( 254279 )  2025/01/24 04:08:23  
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フジテレビは中居正広の不祥事に対する対応で世間とズレた行動を続け、75社以上の企業がCMを差し替えたり停止したりしている中、フジテレビは問題の記者会見で不適切な対応をしたことが大きな要因とされている。

特に「週刊誌発の疑惑報道なのに週刊誌を排除」「テレビ局の会見なのに動画撮影禁止」「一般人が理解できない『ギョーカイ人の論理』で自社の正当性を主張」などの点が最悪だと指摘されている。

不祥事に対する透明性を欠き、一般社会との乖離が問題視されており、フジテレビにとって深刻な致命傷となる可能性がある。

(要約)

( 254281 )  2025/01/24 04:08:23  
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Photo:VCG/gettyimages 

 

● “ギョーカイのジョーシキ”が 世間とズレまくるワケ 

 

 CMの差し替え、停止をした企業は75社超えで、朝から晩までACジャパン。キッコーマン1社提供の「食いしん坊万才!」も放送見合わせ。「実は私も」と同様の被害を訴える女性も続々とあらわれ、ネットやSNSでは「早く潰れろ!」の大合唱……。中居正広問題に揺れるフジテレビが「四面楚歌」状態になっている。 

 

 なぜここまで世間を敵に回してしまったのかというと、「最悪の記者会見」をしたことが大きい。細かいところを挙げればキリがないが、企業の危機管理に長く関わってきた立場で言わせていただくと、その中でも以下の3点が特に「最悪」だ。 

 

 1.週刊誌発の疑惑報道なのに週刊誌を排除 

2.テレビ局の会見なのに「動画撮影禁止」 

3.一般人が理解できない「ギョーカイ人の論理」で自社の正当性を主張 

 

 まず、1はどういう理由があろうとも世間的には「逃げた」ようにしか映らない。2も「クサいものにフタ」の印象が否めない。企業の不祥事会見があると、テレビのニュースでは経営者が頭を下げ、釈明をする映像が流れる。それにもかかわらず、テレビ局が自社の不祥事でそれを禁じるというのは、あまりにも身勝手だ。 

 

 フジテレビは報道機関として、不祥事企業が1や2のような対応をしたら「ひどい会見だ」と文句を言っていた。それが全て自分にはね返ってくるという「特大ブーメラン」になっているのだ。 

 

 だが、この2つに比べてはるかに深刻なのは3の《一般人が理解できない「ギョーカイ人の論理」で自社の正当性を主張》したことだ。 

 

 テレビや芸能界、広告代理店で働くきらびやかな「ギョーカイ人」は庶民の憧れの対象になる半面、一般社会とかけ離れた非常識さが問題になることも少なくない。 

 

 今回の会見でも、フジ経営幹部たちのそういう悪い面がモロに出てしまった。今はさほど問題視されていないが事実が明らかになっていくにつれ、その非常識さがフジテレビの存続を揺るがすほど大きな「致命傷」になっていくと考えている。 

 

 なぜそうなってしまうのかということを順を追って説明していこう。 

 

 

 あの会見でフジテレビの港浩一社長は、中居さんと女性の「トラブル」について23年6月というかなり早い段階で把握して「心身の回復とプライバシーの保護を最優先」に対応をしていたと説明した。だから、トラブルがあったことを世間に公表しなかったという。ごもっともである。 

 

 ただ、ここから「ギョーカイ人の非常識さ」に多くの人々が唖然とする。 

 

 港社長が事態を把握してから昨年12月に「女性セブン」がこのトラブルの存在を明らかにするまでおよそ1年半あるのだが、その間、フジテレビでは中居さんのレギュラー番組「だれかtoなかい」を継続しているのだ。 

 

 それだけではない。24年4月にはカンテレとともに新しい冠番組「ココロのナカイ」がスタート。24年5月には「中居正広の芸能人!お友達呼んで来ましたグランプリ」という特番の第2弾も放映されている。 

 

 これは女性の「心身の回復」を最優先にするという説明と思いっきり矛盾する。 

 

 報道によれば、中居さんとのトラブル後、女性は警察に駆け込むことも検討。その後にPTSDを発症して入院もしている。また、週刊文春の直撃取材に応じた女性は「加害者もフジテレビに対しても私は許してない。絶対に許さない」と心境をこぼしている。 

 

 そんな女性の立場になって考えていただきたい。PTSDにまでなるトラブルを起こした相手が1年半にわたって何事もなかったかのようにレギュラー番組に出演し続け、しかも新しい冠番組などが続々と決まっていくのを見れば、症状が悪化していくのは間違いないだろう。 

 

 しかも、「あなたの心身の回復とプライバシーの保護を最優先します」というフジテレビからは完全に裏切られた形だ。「結局、泣き寝入りしておけということか」とフジに対しても「絶対に許せない」という怒りが強まるのは容易に想像できよう。 

 

 ちょっと考えれば、この番組継続という対応が事態を悪化させたことは明らかだが、報道を見る限り、港社長らはそう考えていない。それどころか、世間の感覚と大きくズレた、なんとも“ギョカーイ人らしい”言い訳をしている。 

 

 

 「『だれかtoなかい』については、唐突に終了することで憶測が生じることを懸念して慎重に終了のタイミングをはかっておりました。プライバシーを守ること、体調面の配慮、中居氏側の認識、示談が進んでいたことなどから番組については難しい判断がございました」 

 

 人気タレントで数字(視聴率)も持つ中居さんをいきなり降板させたら、「なんかあったの?」という風評が業界内でたってしまう。広告代理店やCMスポンサー企業に対する根回しにも時間がかかる。そういう細心の注意を払って中居さん降板プロジェクトを水面下で進めていたのが、間に合わず先に週刊誌報道が出てしまったというわけだ。 

 

 この理屈は「ギョーカイ人」の中には頷く人もいるかもしれないが、残念ながら「一般人」からすれば「はあ? そんな無理のある話、さすがに世間をナメすぎだろ」と反感しかない。 

 

 唐突な降板が憶測を呼ぶというのはわかる。が、先ほどから申し上げているように経営トップが把握してから「1年半」も時間もあったのだ。この間に番組改編もあったのだから、どうとでも理由をつけて番組終了へもっていくことができたのではないか。 

 

 実際、もし本当に水面下で調整をしていたのならば、「番組終了」を決断していなければおかしいタイミングがある。2024年1月、松本人志さんが文春砲を受けて法廷闘争に専念すると休業を宣言、「まつもtoなかい」から降板をしたときだ。 

 

 松本さんというスターが不在になった時点で、番組を終了させるのは極めて自然だ。広告代理店やスポンサー企業にも申し開きが立つ。中居さん側にも「弊社としても女性の心身の回復を最優先しているのでどうぞご理解ください」と終了の交渉ができる。 

 

 危機管理という意識のある企業ならば、この格好のタイミングを逃すとは考えにくい。フジテレビにとって松本さんのケースより中居さんのトラブルのほうがはるかに深刻だからだ。 

 

 

 松本さんは個人で開いた飲み会が問題になっているが、中居さんの場合は、フジテレビ社員が関わっているという証言がある。しかも、松本さんの場合、「週刊文春にしか被害告発をしないAさん」という感じで、第三者が事実関係を確認する術がない顔の見えない被害者だが、中居さんの場合そうではない。港社長をはじめ多くのフジテレビ社員が実名で把握している人物で、密室で何があったのかを相談されている上司などもいる。 

 

 つまり、松本さんのケースと異なり、中居さんの問題はフジテレビ自体が「共犯者」「加害者」になっているので、組織の根幹を揺るがす恐れのあるトラブルだ。 

 

 そこに加えて、「女性の心身の回復とプライバシーの保護を最優先」という対応をとっていたのだから、「番組終了」に動かないわけがない。 

 

 しかし、フジテレビはそうしなかった。前述したように、松本さんが不在になった後も、中居さん1人だけになって「だれかtoなかい」としてリニューアルしているのだ。しかも、何事もなかったかのように冠特番も制作されている。「だれかtoなかい」も昨年末に「女性セブン」の第一報がなければ、おそらく今も普通に放映されていたはずだ。 

 

 この対応は「女性の心身の回復とプライバシーの保護を最優先していました」という港社長の説明と大きく矛盾する。ストレートに言ってしまうと、一般人からすれば「嘘」に見えてしまうのである。 

 

● BBCの不祥事対応に学ぶ フジテレビが“本当にやるべき調査” 

 

 外部の弁護士による調査によって、この「矛盾」がどう説明されるのかによって変わってくるが、もしその調査報告でも、今回のような一般社会の感覚とかけ離れた「ギョーカイ人の理論」で押し切られていたら、いよいよ本格的にフジテレビはおしまいだ。 

 

 これまで不祥事企業に対して、「内部調査が甘い」とか「この際、膿を出しきれ」などと上から目線でもの申していたのに、いざ自分の身になってみると、弁護士を使ってお手盛りの内部調査しかしないとなれば、批判はさらにヒートアップする。 

 

 

 
 

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