( 252544 )  2025/01/20 18:25:15  
00

日本の道路事情やモビリティ文化のなかで、白タクの問題は未解決のままである。

白タクは許可を得ずに自家用車で有償の旅客運送を行う違法行為であり、安全性や税金など多くの問題を引き起こす。

正規のタクシー業界や社会全体に影響を与えている。

白タクを撲滅するためには、利用者への意識改革や正規業界の改善が必要であり、法的措置のみではなくデジタルプラットフォームの監視や地域コミュニティとの連携も重要である。

(要約)

( 252546 )  2025/01/20 18:25:15  
00

白タクのイメージ(画像:写真AC) 

 

 日本の道路事情やモビリティ文化のなかで、「白タク」の問題は依然として解決されていない。特に観光地や大都市でその存在が目立ち、正規のタクシー業界だけでなく、利用者や社会全体にさまざまな影響を及ぼしている。 

 

 本稿では、白タクの定義や問題点を整理するとともに、なぜ“撲滅”が必要なのか、そしてそのためにどのような取り組みが求められるのかを深掘りする。白タク問題を考えることは、モビリティ全体の健全性を確保するための第一歩でもある。 

 

「白タク」とは、許可を得ずに自家用車で有償の旅客運送を行う行為、またはその車両を指す。日本の道路運送法では、旅客運送事業を営むには国土交通省の許可が必要であり、正規のタクシーは緑ナンバーで運行されている。一方、白タクはその名のとおり、 

 

「白ナンバー(自家用車)」 

 

で運行されるため、この名前がつけられた。つい先日、ベトナム国籍の容疑者が熊本県で逮捕された(1月9日、NHK報道)。警察によると、容疑者は2024年7月と10月に、地方運輸局長の許可を得ずに自家用車で外国人を合わせて10数人有料で運ぶ行為を行ったとして、道路運送法違反の疑いがかけられている。 

 

 白タク行為は違法でありながら、一部の利用者にとって 

 

・安い 

・手軽 

 

といった理由で選ばれることがある。しかし、その背後にはさまざまな問題が存在する。今回はその基本的な情報をお伝えする。 

 

タクシー(画像:写真AC) 

 

 白タクが引き起こす問題は多岐にわたる。 

 

 特に、安全性が最も大きな課題だ。正規のタクシードライバーは厳しい資格試験や健康診断を受け、車両も定期的に点検されている。しかし、白タクはこれらの規制を一切受けていない。そのため、 

 

・ドライバーのスキル 

・ドライバーの健康状態 

・車両の整備状況 

 

などが不明であり、利用者が危険にさらされる可能性がある。実際に、白タク利用中の交通事故や、ドライバーによる犯罪行為が報告されている。安さや利便性に惹かれて利用した結果、命の危険に直面する事例も少なくない。 

 

 また、白タクの存在がタクシー業界に与える悪影響も深刻だ。正規のタクシー業界は、免許取得や車両整備、ドライバー教育などに多額のコストをかけている。しかし、白タクはこれらのコストを負担せず、不当な価格競争を引き起こす。この状況が続けば、正規業者の経営が悪化し、公共交通全体の品質低下につながる可能性がある。 

 

 さらに、白タクは非公式な取引であるため、税金が適切に徴収されない。正規タクシー業界が支払う税金が公共インフラや社会サービスに活用されている一方で、白タク業者はこれらの負担を免れている。この点も公平性の観点から問題視されている。 

 

 違法であるにもかかわらず利用され続けることで、法の支配が軽視される風潮が生まれる恐れがあります。この状況が他の違法行為を認容する土壌を作る可能性がある。タクシー業界は、いつまで指をくわえていればよいのだろうか。 

 

 

白タクのイメージ(画像:写真AC) 

 

 しかし、白タクが撲滅されていない背景には、いくつかの要因がある。ここでは三つ紹介する。 

 

 まず、白タクは「正規のタクシーよりも料金が安い」ことが多く、利用者にとって魅力的だ。そのため、深夜や観光地などで正規のタクシーが見つかりにくい状況では、便利な選択肢として選ばれることが少なくない。 

 

 次に、白タクの「取り締まりが難しい」という現実がある。表向きには 

 

「一般の自家用車」 

 

として運行されているため、法的な取り締まりが容易ではない。また、特にインバウンドをターゲットにした白タクは、言葉の壁や法律の理解不足を悪用して運行されるケースが多い。 

 

 さらに、スマートフォンアプリやSNSなど、「デジタルプラットフォームの普及」が白タクの利用を増加させている。このように、匿名性が高まり、従来よりも摘発が困難な状況が続いている。 

 

タクシー(画像:写真AC) 

 

 白タクを撲滅するためには、法的措置だけでなく、利用者の意識改革や正規業界の改善が不可欠である。 

 

 白タクの危険性や違法性を利用者に周知することが重要だ。特に観光地では、多言語で情報提供を行い、白タクの利用がどれだけリスクをともなうかを伝える必要がある。空港や駅、ホテルなど主要な場所で注意喚起を実施することで効果的だ。 

 

 また、正規タクシー業界が利用者にとって魅力的な選択肢となるためには、料金の透明性を高めることや、深夜料金の見直しが必要だ。これにより、白タクに対抗できる競争力を持つことが可能となる。さらに、配車アプリの普及や、多言語対応の強化も効果的である。 

 

 さらに、デジタルプラットフォームを監視し、違法な取引を排除する仕組みを構築する必要がある。政府や業界団体が協力し、違法運行を迅速に発見し対処する体制を整えることで、問題解決に向けた強固な基盤を築くことができる。 

 

 地域コミュニティとの連携も欠かせない。地域のタクシー業者や住民が協力して情報を共有することで、白タクの活動を効果的に抑制する仕組みを構築できる。地域に根差した監視体制を強化することで、白タクの存在をより厳しく管理することが可能となる。 

 

白タクのイメージ(画像:写真AC) 

 

 白タク問題は、違法行為の取り締まりにとどまらず、モビリティ全体の質を向上させるための重要な課題である。利用者が正規のタクシーを選ぶことが社会全体にとってどれだけ重要かを理解し、業界や行政がそれを支える仕組みを整えることが欠かせない。 

 

 撲滅するには、法的措置だけでなく、利用者の意識改革や業界全体の改善が求められる。私たちひとりひとりが交通の在り方について考え、正しい選択をすることが重要だ。 

 

 白タクをなくすことは、単に違法行為を減らすだけでなく、公共交通全体の信頼性を高め、安心して利用できるモビリティ環境を築くための第一歩である。 

 

伊綾英生(ライター) 

 

 

 
 

IMAGE