( 251339 ) 2025/01/18 15:08:30 1 00 2025年には「投資から貯蓄へ」の逆転が起こる可能性があるかもしれない。 |
( 251341 ) 2025/01/18 15:08:30 0 00 写真はイメージです Photo:PIXTA
2025年は、「投資から貯蓄へ」の逆回転が起きる年となるかもしれない。そんな予兆を感じさせる気配が忍び寄ってきている。その舞台となっているのが定期預金の特別金利キャンペーンだ。(消費経済ジャーナリスト 松崎のり子)
● 1年物定期預金で魅力的な金利が並ぶ
昨年2024年は、まさに「貯蓄から投資へ」の波を見た年だった。新NISAのスタートを祝すように、日経平均はぐんぐん上昇。3月には史上初の4万円台を突破し、7月22日に終値で4万2224円と最高値を更新する。「やはり投資すればお金は増える」と感じた投資初心者たちは多かっただろう。
あいにく8月にはその楽観ムードを吹き飛ばす暴落ショックが起きるわけだが、積み立て投資の未来を信じる新NISA族は、引き続き粛々と資金を積み上げている。
明けて2025年。取引スタートとなる6日に日本取引所グループの山道裕己CEOが「新NISAがスタートしてから1年がたち、長年の悲願である『貯蓄から投資』への流れが大きく進んでいると感じる」と挨拶していたが、本当にそうだろうか。
ひょっとすると、逆に「投資から貯蓄へ」の逆回転が起きる年となるかもしれない。そんな予感がする気配が忍び寄ってきている。その舞台となっているのが定期預金の特別金利キャンペーンだ。
ボーナスでまとまった金額が入金される夏・冬のタイミングで、ネット銀行やネット支店がキャンペーンで特別金利を出してくるのは例年のことだ。とはいえ、長く続いたマイナス金利政策の影響で、このところはさほど魅力的な数字を見ることはなかった。
潮目が変わり始めたのは、マイナス金利政策解除に踏み切った24年3月のことで、すぐさま銀行は反応した。定期預金金利は23年からすでに上昇していたが、いよいよ普通預金の金利が変更された。三菱UFJ銀行では、2007年以来という17年ぶりに年0.001%から0.02%へ上げ、「金利がある時代が来た」とアピールした。
そして迎えた2024年夏のボーナス金利キャンペーンでは、ネット銀行中心に1年物定期預金で年0.3〜0.4%という、まずます魅力的な金利が並ぶようになる。この数字はぜひ覚えておいてほしい。2024年冬にはこの景色が大きく変わるからだ。
● 期間途中で金利引き上げ合戦勃発?
12月に入り、SBI新生銀行が「円定期預金 冬の金利アップキャンペーン」を発表した。その1年物の金利はなんと0.8%(預け入れは一口30万円から。2025年3月10日まで)。2009年以来、約15年ぶりの高金利だという。それより前に特別金利を発表していたauじぶん銀行が0.65%、ソニー銀行、ローソン銀行が年0.6%だったため、SBI新生銀行は「業界最高水準!」と宣言している。
ここでいったん、さっきの数字を思い出そう。夏の定期金利は0.3〜0.4%だったと書いた。それが半年後には0.6〜0.8%と、二倍に跳ね上がったことになる。期間限定のキャンペーン金利とはいえ、こんな上昇スピードはこれまであっただろうか? 驚くのはそれだけではない。さらに意外なことが起きている。キャンペーン期間内の金利の見直しだ。
まず、auじぶん銀行が24年12月4日に出していた金利から、12月23日に0.2%引き上げた。
・24 年12月4日〜2024年12月22日……年0.65% ・24 年12月23日〜2025年2月28日……年0.85% これに現金特典(円預金を増やすと年0.15%の利息相当額がもらえる)を加えて最大で年1%になるとし、「ネット銀行最高金利水準!」と胸を張った。
更に、年が明けた1月7日に、今度はソニー銀行が金利引き上げのリリースを出した。
・12月2日〜1月6日……年0.6% ・1月7日〜3月31日……年0.8%
いずれも、最初の金利を発表してひと月あまりのうちに0.2%を上乗せしてきたことになる。かつて、こんなことがあったどうか記憶がない。というか禁じ手ではないだろうか。
というのも、最初に発表された金利目当てに預け入れした預金者は、引き上げの恩恵にあずかれないのだ。すでに0.6%で預け入れを終えていた人が、アップ後の0.8%の金利が欲しいとなると、すでに預けた定期預金をいったん解約して新規で預けなおすか、別の定期預金を新たに作るほかない。
預金者からクレームが出てもおかしくない途中引き上げに踏み切ったのだから、各行は本気で預金者を取りに行っていると見える。
ちなみにトップの座を奪われたSBI新生銀行に、もうひと頑張りの上乗せはあるのだろうか? そちらも興味深く見守りたいところだ。
● 預金の逆襲か。さらなる利上げ期待も
マイナス金利時代の定期預金は、メガバンクで年0.002%程度、ネットでも0.02%ほどだったのだから、期間限定のキャンペーン金利とはいえ、それがいきなり0.85%まで引き上げられるとは驚きだ。この先一段と上昇があるかどうかは日銀の金融政策次第だが、昨年夏の0.3〜0.4%が冬には0.6〜0.8%まで上がったことを思えば、次回の25年夏キャンペーンで今回より低い金利を出すとは考えにくい。
25年も物価高は続くと思われ、円安を抑えるためにも日銀は利上げタイミングを伺っていることだろう。もし、今年早々に利上げとなれば、25年夏にはさらなるキャンペーン金利の引き上げも十分予想できる。もし、1%を超えるような金利が出てくれば「貯蓄から投資へ」と聞いて預金から資金を動かしていたシニア層が、再び「やっぱり預金でいいか」と回帰の動きを見せるかもしれない。
元本保証で金利が約束されているのが預金のいいところだ。積み立て投資により長期でじっくり資金を増やしていくのも、もちろん有効な方法だろう。しかし、資産が増減するのを好まない人や、1円も減らしたくない用途のお金なら、高金利の時を狙って1年物定期に預け、翌年満期が来た定期を、次のキャンペーンで1年物に乗り換えていく方法も悪くない(ただし、定期預金は固定金利であるため、複利効果はほとんど期待できない点は注意)。
ここまでは定期預金の話だが、普通預金の優遇も加速している。こちらはいわゆる「経済圏競争」だ。ネット銀行大手の楽天銀行は、24年12月末に預金残高(単体)が12兆円を突破したと発表した。
この銀行は言わずもがなの楽天経済圏の中心でもある。経済圏利用者向けの優遇として、25年3月から、「楽天ゴールドカード」「楽天プレミアムカード」「楽天ブラックカード」の利用金額引き落とし先を楽天銀行にした場合、通常で年0.12%の普通預金金利を0.13〜0.18%に引き上げる。
au経済圏では、通信プラン「auマネ活プラン」が好調だという。これはauマネ活プランに加入し、スマホ決済「au PAY」との連携、auPAYカードの利用料金の引き落とし、auカブコム証券(2月から三菱UFJ eスマート証券に改称予定)との連携などの条件を達成すると、最大で年0.41%まで普通預金金利がアップする。
2社とも預金そのものを集めたいというよりも、経済圏への囲い込みが目的だろう。楽天はグループのサービス利用をいっそう促すこと、auは通信契約の乗り換えを防ぐこと等が優先事項だ。預金金利を上乗せしたとしても十分元が取れるに違いない。
海外に目を向けてみれば、第二次トランプ政権の動きがネックになるだろう。その影響が日本経済にどう出るかは未知数だ。25年は日経平均の4万円台が日常となり「預金から貯蓄へ」が加速するのか、それとも利上げで預金金利がいっそう上昇し「投資から貯蓄へ」と守りに入るのか。我々はしばらく経験してこなかった悩みを抱えそうだ。
※金利は1月15日現在。税引き前
松崎のり子
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