( 255779 )  2025/01/27 03:00:26  
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SNSを中心に「○○キャンセル界隈」が流行しており、特に知られる「風呂キャンセル界隈」が注目されている。

2025年1月中旬には「外出キャンセル界隈」という言葉も話題となった。

この言葉は、外出を避ける人々や文化を指すが、他の行為でも同様の言葉が使われている。

早稲田大学の石田光規教授(社会学)によると、この流行の背景には、時代の変化や選択肢を持つことの重要性があるという。

一方で、「界隈」という形で閉じることで、多様性や他者との接触が制限される点にも注意が必要だという意見もある。

(要約)

( 255781 )  2025/01/27 03:00:26  
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SNSを中心に流行する「○○キャンセル界隈」。特に広く知られる「風呂キャンセル界隈」はXでもトレンド入りするなど注目を集めた(写真はイメージ) 

 

 2025年1月中旬、「外出キャンセル界隈」というワードがSNSで話題になった。積極的に外出を控える人々や文化を指す言葉として広がっているのだが、「外出」をキャンセルする界隈以外でも「○○キャンセル界隈」が注目を集めている。 

 

 中でも、特に広く知られるのが「風呂キャンセル界隈」だ。心身の疲労や面倒くささから意図的に入浴を控える人々や文化を指すもので、共感を示す声も多い。こうした外出や風呂、ご飯などの行為をキャンセルする「○○キャンセル界隈」が流行するのは何故なのか。人間関係論に詳しい早稲田大学・石田光規教授(社会学)に聞いた。 

 

■「キャンセル」という言葉に表れる時代背景 

 

 「風呂キャンセル界隈」が話題になったのは、24年4月下旬ごろだ。Googleトレンドで調べてみると、同年4月28日からの1週間で検索するユーザーが急増。この週にXでもトレンドに入るなど、入浴を避ける人々のあいだで盛り上がった一方、不潔ではないかと不快感を示す声も上がった。 

 

 入浴を控える行為以外でも、「○○キャンセル界隈」が使われている。先述した「外出キャンセル界隈」や「ご飯キャンセル界隈」、「睡眠キャンセル界隈」などと、さまざまな言葉がSNSで注目されている。 

 

 このワードに含まれている「界隈」も、24年「ユーキャン新語・流行語大賞」トップ10に選出された。公式サイトでは、「同じものが好きな人同士でつながって楽しむような意味合い」で使われ始めたと説明している。 

 

 では、「○○キャンセル界隈」が流行するのは何故なのか。また、その言葉を使うメリットとデメリットはあるのか。 

 

 石田教授は25年1月23日の取材で、「キャンセル」という言葉に時代背景を感じる、と話す。今までの人間関係を衝動的に断ち切ってしまう行為とされる「人間関係リセット症候群」の「リセット」と同様に、色々な選択肢がある中で主体的に選択しないという心持ちが出ていると指摘した。 

 

「若者を中心とする世代はサブスクリプション(定額課金制)に慣れていて、さまざまな選択肢の中から、自分にとって合理的なものを選ぶ感覚がある。これが『キャンセル』という言葉に表れています」 

 

 「界隈」という言葉にも特徴がある。外出や入浴などを控える行為は、従来なら「変わっている」「だらしがない」などのラベルを貼られかねない。だが、「界隈」という形でゆるやかに結びつくことで、一定の層がいるという安心感を得られたり、1つの生き方として捉えたりすることができるという。 

 

 

 健康的とされる行為をキャンセルし、同じような人々と繋がることで肯定的に捉えることができる「○○キャンセル界隈」だが、「界隈」という形で閉じることで、外側から介入できなくなる場合もあると、石田氏は話す。 

 

「どのような生き方も多様性の原理として受け入れる風潮が強い中で、1つの正しさを主張することが難しくなっています。『界隈』として閉じてしまうと、その中にいる本人にとって結果的にマイナスになる場合でも、改善せずに進んでしまうことになる」 

 

 「○○キャンセル界隈」について、何らかの行為ができない背景としてメンタルヘルスの問題があると指摘する声もある。医学的な対処が必要な場合もあると述べる石田氏は、このワードがカジュアル化しているのは、「キャンセルすらもライフスタイルの1つだという感覚が出ている」と説明。 

 

 冗談として使う分には問題ないとしつつも、「SNSなどを使えば、キャンセル界隈の人同士で繋がることは容易ですが、外側から干渉することは難しくなる。深刻な状況になれば、社会自体は分断していき、相互の会話はなくなってしまう」との懸念も示した。 

 

 

 
 

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