( 251459 )  2025/01/18 17:26:51  
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政治ジャーナリストの青山和弘が国民民主党の玉木雄一郎・衆議院議員をゲストに迎え、税の議論について議論。

玉木氏は、働く人への支援を強調し、現役世代を支えないと高齢者も苦しむと指摘。

所得税増加に注目し、消費税よりも所得税に重点を置くべきと話す。

最低賃金引き上げは経済への波及効果も大きいとし、働き控えの存在や最低賃金の上昇に基づいて基準を設定する必要性も語る。

最低賃金の基準を見直していくことで現役世代の生活費に応じた取り組みが必要と述べた。

(要約)

( 251461 )  2025/01/18 17:26:51  
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「現役世代を強くしないと、結局高齢者も苦しむことになる」と話す玉木氏 

 

政治ジャーナリストの青山和弘が政党や各界の論客をゲストに招き、日本の政治を深掘りする「青山和弘の政治の見方」。今回はゲストに国民民主党の玉木雄一郎・衆議院議員を迎え、目下注目の集まる「税の議論」について直撃した。 

※記事の内容は東洋経済の解説動画シリーズ「青山和弘の政治の見方」の下記の動画から前編の一部を抜粋したものです。外部配信先では動画を視聴できない場合があるため、東洋経済オンライン内、または東洋経済オンラインのYouTubeでご覧ください。 

 

 ――国民民主党がとくに強く打ち出している賃金を上げる政策、手取りを増やす政策は、給与所得のある人にとってはもちろん効果があるものですが、年金生活者や就労前の若者、あるいは生活保護を受けているような方にはあまり関係がありません。あえて「働く人を助ける」という方向に、思い切り振っているということでしょうか。 

 

 はい。あえて「働く人」に光を当てています。例えばコロナ禍などでも、住民税非課税世帯に何万円配ろう、みたいな政策はずっと続いてきた。ところが住民税非課税世帯って、4分の3が60歳以上なんですよね。事実上の高齢者支援になっています。 

 

 こういう人たちを助けていくのは政治の重要な役割ですが、一方で働いて税金を払っている人たちへの支援が、今の日本ではいろいろな面ですごく薄い。支える側の支える力を強く太くしない限り、結局年金は減ってしまうし、医療・介護も充実させられません。 

 

 ある種忘れられた、でもとても大事な働く層、若年層にもっと光を当てて応援できる政治があっていいんじゃないかと。 

 

■日本で働くインセンティブが削がれてしまう 

 

 ――自民党、あえて言えば立憲民主党もそうですが、高齢者に向けた政治に力を入れている人たちへのアンチテーゼという意味があると。 

 

 われわれも高齢者を軽視しているわけではないのですが、現役世代を強くしないと、今の世代間の支え合いを前提とした社会保障制度だと、結局高齢者も苦しむことになる。現役世代に光を当てる政党がほかにあまりないので、だったらわれわれがやろうと。これはけっこう賭けでした。 

 

 今、国民負担率が48%になっているということで、稼いだものの半分ほどを税金や社会保険料で持っていかれる。この比率が高いほど、日本で働くインセンティブがだんだん削がれてしまいます。そうではなく、頑張って働いた分だけ自分自身が豊かになれるというふうにすることで、ダイナミックな社会にできるんじゃないかと思います。 

 

 

 ――「103万円の壁」の見直しをめぐり、自民党内からは、国民民主党の主張する178万円までの引き上げは「所得税だけ大減税で、バランスが悪すぎる」という意見が聞かれます。高額所得者の減税分が大きい、ほかにも負担を減らすべき税金があるのではないか、といった指摘がありますが、これらについてどう考えますか?  

 

 進行年度(2024年度)と来年度(2025年度)予算の税収を比べると、国税だけで8.8兆円増えます。地方税は3兆円増えるので、合わせて約12兆円、たった1年で増えるんですよ。 

 

 このうち5兆円増えているのが源泉所得税なので、半分弱くらいは国民の所得に関する増加分であると。累進課税で、ここ数年の賃上げもあってより高い税率のほうにボリュームゾーンがシフトしてきているので、そのへんがかなり効いてきている結果です。 

 

 なので、もちろんいろいろ減税策を考えていったらいいとは思いますが、この間、所得税がぐっと増えていっていることは無視できない。これを是正するためにも、まず所得税に注目したらどうかと思います。 

 

 1年間で12兆円税収が増えるとなれば、仮に7兆円減税したとしても5兆円は増収する。1年間で12兆円を消費税で取るとすると、4.5%分くらいに相当し、かなり大きい。だから1年で5兆円くらいの税収増に抑えたほうが、国民の手取りの増加にも、弱含んでいる消費の活性化にもつながるのではないでしょうか。 

 

 何より「103万円の壁」は、最低賃金が上がっていく中で働き控えという供給抑制にもなっているので、この引き上げは需要サイドだけでなく供給サイドを刺激する。消費を活性化しましょうというだけの減税策を超える効果があります。 

 

■少なくとも百万人単位の「働き控え」 

 

 ――一方で、働き控えをしている人は実際どれくらいいるのか、引き上げることで働く人はそんなに増えるのか。実際の効果を疑問視する経済学者などもいますが。 

 

 全国に200万人くらいは対象がいると思います。というのも、われわれの同僚議員が香川県高松市の市議会で質問しているんですが、高松市内で働き控えをしている人の数を調べると、約1万6000人いるとわかりました。高松市でこの数字だと香川県全体で2万人くらい。香川県はよく「日本の1%経済」といわれるので、全国だと200万人くらいと推計できます。 

 

 

 いわゆる「働き控え」なので、まったく働いていない人がリスキリングして新しい技能を身に付けてから労働市場に入ってくるのではなく、すでに働いている人が同じ能力で追加的に働いてくれる。これには能力開発のコストもまったくかりません。スムーズに労働力を供給できるので、経済への波及効果も非常に大きいはずです。 

 

 もちろん精緻な分析は必要ですが、少なくとも百万単位の働き控えの人が追加的な労働供給をする潜在的な余地はあるといえます。 

 

 ――現状だと、最低賃金の上昇分に合わせて178万円とする国民民主党と、物価上昇率に合わせて123万円とする自民党、それぞれの主張には開きがあります。交渉事なのでどこかで折り合う必要もあると思います。 

 

 私は今交渉の前面には立っておらず、古川元久代表代行らが中心になってやっていますが、何にせよ真摯に向き合って、予算案の衆議院通過までに何らかの折り合いをつけられるようにしたいです。 

 

 われわれも178万円というのは1つの理屈に基づいて言っているので、仮に178万円ではない数字で合意するにしても理屈が重要。国民民主党を応援いただいた方々にきちんと説明できる理屈を詰められるかです。 

 

 物価上昇率は1つの基準だと思います。われわれが基準としている最低賃金も、労働者の生活費を踏まえて決めると法律で定められているので、ある意味では物価上昇を加味した概念です。働いている人の「負担がこれだけ上がったな」という生活実感に最も忠実に決められている数字なので、その上昇率の1.73を使っている。 

 

 生活コストをどのように勘案していくのか、その際にどの数字を使うのか。これがポイントになってくるかなと思います。 

 

■「178万円以上」になっていく可能性も 

 

 ――最低賃金は今後も上がっていくから、ここでその基準を採用して178万円にするとどんどん上げなきゃならなくなる、という懸念も自民党の中からは聞かれますが、この点についてはどうでしょう。 

 

 いいじゃないですか、どんどん見直していけば。生活保護の水準、あるいは高齢者が受け取っている年金の水準も、物価によるスライドが入っています。でも働く人の所得から控除される額には物価スライドが入っていない。だから30年間ほったらかしだったんですよね。 

 

 当然働く人の生活費も上がっていくので、物価に応じて手元に残るお金を増やしていく仕組みは入れておかないといけないんじゃないかなと。178万円以上になっていく未来も考えていけばいいし、場合によっては、今度法律を作るときに、物価連動条項みたいなものを入れればいいのではないかと思います。 

 

青山 和弘 :政治ジャーナリスト、青山学院大学客員研究員 

 

 

 
 

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