( 251566 ) 2025/01/18 19:21:21 0 00 中居正広と港浩一社長
1月17日、フジテレビの港浩一社長(72)が緊急会見を開いた。タレントの中居正広(52)と女性とのトラブルに、フジの社員が関わっていたという報道について説明するものと思われた。
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昨年末から報じられている中居の女性トラブルは、日を追うごとに波紋を広げている。そのための会見だが、参加できたのは全国紙やスポーツ紙が加盟する「ラジオ・テレビ記者会」の加盟社と、オブザーバーとして参加が認められたNHKと民放キー局の各社1人のみ。しかも、フジテレビ以外のテレビ局は質問すらできなかった。ネットメディアやフリーの記者、この問題を報じた「女性セブン」や「週刊文春」も閉め出され、言うまでもなくデイリー新潮も会見場に入り込むことはできなかった。
もっとも、緊急会見で港社長が主張した内容は、昨年12月27日にフジが発表した「一部週刊誌等における弊社社員に関する報道について」で、《当該社員は会の設定を含め一切関与しておりません。/会の存在自体も認識しておらず、当日、突然欠席した事実もございません》と報道内容を全面否定したものと大差ないようだ。少し前進したように見えるのは、「第三者が入る調査委員会」を設置することくらいだ。
果たして、この会見にどのような意味があったのか――。企業の危機管理コンサルティングの専門家に訊いた。
「会見は危機管理のために行われるものですが、これは危機“喚起”以外の何ものでもありませんでした。かえってフジテレビが危機に陥る結果となりました」
と話すのは、株式会社リスク・ヘッジ取締役の田中辰巳氏だ。危機を“喚起”する会見とは、どのような意味だろうか。
「危機管理は『感知』『解析』『解毒』『再生』という4つのステージを踏むことが基本です。危機を素早く『感知』し、現状と展開を『解析』した後に、詳しい説明や謝罪などで『解毒』した上で、窮状からの『再生』を図るわけです。そのうち会見は『解毒』にあたり、毒をなくしたり薄めたりするために行うものです。しかし、今回の会見には全く解毒効果が見られませんでした」(田中氏)
具体的にはどこがまずかったのだろう。
「会見というのは自分たちが喋りたいことを喋る場ではなく、メディアが聞きたいことに答える場です。しかし、今回の会見は、ラジオ・テレビ記者会の加盟社を除けばフジ以外のテレビ局は質問ができないなど相手を限定し、自分たちに都合のいい状況を作ってしまうというのは解毒には向いていません。また、『第三者を入れた調査委員会』の設置と言っていますが、“第三者を入れる”では駄目です。日本弁護士連合会のガイドラインに沿ったような“第三者だけで構成”しないといけません。しかも、その第三者の調査が終わる前に断定的なことを言っては駄目なんです。それでは第三者委員会を作る意味を否定するようなものですから」(田中氏)
年末にフジが発表した内容と同様、今回の会見でも「当該社員が企画したり、ドタキャンしたりしたこともない。会合を開いた事実もない」と全否定した。
「食事会を設定していないと断定するのであれば、その日は何をやっていたとか、それは誰が証明できるとか、当該社員がどこで何をしていたとか、言葉ではなく証拠で示さなければいけません。“シロ”の人間というのは、明確な証拠を提示することで無実が証明できますから」(田中氏)
それができたのは、意外にもドジャースの大谷翔平だという。
「昨年、大谷選手の通訳が賭け事で大きな借金を背負ったときに、彼はドジャースの同僚や関係者に自分のスマホを見せて自身の関与を否定する証拠を示しました。これで彼はチームから信用されたのです。逆に“グレー”や“クロ”の人間というのは、“無実”ではなく“無罪”を語るものです。それを考えると、港社長は“無罪”を語っただけにように思われます。ですから、説得力も解毒効果もないのです」(田中氏)
ちなみに、田中氏はフジから何度も取材を受けてきたという。
「『めざましテレビ』などで、企業の不祥事についてどこが問題かということを答えてきました。解毒するための会見でかえって毒を増やしてしまうのは、危機管理ではなく危機“喚起”だとコメントしてきたんです。それをフジは、自らやってしまったわけです」(田中氏)
コメントのし甲斐がなかったということだろうか。
「それもありますが、今後、フジの記者やディレクターが取材をしにくくなってしまうことが私としては心配です。なぜこんな記者会見を行ってしまったのか理解に苦しみます」(田中氏)
思えば1年前、ダウンタウンの松本人志(61)による性加害疑惑が報じられたときの吉本興業の対応と重なって見える。松本の報道があったのは2023年12月27日だったが、同日、吉本は報道を全否定する文書を出した。年が明けて昨年1月8日、松本は裁判に注力すると宣言。同24日、吉本は《事実確認を進めている》と発表した。
一方、昨年12月26日に中居の女性トラブルが報じられた翌日、フジは全否定の文書を発表。年が明けて1月9日、中居が謝罪のコメントを発表。そして今回の会見という流れだ。ちょうど1年違いで、似たようなことが繰り返されているようにも思える。
「まさにデジャヴュですね。企業の危機管理にはデジャヴュが少なくありません。なぜかというと、人は危機に遭遇すると2つの“トウソウ”本能に支配されてしまうことが多いからです。この2つに支配されると、危機管理は失敗するのです」(田中氏)
2つのトウソウとは「逃走」と「闘争」のことだという。
「今回の問題は一昨年6月に起こったといわれていますが、フジはこの問題から1年半ほど逃げて(逃走)きました。それが報じられると闘い(闘争)に転じました。このように2つのトウソウに支配されてしまったわけです。例えば、山で熊に遭遇したら逃げてはいけないと言われます。じっとして、熊の目を見ながら後ずさりする、冷静な対応が必要です。しかし、ほとんどの人は怖いから逃げます。逆に、そこに子供や奥さんがいたら、男は熊に勝てるわけがないのに戦おうとする。どちらも間違っていて、逃走と闘争に支配されているから間違うのです。企業も芸能人も同じことをしてしまうのは、人間の性と言ってもいいでしょう」(田中氏)
ならば今回の会見は、どうすべきだったのだろう。
「解毒の際は『反省』『後悔』『懺悔』『贖罪』のステップを踏んで行うべきです。自分がやったことを否定的に捉えて反省し、しっかり後悔し、懺悔をして、罪をあがなう(贖罪)という順番が大切です。先に贖罪をしたところで、懺悔がなければ相手は許してはくれません。訴訟社会のアメリカと違って日本には判官贔屓があるので、比較的許されやすい社会です。元ゴーストライターの新垣隆さんなんて、あれだけ叩かれたにもかかわらず、贖罪までの順番が正しかったから、今では人気者になったのです」(田中氏)
危機を正しく受け止められなかったのが問題だという。
「アメリカではMe Too運動、日本でもジャニー喜多川氏の性加害問題があり、その中でこういう問題を危機として察知できなかったこと自体がフジテレビの問題です。今回の問題は、フジテレビに不作為があったかどうかが一番重要なところです。その視点を持って調査しなければいけないし、被害女性の訴えにやるべきことをやったのかどうかが問われると思います。そこをきちんと語らなければいけません。また、不作為があったかどうかが問われないような行動を取るべきでした。これから第三者委員会を立ち上げるわけですから、まさに危機“喚起”の記者会見と言わざるを得ません」(田中氏)
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デイリー新潮編集部
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