( 254986 ) 2025/01/25 06:41:03 0 00 井上尚弥対金芸俊 金芸俊(右)にKOとなるパンチを打ち込む井上尚弥(撮影・井上学)
<プロボクシング:4団体統一スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦>◇24日◇東京・有明アリーナ
4団体統一王者井上尚弥(31=大橋)が防衛(WBAスーパー、IBF3度目、WBC、WBO4度目)に成功した。WBO世界同級11位金芸俊(キム・イェジュン、32=韓国)の挑戦を受け、右ストレートで4回2分25秒KOで勝利。歴代単独2位となる4団体統一王者としての3度目防衛成功となった。約4年ぶりとなる米再上陸、高額報酬が期待できるサウジアラビアなど海外マッチに向け、はずみをつける25年初戦の快勝劇となった。
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“モンスター”井上がすさまじい攻撃力で圧勝した。4回、左フック連打でダウンを奪い、相手陣営からタオルが投入された。4回2分25秒KO勝ち。4団体統一のベルトを守った。
「みなさん、思った以上に会場に足を運んでもらってありがとうございました。グッドマンとの対戦が変わり、急きょ対戦が変わって受けてもらってありがとうございました。全体的な内容はよかったと思う。ボクサーとしての完成度は自分でも測れないものがある。自分の中で高めていきたい。2025年は自分の中でも大事な年にしたい。これから大橋会長と話して今後の方針を決めたい」
井上にとって初の日韓戦だった。国内開催の世界戦としても06年1月のWBC世界フェザー級タイトル戦(池仁珍-越本隆志戦)以来、19年ぶり。満員となった有明アリーナの大歓声を浴びながら、防衛戦のリングに立った。昨年12月24日、東京・有明アリーナで予定されていた防衛戦だが、挑戦者のIBF、WBO世界同級1位サム・グッドマン(26=オーストラリア)が左目上を裂傷。1カ月延期も今月11日、グッドマンの同部裂傷の再発で、金との防衛戦に変更となった。
日本人選手と7戦全勝という「日本人キラー」の戦績を残す金はもともとは右構えの選手だった。21年の右肩手術を契機にサウスポーへスイッチするスタイルに変更。急きょ変更となった挑戦者にも井上は「自分のボクシング25年というキャリアの引き出しを信じて当日戦いたい」と平常心を貫いた。1カ月の延期、挑戦者変更というトラブルを乗り越えて迎えたリング。井上は「かなり楽しみな心境。待ち遠しい気持ち」と胸を躍らせて金を迎え撃っていた。
昨年11月、推定総額30億円とされるサウジアラビア政府直轄プロジェクト「リヤド・シーズン」とのスポンサー契約を締結。初めてトランクスに「リヤド・シーズン」のロゴは入った初戦だった。今年は21年6月以来となる米ラスベガス再上陸が濃厚。試合契約こそ結んでいないものの、サウジアラビアでの試合も期待される。
世界戦通算勝利数は24勝となり、日本単独1位をキープ。そして元3団体統一ミドル級王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)を抜き、現役最多勝利となった。興行延期、挑戦者変更というトラブルを乗り越えての勝利も大きな経験だ。井上がボクシングの歴史と新たなモンスター伝説を刻んでみせた。
【ラウンドVTR】
1回 スイッチボクサーの金は左構えでスタート。金が前に出て、井上は足を使いながら様子を見る。50秒すぎに井上が右ストレートをボディーに伸ばす。1分すぎから井上がじわじわと前に出てプレッシャーをかける。2分すぎに井上の右ストレートがボディーに決まる。金はほとんど手を出さず。日刊採点は井上10-9
2回 開始から井上が前に出て左ジャブを突いてプレッシャーかける。30秒すぎに井上の右ボディーストレートが決まる。50秒すぎに井上が右ショートカウターを合わせる。中盤の金の連打はすべてガード。2分すぎから井上のプレッシャーが強まる。残り30秒、井上が珍しく金の左ストレートを顔面に浴びる。そこから井上が強烈な右フックを返す。日刊採点は井上10-9
3回 金の左目下が腫れる。序盤はジャブの突き合い。井上の右ボディーストレートが2発ヒット。金も左ストレートを返す。中盤は井上が強い左ジャブでペースを支配。2分すぎに井上の強烈な左右ボディーブローが金に決まる。日刊採点は井上10-9
4回 スイッチボクサーの金はずっとサウスポースタイルで戦う。開始から金がワンツーで出てくる。井上もワンツーを倍返し。30秒すぎからは井上が金をコーナーにつめて攻撃。中盤に井上が左右フックを金の顔面に決める。2分すぎに井上がボディー攻撃から一気に攻勢に。2分30秒すぎに右ストレート1発でノックアウト。
★井上の世界戦記録アラカルト★ ◆通算勝利 24勝は、22勝の井岡一翔(志成)を抑えて日本人単独1位。また元3団体統一ミドル級王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)の23勝を上回り現役最多(歴代9位タイ)となった ◆連勝 24連勝で日本歴代1位。2位は具志堅用高の14連勝、3位は山中慎介の13連勝と続く ◆KO数 22KOは元世界ヘビー級王者ジョー・ルイス(米国)と並び世界最多。もちろん国内1位で、2位は11KOの井岡一翔、3位は10KOの内山高志と寺地拳四朗。4位は9KOの具志堅用高、山中慎介 ◆最短KO 18年10月のパヤノ戦でマークした70秒(1分10秒)は日本男子歴代1位。2位は平仲明信が92年4月にマークした92秒(1分32秒)
◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。父真吾氏の影響で小学1年から競技開始。高校時代にアマ7冠。12年7月にプロ転向。14年6月、6戦目でWBC世界ライトフライ級王座を奪取。14年12月、8戦目でWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し2階級制覇。18年5月、WBA世界バンタム級王座を獲得し3階級制覇。19年5月にIBF同級王座、同年11月、WBSS同級制覇。22年12月、史上9人目の4団体統一王者に。23年7月にWBC、WBO世界スーパーバンタム級王座を獲得して4階級制覇。同12月に史上2人目となる2階級での4団体統一に成功。身長164・5センチの右ボクサーファイター。
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