、現在約10人だという。「本当に少数精鋭なチームで作っている、という感じですね。エンジニアだけじゃなくて、デザイナーも、PDM(プロダクトマネージャー)というか企画的な人、カスタマーサポートなど、いろんな職種を含めて10人です」 

 

 10人すべて、初代mixiの経験者なのだろうか。それだと平均年齢が高くなりそうな気がするが……。「過去にSNS mixi※をやっていたメンバーと、(未経験の)若手の混成チームになっています。ざっくり40歳前後のややベテランと、20代の若手と交ざってやっている感じです」 

 

 ※本文ではmixi2と見分けが付きやすいように「初代mixi」と書いているが、笠原氏は「SNS mixi」と呼んでいるため、以下、笠原氏の発言では「SNS mixi」と表記する。 

 

● mixi2の開発を始めた、3つの理由 

 

 mixi2の開発は、2023年に始まった。2023年といえば、ちょうどイーロン・マスク氏がTwitterを買収し、名称や機能などさまざまな変更を行ったことで、ユーザーの“Twitter離れ”が進んだ年である。 

 

 mixi2の開発には、大きく3つの理由があったという。1つは、MIXIという会社のアイデンティティに関わるものだ。 

 

 初代mixiのほかにも、ゲーム「モンスターストライク」や家族向け写真共有サービス「みてね」など、コミュニケーションを核としたサービスを展開してきた実績がある同社としては、「MIXI社自体が、いろんなコミュニケーションサービスを作ってきている会社なので、SNSにおいて何か一石を投じたいという思いはずっとあった」と笠原氏は語る。 

 

 2つめは、現代のSNSへの問題意識だ。もともとのSNSは“つながった人との関係性を深める”というコンセプトだったが、「レコメンドを強く効かせることで、よりメディア化していく」という昨今のSNSの潮流に対して、mixi2ではあえて原点回帰を目指した。「(今のXやFacebookが)自分中心ではなく、より……なんでしょうね、自動的に(コンテンツを)見せられる形に変わっていっていますよね。そのことへの問題意識がありました」 

 

 そして3つめが、TwitterがXに変わったことだ。「短文テキストのSNSにおけるチャンスが生まれる可能性があるんじゃないか、という判断がありました」 

 

 上述の通り、mixi2は初代mixiよりもかつてのTwitterに似ている。リアクション絵文字はSlackやMisskeyを思い出させるが、笠原氏は「特定のSNSを意識したわけではない」と強調する。 

 

 「自分たちとしては、つながった人との関係性を深められるとか、同じ興味関心についてコミュニケーションできるサービスを作りたいと思っていて。そのために必要な機能を、さまざまなアイデアを出し合いながら、チーム内でもその辺は本当にいっぱい議論しました」 

 

 

● 初代mixiと同じ「招待制」「コミュニティ機能」を採用した理由 

 

 笠原氏がmixi2で大事にしているのは「自分が主役になれるSNS」というコンセプトだ。「誰かがバズっているのを見る、レコメンドされたものを見て、周りから情報収集するだけのSNSというよりは、自分が中心となれるSNSだといいな」と、思いを語る。 

 

 その思いは、招待制を採用した理由にも表れている。「誰からも招待を受けずに入ってしまうと、本当に空っぽのタイムラインになってしまう。誰かから誘われて入って、その人のタイムラインが並んでいる状態の方が理解しやすいし、その招待した人経由でフォローすべき人が見つかるかもしれない」という考えだ。 

 

 さらに、コミュニティ機能も重要な特徴の一つだ。初代mixiで人気があった機能でもある。 

 

 「コミュニティって面白い仕組みだと思っていて。自分が興味関心があることに関して、いきなり大勢で、まとまった人数ですぐに話して、コミュニケーションを開始することができるんですよね。そこで盛り上がっていった人が、普段どういうこと呟いてるんだろう?って思って、フォローしたりフォローされたり。イベント機能もあるので、オフ会を開く、ということもあり得るかもしれません」 

 

 「人によってはその(友人)関係とコミュニティと別にしたいなって人もいるとは思いますし、別だからこそ盛り上がりやすいという面もある」と、ユーザーの多様な使い方にも配慮している。「mixi2を使っていない人にも、コミュニティやイベントページのURLを共有することは可能です。あと、使っている人はまだあまりいないと思いますけど、コミュニティからmixi2に招待する、という機能もあるんですよ」 

 

● ほっこり、平和なSNSに〜「心理的安全性」を重視する理由 

 

 mixi2の一つの特徴が、全体的にほっこり、平和なムードであることだ。リアクション絵文字は基本的にポジティブな言葉ばかりだし、誰かの投稿に返事をしようとすれば“やさしいことばで返信しよう”と表示される。あくまで私の観測範囲内の話ではあるが、ギスギスしたり罵倒し合ったりという状況も、今のところ見たことがない。 

 

 現在のSNSについて、笠原氏は「SNS自体が『なんか危ないもの、怖いもの』って感じに、特にこの数年なってきている」と指摘する。「レコメンドが効きすぎることの弊害ってありますよね。本人はそこまで大声を張り上げていろんな人に言ったつもりはないのに、めちゃくちゃ大声になっちゃってて、ちょっと軽く言ったつもりの発言で大炎上しちゃった、といった事例が増えている」 

 

 レコメンドが効いた結果、確かにXでは日々あちこちで炎上が起きている。「SNSでは怖くて発信できない」「SNSにはリスクしかない」と思う人が増えている現代のSNS、特にXの状況とは対照的に、mixi2では心理的安全性を重視している。「インターネットなので100%防げるとは言えないが、(mixi2は)おおむね平和な、身内で安心してワイワイしやすい空間になっています」と自信を見せる。 

 

 UIデザインにもその思想は反映されている。「アニメーションやハプティクス反応(注:スマホを持つとブルッと振動し、手に伝わること)など、使っていて楽しい感じを演出したいなと思って、デザイナー、エンジニアが工夫していろいろ入れている」という。また、何の接点もない第三者の投稿が見える設計にはしていないことも、心理的安全性を担保する一つの要素となっている。 

 

 

● なぜ、mixi2は初代mixiとまったくつながっていないのか 

 

 新しいSNSをアクティブに使ってもらうには、「つながっている人が最初からたくさんいること」は非常に重要になってくる。例えば、LINEはスマホの電話帳から友人を一斉に友達に追加する機能を、Threads(スレッズ)はInstagramのユーザーをそっくりインポートする機能を持っていたために、ユーザーは最初から何人ものフォロワーがいる状態で使い始められたし、多くのユーザーが活発に利用できたといえる。 

 

 mixi2も、初代mixiからマイミクをインポートする機能や、mixi2から初代mixiの日記が書けたり、mixiニュースが見られたりする機能などがあれば便利だろうと思うのだが、初代mixiとmixi2は、IDも機能的にもまったく連携していない。初代mixi上では、mixi2のアナウンスすらしていない。これはなぜなのだろうか? 

 

 初代mixiとmixi2を、笠原氏は明確に切り分けて考えている。「SNS mixiは長い歴史があって、PCから始まっているので、本当にいろんな機能がたくさんある」と説明する。 

 

 「(SNS mixiでは、)長い人だと、20年前につながった人との関係性がある状態。そっちはそっちで、もう世界観ができ上がっている。そこで、急に新しいSNSが始まったと言われても、戸惑う人はやはり多いと思うんですよね。今の機能とか人間関係とか、使用感みたいなものが好きで使ってくださっている方たちだと思っているので、そこを急に変えますというのはちょっとやりすぎだろう、というのはありました」 

 

 「あと、SNS mixiは一応、黒字で運営してはいるんですよね。なんというか、生態系としてはできてる状態。そこをあえて(mixi2との連携のために)フルリニューアルしましたとかすると、逆に混乱を生むというか……望まれてはいない可能性がある。だから(mixi2は)ゼロベースで、自分たちが新しく再定義したものを出していった方が、初代もmixi2もお互いハッピーなんじゃないか。そう考えています」 

 

● mixi2は、穏やかでほっこり、自分が主役となれるような場 

 

 こうした理由で初代mixiとの機能連携はしていないが、根底にある思想は共通している。「少し狭めの(ソーシャル)グラフの中、気軽に、なんかほっこりした感じで、穏やかにワイワイするみたいな」〜このコンセプトは、確かに初代mixiからそのまま引き継いでいるものだ。 

 

 「本当になにげない、おはよう、とか、ランチでこういうもの食べたとか、そういう日常的なことが書かれていることが多いですよね。仕事から帰ってきて疲れたー、とか。そこに返ってくるリアクションも、割とポジティブというか、優しい反応が多いですし。そういった穏やかな空間でもあるなと思っています。これは最初のmixiの時にも考えていたことですけど、自分が主役となれるような、そして友だちとつながっていく場でありたい、そう思っているんですよ」 

 

 インタビュー後編では、mixi2の課題について深掘りしていく。「どう活性化するか?」そして「どうやって収益化するか?」という2点だ。現在のmixi2にはない機能など、今後の展開についても答えていただいたので、特にmixi2ユーザーにとって気になる内容になっているので、お楽しみに。 

 

ダイヤモンド・ライフ編集部/吉岡綾乃 

 

 

 
 

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