( 253611 ) 2025/01/22 18:31:32 0 00 ファミマでもっとも注目されているのが、ファミマが独自で作る「コンビニエンスウェア」だ(写真:Ryuji/PIXTA)
■実は業績が好調なファミマ、その理由は?
ファミリーマートの業績が良い。既存店の平均日商は40カ月連続で前年超えを達成。2024年12月の既存店売り上げも、前年比10%増となっている。
特にコンビニのシェア一番手であるセブン-イレブンの大幅な減益が発表されただけに、その堅調さが際立っている。
好調である理由は、いくつか考えられる。例えば、低価格戦略。2024年には「ほぼ40%増量作戦」というキャンペーンが行われている。
これは、創業40周年を記念して行われたキャンペーンを引き継ぐもので、「価格はそのまま、量を40%増量する」というもの。ステルス値上げなどが続く昨今の流れの「逆張り」で人気を呼んだ。
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あるいは、「ファミリーマートビジョン」と呼ばれるレジ上にある広告。大きな予算を使ってモニターを整備し、当初は赤字が続いたが2024年に初めて、黒字化を果たした。今では多くの企業から広告出稿の依頼が来ているという。
こうした理由もさることながら、ファミマでもっとも注目されているのが、ファミマが独自で作る「コンビニエンスウェア」だ。
今回は、この「コンビニエンスウェア」の人気の理由から、現在のコンビニ業界に求められている「売り場作り」について解説したい。
■ファミマのコンビニエンスウェア、なぜ売れた?
ファミマのコンビニエンスウェアは2021年から全国展開が始まった。もっともインパクトがあったのが、ファミマの看板をあしらったデザインの靴下。2024年10月の段階で2200万足売れているというから、その人気のほどがうかがえる。
また、靴下やアンダーウェア、ハンカチだけでなく、近年ではスウェットパーカーやスウェットトレーナーなど、一般アパレル顔負けの製品ラインも用意している。
ファミマはこのコンビニエンスウェアを拡充する予定だ。2024年には約2000店舗のイートインスペースを売り場に変えることを発表し、その分、ウェアの取り扱いを増やす予定とのことだ。
では、ここまでファミマのコンビニエンスウェアが受け入れられた理由はなんだろうか。
これについてはすでに多くの分析が出ているが、それらを踏襲しつつ、私なりの考えも踏まえると、以下の2つが大きいと思う。
① 既存のアパレルとコンビニエンスウェアの「いいとこ取り」 ② 「売り場」としての魅力 それぞれ、詳しく説明する。
■既存のアパレルとコンビニエンスウェアの「いいとこ取り」でシェアを伸ばす
まずは、①既存の一般アパレルとコンビニアパレルの「いいとこ取り」だ。
先ほども述べたように、ファミマで扱う衣類の種類は多岐にわたる。もともと、コンビニで販売されている衣料品は、旅先などでのアクシデントにともなう「緊急需要」がほとんどだった。
ファミマが目を付けたのは、そんな「ついで買い」ではなく、「目的買い」をする衣料品を作ること。これはつまり、「一般アパレル」と同じレベルを目指す、ということだ。
そのためにデザイナーとしてファッションブランド「ファセッタズム(FACETASM)」を手がけるデザイナーの落合宏理氏を迎えた。製品ラインナップもさまざまなものを揃え、特に靴下などではカラーバリエーションも多く用意した。
また、ハンカチは、良質な国産タオルである「今治タオル」のハンカチを販売。税込み660円で、わざわざ買いに行かなければ手に入らなかった今治タオルが、近所のコンビニで手に入るようになった。私も使っているが、手触りは最高で、人気商品の一つだ。
さらに、アパレルが度々行っているコラボレーションも積極的で、Netflixの人気ドラマ「ストレンジャー・シングス」や、プロ野球チームの「読売ジャイアンツ」や「福岡ソフトバンクホークス」、さらに音楽フェスティバル「フジロック」とのコラボレーションを行っている。まるで、一般アパレルのようなのだ。
一方、完全にアパレルのようになっているかというと、そうではない。
この点、繊維業界記者の南充浩氏は、ファミマのアパレルがウケた理由について、コンビニが持つ店舗数の多さと入店のしやすさが影響したのではないかと分析する。服を買うときに、近所に店舗があれば楽だし、コンビニであればアパレルより入りやすい。もっといえば、ユニクロやGUよりも気軽に入ることができる(ファミマの「コンビニエンスウェア」ヒットの理由を考察/「FASHIONSNAP」/2024年3月9日)。
これが、強みの一つになっているというのだ。つまり、ファミマのアパレルは「既存のアパレルとこれまでのコンビニアパレルのいいとこ取り」をして人気を博しているといえる。
■ファミマの衣料品売り場は「ユニクロ」的?
一方で、筆者が注目しているのは「売り場としての面白さ」だ。
私が最初、ファミマの衣料品売り場を見たときに感じたのは「なんだか、ユニクロみたいだな」ということ。カラーバリエーションが豊かだし、商品POPもモデルの写真が並んでいて、かなりスタイリッシュ。
もちろん、ユニクロを「パクっている」などと言いたいのではない。というより、POPや陳列まで含めた「見せ方」に、ファミマの本気度の高さを感じているのだ。
アパレル店を歩く楽しさは、服が美しく並べられていたり、いろいろなPOPがあったり……といった「場所としての楽しさ」が大きいと思う。ファミマの衣料品は、アパレル店に比べれば売り場面積こそ小さいが、そんな「アパレル店の場所としての楽しさ」を演出することに成功していると思う。
そんなことを考えていると、面白い事実に気が付いた。ファミマで代表取締役副会長、社長などを歴任した澤田貴司氏(現在は退職済み)は、もともとユニクロを運営するファーストリテイリングの取締役副社長だったのだ。
【2025年1月22日9時55分追記】初出時、澤田氏の肩書に誤りがありましたので、記述の一部を修正しました。
澤田氏は、ユニクロ創業者の柳井正氏の右腕として、ユニクロの成長に大きく貢献した一人。ユニクロが全国区になるきっかけを作った「フリース」ブームの立役者でもある。ユニクロでは副社長就任前、経営企画室長や商品本部長も歴任している。
これは一つの推測でしかないが、このようなユニクロの経営に大きく関わった澤田氏の経験が、ファミマにおける衣料品販売に大きく活かされているのではないだろうか。
ちなみに、スウェットトレーナーの値段(税込み2980円)は、ユニクロのトレーナーと同じ値段で、「同社をベンチマークに置いているのでは?」という話もある。
真相は不明なものの、イチ消費者としては「試しに買ってみるか」と思える、絶妙な値付けだと感じる(3980円だと「ちょっと高いな」と筆者は感じるはずだ)。
■ファミマに通底する「売り場としての魅力」
澤田氏はインタビューの中で「あのとき(注:ユニクロ在籍時)も、売れている店と売れていない店の違いは、明るいカラーがちゃんと揃っているかどうか、ということが大きかった。カラーのバリエーションが揃っていない店は、売れないんですよ」と述べる(上阪徹『職業、挑戦者: 澤田貴司が初めて語る「ファミマ改革」』、東洋経済新報社)。
商品を単品で捉えるのでなく、それを並べたとき、「売り場全体としてどう見えるか」にこだわることをユニクロ時代に学んだという。
このような「面」としての陳列方法により、ファミマは、特に他社との差別化をしにくいコンビニの中で「独自の売り場イメージ」を付けることに成功しているのではないだろうか。
「モノ」もさることながら、売り場としての魅力に、その躍進の理由の一つがあると思う。
ちなみに、澤田氏はインタビューの中で、惣菜のプライベートブランド「ファミマル」(かつての「お母さん食堂」)についても、売り場全体としての見え方を意識して、パッケージを決めたと述べている。
それによって、惣菜関連の売り上げは約2割増加したという。
ここでも「売り場としての魅力」がファミマの一つの特徴を作っているということだが、実際、ずらっと並んだファミマルを眺めていると、こちらも楽しい気持ちになってくるから不思議だ。
消費者目線で見え方を意識する、ファミマの好調の一因はそこにあると、筆者は考える。
■「ファミマ」のカラーを決めつつあるコンビニエンスウェア
しばしば指摘されることだが、国内のコンビニの数は飽和状態であり、現在のコンビニがシェアを勝ち取るには新規顧客の開拓だけでなく、より各顧客のコミットメントを高めていく必要がある。
その際には、それぞれのコンビニに「カラー」が求められる。
「ただ、なんとなく行く」ではなく、「ここがいい」という動機・目的を持って行く場所にコンビニが変貌しなくてはならないわけだ。
そう考えたとき、ファミマの衣料品は、既存のアパレルとコンビニエンスウェアのいいとこ取りをすることで「目的買い」を誘発し、スタイリッシュな売り場で顧客を楽しませるという点で、まさに「ここがいい」場所へとファミマを変えている。
こうした意味で、衣料品販売がファミマにとって果たしている役割は、かなり大きいものがあるのだ。
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谷頭 和希 :都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家
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