( 251429 )  2025/01/18 16:54:07  
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今年行われる東京都議会議員選挙で自ら代表となる地域政党「再生の道」を立ち上げた石丸伸二氏は、都議会だけでなく中央政界でも波紋を広げている。

石丸氏は都知事選で大躍進し、今回の都議選に挑むことで政局に大きな影響を与える可能性がある。

石丸氏の新党の運営方針や都議選への挑戦には賛否が分かれ、他の政党も石丸氏の挑戦に警戒している。

都議選は12年に1度の参院選と同時に行われ、その結果が政局にも影響を与える歴史がある。

石丸氏の狙いは次期都知事選での勝利であり、その成否が夏以降の政局展開に影響を与えるかもしれない。

(要約)

( 251431 )  2025/01/18 16:54:07  
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(写真:時事) 

 

 石丸伸二・前広島県安芸高田市長が15日の記者会見で、今年行われる都議会議員選挙での議席獲得に向け、自らが代表となる地域政党「再生の道」の旗揚げを表明したことが、都議会だけでなく中央政界にも波紋を広げている。去年7月の東京都知事選で“石丸旋風”を巻き起こして2位となった同氏が、次期参院選の前哨戦となる都議選に挑むことで、都議会の各党・会派の勢力図が大きく変わる可能性があるからだ。 

 

 そもそも、今年の都議選は「12年に1度の参院選との“同時選挙”となり、これまでも、その結果が参院選での各党の消長やその後の政局展開にも大きな影響を与えてきた」(政治ジャーナリスト)という歴史を持つ。 

 

 とりわけ、都知事選での石丸氏大躍進の要因となった「SNS選挙」が、その後の兵庫県知事選での斎藤元彦氏の「“想定外”の再選」や、衆院選での玉木雄一郎氏(代表職停止中)率いる国民民主党の議席4倍増につながったとされるだけに、与野党を問わず、「石丸氏の挑戦に戦々恐々」(同)というのが実情だ。 

 

■「政策はそれぞれの判断」という石丸新党の運営方針 

 

 その一方で、石丸氏が会見で明らかにした「2期8年限定議員」「政策はそれぞれの判断」「既成政党との兼任も可能」などの党運営方針には、「従来の政党の在り方とはかけ離れており、まったく現実味がない」(選挙アナリスト)との厳しい指摘も相次ぐ。加えて、石丸氏がいわゆる既存大メディアとの「対決」を宣言したことが、「石丸戦略の大きな“落とし穴”になる」(同)との声も少なくない。 

 

 さらに、最終的な石丸氏の狙いは「次期都知事選での勝利」とみられるだけに、小池百合子知事と、小池都政を直接、間接で支える地域政党・都民ファーストの会(都民ファ)や公明、自民両党の都連幹部らは今後、「それぞれの立場での“石丸潰し”に腐心する構え」(自民都連幹部)。このため、「石丸新党の都議選挑戦の成否が、夏以降の政局展開を占うカギ」(政治ジャーナリスト)となることは間違いなさそうだ。 

 

■唯一のルールは「2期8年」の多選制限 

 

 

 石丸氏は15日の記者会見で、「今後、公募で候補者を募り、適格者を選んで全42選挙区での擁立を目指す」と明言。併せて、立ち上げた地域政党「再生の道」について「『日本がまずい』、『なんとかしなければいけない』という思いから、日本をよみがえらせるという意味を込めて『再生』とした。広く国民の政治参加を促し、それぞれの自治体の自主性や自立性を高め地域の活性化を進めていく」と力説した上で、「党の唯一のルールとして多選制限を設け、2期8年を都議会議員としての上限にする」ことなどを打ち出した。 

 

 石丸氏は広島県安芸高田市出身の42歳。京都大学卒業後、今の三菱UFJ銀行勤務を経て2020年、地元・安芸高田市長選挙に出馬し初当選。市長就任後には、市議会の最大会派との対立なども含め、SNSでの積極的発信で注目を集め、任期途中で辞職して昨夏の都知事選に出馬、立憲民主党が「小池氏打倒の唯一の切り札」として擁立した蓮舫前参院議員を大きく超え、小池氏に次ぐ165万票余を獲得して、中央政界にも衝撃を与えた人物だ。 

 

 だからこそ、今回の「何もかも常識破りの石丸新党の都議選での“戦果”に、一般都民も興味津々」(都選管関係者)であることは間違いなく、選挙アナリストの間では、早くも新党の獲得議席予測が出回り始めている。 

 

■“石丸旋風”再現でも「10議席前後」との見方も 

 

 そこで問題となるのは、現在の都議会の基本的構成だ。都議会の議員定数は127人で、各会派の議員数は=自民30・都民ファ27・公明23・共産19・立憲民主14・ミライ会議4・自由を守る会2・無所属5・欠員3=だが、中央政界と異なり、都民ファも含め、組織力がある政党が優位で、維新や国民民主などは会派結成すらできていない。 

 

 そもそも、都議選は23区とそれ以外の各市や郡部に細分化されているため選挙区数は42と多く、いわゆる「中選挙区制」だが、23区も含め定数3以下の選挙区が29、定数4以上が13となっている。そうした都議会の「特殊事情」も踏まえれば、「各議員が市区町村単位で独自の組織票を持つという現状にどう挑むかが、石丸新党の最大の課題」(選挙アナリスト)となる。 

 

 このため、選挙関係者の間では「全選挙区に候補者を擁立しても、新党の候補の議席獲得が見込めるのは定数4以上の選挙区にほぼ限定され、なかでも定数5以上の8選挙区が狙い目で、“石丸旋風”再来でも獲得議席は10前後」(同)との見方が支配的だ。ただ、次期都議選は石丸新党だけでなく、これまで存在感を示せなかった維新、国民民主を含めた「新勢力」の参戦が確実視されているため、「過去にない大乱戦となり、これまでの都議会勢力図が一変する可能性が大きい」(同)とみられている。 

 

 

 そうした状況も踏まえ、石丸新党を迎え撃つ与野各党の受け止めもさまざまだ。自民党都連会長の井上信治・元万博担当相はNHKの取材に対し「都知事選挙であれだけの得票を得た人なので、一定の影響力はあると思う」と警戒心を隠さなかった。また、小池知事の支持母体となる都民ファ・森村隆行代表も「石丸氏の主張はわれわれが行ってきた改革と共通する部分もあるが、都民ファーストの会は都民の活力を最大化するため小池知事と協力しながら政策の実現まで行っていくのが最大の違いだ」と対抗心をあらわにした。 

 

 一方、公明党都本部代表の岡本三成・党政調会長は「公明党にとって都議選は最も大切な選挙の1つ。20選挙区で22人の候補者全員が必ず当選することが目標」と組織力で迎え撃つ考えを強調。また、田村智子・共産党委員長は16日の会見で「(石丸新党は)政策がない。そして『東京都のここが問題で変える』という理念もない。これは、政党とは言えない」と厳しい見方を示した。 

 

 また、都議会立憲民主党の竹井庸子幹事長もNHKの取材に対し、「政策が1つも語られず、東京をどうしようとしているのかわからないので見極めが難しいが、閉塞感があって、既成政党ではできないことがこの人ならできるんじゃないかと注目をされている」と冷静な分析にとどめた。 

 

■連携に前向きな維新・吉村氏、慎重姿勢の国民民主・玉木氏 

 

 そうした中、石丸氏が連携の可能性をにじませた日本維新の会代表の吉村洋文・大阪府知事は同府庁で記者団に対し、「新党はおもしろいと思うし、期待もしている。政治屋を一掃して、多選を禁止し、2期で腹をくくってやるべきことをやり遂げるというのは、新しい地域政党の形。覚悟を決めて政治をやるというのは、非常にわれわれとも近いところがあり、連携や参加の可能性もあるので、前向きに考えていきたい」と連携に前向きの姿勢をアピール。 

 

 その一方で、石丸氏が記者会見で「支持層が重なるので話はできる」と秋波を送った国民民主党の玉木氏は、国会内で記者団に対し「既存の政治を変えていこうという大きな方向性については同じ思いのところもあるが、政策がまだ出ていないので全体像がよくわからず、今の時点で連携するかどうか判断するのは難しい」などと踏み込んだ言及を避けた。 

 

 そうした中、記者会見でも際立った石丸氏の既存の中央メディアとの「敵対姿勢」については、関係者の間で「最近の国民のメディア不信を利用しようとの魂胆がミエミエだが、新党を巡る今後の各メディアの報道ぶりにも影響する」(民放テレビ局幹部)との指摘も少なくない。石丸氏が得意とするSNS上でも、「『何がしたいかわからない!』『単なる売名行為!』」などの書き込みもあり、「都議選前に賞味期限切れになるのでは」(政治ジャーナリスト)との厳しい予測も出始めているのが実情だ。 

 

泉 宏 :政治ジャーナリスト 

 

 

 
 

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