( 251739 )  2025/01/19 05:47:48  
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2025年1月8日に行われた石破茂総理大臣へのインタビューで、社会保障や医療費に関する議論が行われた。

石破総理は、医療費削減のためにデジタル技術やAIの活用を提案し、適切な医療を提供する仕組みの構築を重要視している。

また、経済成長と医療水準の維持のバランスを取る必要性や、投資活性化の重要性についても述べられた。

(要約)

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石破総理大臣 

 

 令和7年(2025年)1月8日、NHK「首相動静」の表記によれば、<16:29 ネットメディア「みんかぶマガジン」のインタビュー(~17:02)>に、石破茂首相へのインタビューを行った。インタビューは、SNS規制、地方創生、減税、経済政策など国政の主要課題について行われた。なお、掲載にあたって読みやすや話題のまとまりを重視して、順序を入れ替えた部分がある。今回は「社会保障」「医療費負担の行方」について。(聞き手は、鈴木聖也みんかぶ編集長、小倉健一)全5回の第4回。 

 

 年金や介護、医療などの社会保障は、人々の生活を守る仕組みとして重要とされてきた。この社会保障には、経済を支える役割もあると考えられている。他方、社会保障が経済に与える影響は、極めてネガティブだ。 

 

 多くの実証データや研究では、社会保障が増えると経済成長がマイナスの影響を受けると結論づけている。日本銀行の研究(古川尚史・高川泉・植村修一、2000年、「国民負担率と経済成長」『日本銀行調査統計局Working Paper Series』)では、社会保障の規模を表す国民負担率が高くなると、経済成長率や貯蓄率、資本の蓄えにも悪い影響が見られると指摘する。このように、社会保障の規模と経済の関係については、慎重な議論が必要だ。 

 

――医療や福祉の分野でも無駄が議論されることが多い。例えば、医療費や薬剤費の削減についてどう考えるか。デジタル技術やAIを活用すると無駄が減ると? 

 

石破茂総理大臣 

 

 医療費を最適化していけるのではないか。例えば、現在の医療現場では、患者が複数の医療機関を受診するたびに初診扱いとなり、その都度検査が行われている。このような重複検査は時間と費用の無駄につながっている。もし過去の検査データが一元管理され、他の医療機関でも共有可能であれば、同じ検査を何度も受ける必要はなくなる。これにより、検査費用を削減することができるはずだ。 

 

 また、薬の処方に関しても同様だ。お薬手帳のデジタル化が進めば、患者がどの医療機関でどの薬を処方されたかが簡単に確認できるようになる。これによって、過剰な薬の処方を防ぎ、必要な量だけを適切に提供することが可能になる。複数の病院で処方された薬を全て服用した結果、患者の健康に悪影響が及ぶ事例も現状では珍しくない。こうした問題を未然に防ぐことができれば、医療の質を高めながら費用を抑制することができる。 

 

 医療費が適切に管理され、無駄が削減されれば、結果として社会保険料の上昇を抑える効果が期待できる。例えば、過剰に処方される薬が減れば、それだけ薬剤費が削減される。検査の重複がなくなれば、医療機関での診療コストも抑えられる。これらが積み重なれば、医療全体にかかるコストが軽減され、それが社会保険料の負担軽減にもつながる。 

 

 

石破茂総理大臣 

 

 医療費の増大は国民全体の負担に直結する課題だが、単に予算を削減するという考え方だけでは解決できない。むしろ、デジタル技術やAIを活用し、必要な医療を必要な人に適切な形で提供する仕組みを構築することが重要だと思う。この仕組みが整えば、社会保険料の上昇を抑えるだけでなく、医療サービスそのものの質を向上させることも可能になる。 

 

 デジタル技術やAIの活用は単なるコスト削減の手段ではない。むしろ、医療サービスの質を高め、国民がより安心して医療を受けられる環境を作ることが目的だ。例えば、どの病院に行っても過去の診療記録や検査結果が共有されていれば、患者は無駄な時間を取られることなく、よりスムーズに治療を受けることができる。 

 

 最適化された医療制度が実現すれば、国民一人ひとりが適切な医療を受ける機会が増えるだけでなく、社会全体としての医療費負担も軽減される。これにより、社会保険料の増加を抑えつつ、国民の満足度向上にもつながると確信している。 

 

――医療費削減や社会保障の議論において、医療水準を維持したいのは理解したが、負担のあり方についてはどうお考えですか。 

 

石破茂総理大臣 

 

 医療の水準を落とすことは許されない。同時に、負担能力がある人には、より多くの負担をお願いする必要があると考えている。応益負担は、得た利益に応じて負担するという考え方だ。一方で、応能負担は、払う能力に応じて負担するというものだ。この応能負担については、反発があるのも事実だが、負担能力が高い人には相応の貢献をお願いするのは合理的なことだと思う。もちろん、このバランスを取るのは非常に難しい。 

 

――日本経済の成長や経済合理性の観点から、富裕層への課税強化には慎重な議論が必要だと考える。多くの資産家は投資を通じて経済の活性化、雇用の維持・促進に寄与しており、課税を強化することでその投資が減少すれば、経済全体(投資、雇用)に悪影響を及ぼす可能性がある。一方で、石破首相が述べる「持てる者が多く負担するべき」という考え方は、日本人の感覚としてありうるのかなとも感じる。 

 

 しかし、経済成長を考える上で、高齢者にも医療費負担を求めるべきだと思う。現役世代が社会保障費や医療費を支える現在の状況は、負担が偏っており、長期的には持続不可能だと感じる。高齢者には自身の医療費を払えるだけの十分な資産を持つ層が存在している。これは経済合理性にも適合しており、公平性と成長の両立を目指す方法ではないか。 

 

 このような課題に対して、石破首相はお金持ちがたくさん負担することを優先すべきだとお考えか。それとも、経済成長を重視し、新たなアプローチを採用する必要があるとお考えか。この2つの価値観のバランスについてどのようにお考えかをお聞きしたい。 

 

石破茂総理大臣 

 

 投資は重要だ。「貯蓄から投資へ」というスローガンの下で、NISAやiDeCoといった仕組みが普及しつつある。現在、NISAは負担能力のある国民の4人に1人が利用している状況だ。iDeCoも利用しやすい制度に改良されてきた。貯蓄から投資へという流れは今後も維持し、さらに強化していくべきだと考えている。 

 

 銀行預金も間接金融を介して投資に回るわけで、預金が無意味というわけではない。資金が投資に回ることで経済全体が活性化し、新たな価値が生まれる。特に、大きな資産を持つ人々が投資を行うことは非常に重要だと考える。こうした人々が積極的に経済活動に参加することで、社会全体の利益につながる。 

 

 日本では寄付文化が欧米に比べて発展していない。これは課題だと思う。資産を持つ方々には投資を行っていただくことが重要だが、寄付という形で社会貢献をしていただくことも同様に重要だ。寄付に対する税制のあり方を再検討し、寄付を促進する仕組みを整える必要があると考える。 

 

 資産家という言葉にはあまり良い印象を持っていない。資産家という商売があるわけではなく、彼らは自分の預金通帳や株式市場を見て笑っているわけではないのだから。ただ、資産を持つ人々が社会的にふさわしい役割を果たしていくことが求められる。資産を単に預金や株式として保有するだけでなく、それを社会のために活用するライフスタイルが理想だと考える。投資や寄付を通じて社会的な役割を果たす資産家が増えることが望ましい。 

 

 こうした活動を支える税制についても、今後さらに議論を深めるべきだと考える。負担能力がある人々に適切な役割を果たしてもらいながら、社会全体が成長していく仕組みを構築することが重要だ。 

 

みんかぶ編集部 

 

 

 
 

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