( 258299 ) 2025/02/01 03:29:57 1 00 1月23日に中居正広氏が引退を発表し、SNS上で様々なコメントが荒れていた。 |
( 258301 ) 2025/02/01 03:29:57 0 00 1月27日、港社長らが辞任を発表したフジテレビの会見 - 撮影=石塚雅人
1月23日に人気司会者であった中居正広氏が引退し、SNSでのコメントが荒れている。コラムニストの藤井セイラさんは「中居氏は『相手様にも心より謝罪します』とコメントしたのに、被害者と決めつけられた女性にバッシングが集中している。何が二次加害に当たるのかわかっていない人が多いのではないか」という――。
■フジテレビ会見でも焦点になった性犯罪の「二次加害」とは?
2025年1月27日、10時間にもおよぶフジテレビの記者会見が開かれた。中盤で注目を浴びたのは、フリーランスのルポライターが20分以上にわたり、中居正広氏と被害者女性の間に起きたことについて両者の認識が「一致か不一致か、はっきり言うべきだ」と経営陣に迫った場面。そのあと、別のフリージャーナリストが、中居氏とフジの関わる「トラブル」の詳細や、被害女性との同意・不同意について踏み込みすぎると「二次加害」につながりかねないと指摘した。
会見では、以下の点が被害女性の特定につながり「二次加害」を引き起こしかねないとして、言及を避けるようにフジテレビ側から要請、もし言ってしまった場合は、10分遅れの中継ではカットされた。
・中居氏から被害を受けた女性は(元)フジテレビ社員か否 ・社員だった場合、アナウンサーか ・彼女は中居氏と同じ番組に出演していたか
だが、被害者の氏名や所属が秘匿されていても「二次加害」が起こることはある。そもそも、昨今よく耳にする「二次加害」(セカンドレイプ)とは何だろう?
■中居引退発表時、男性タレントが次々に「残念コメント」を投稿
会見に先立つ23日、中居正広氏の引退発表前後から、男性タレントらによる不用意なコメントがテレビ・ラジオやSNSにあふれた。「(中居氏は)いい人」「正義の暴走」「集中攻撃」といったものだ。
俳優の要潤はXで、中居氏について「人格者でスター」「加害者も被害者も救済を受けられる社会に」とエールを送った。
「その言葉ぜんぶが被害者への二次加害でしかないよ」「要潤、ヤバいな。何で加害者が救われないといけないんだよ」など、即座に炎上状態となり、要潤は投稿を削除して「感情だけで突っ走ってしまいました」とコメントした(むしろ良心的な対応を見せたともいえるだろう)。
■加害者をかばうコメントをなぜ公に発信してしまうのか?
他にも、明石家さんまは「中居は我々にとっては戦友やからね」、笑福亭鶴瓶は「相談してくれたらよかったのに」、放送作家の鈴木おさむが「(金スマの)視聴率へのこだわりは、僕が32年間やってきたすべての番組で間違いなくナンバー1」、落語家の立川志らくは「中居君の問題について『悪意には罪悪感があるから止まるが正義にはそれがないから暴走する』」「中居君は仕事を失った」、キックボクサーの那須川天心は「みんなして1人の人を叩いて集中攻撃して」「もっと自分を生きようよ」などと発言している。
音楽家の渋谷慶一郎にいたっては「示談金も守秘義務も踏み倒されて引退という私刑」という強い言葉で気持ちを表明。タレントの山里亮太は「いろんな話がバーッて出てきて、攻撃することで、こうやって、人が人生を終わらせられるっていうのは、すごく怖い」、お笑いタレントのエハラマサヒロは「合法的に人から全て奪える週刊誌。すごいぜ!」、古市憲寿などは「本当なら今頃は、『中居正広の土曜日な会』(……)
をつけて今までの感想を投稿してくれたら」とXで中居ファンに向けて投稿の呼びかけまでしていた。
中居氏は芸能界を引退しただけで、亡くなったわけではない。追悼ではないのだから、励ましや引退を惜しむ言葉は、LINEや電話で本人に直接伝えればいい。なぜ公に向かって発信してしまうのだろう。
■「あんないい人が」は加害者への連帯、被害者への侮辱
二次加害とは、加害行為(一次加害)が表面化した際に、被害者が周囲から非難を受けて二次的に傷つけられることを意味する。
中居氏問題での著名人コメントの、どんな点が二次加害にあたるのか、かいつまんで解説しよう。
---------- 「あんないい人が」→被害者への侮辱 ----------
善人の彼に危害を加えられるなんて、被害者にもきっと落ち度があったのだろう、という印象を与える。
---------- 「(自分は加害者と)仲がいい」「待ってます」→加害者への連帯の誇示 ----------
加害者(権力者)の優れた人格を強調することは、連帯を示し、仲間がたくさんいる、という表明になる。その結果、被害者の立場はますます弱くなる。
■当事者が謝罪した事実があるのに「真相はわからない」
---------- 「引退に追い込まれた」「ここまでして満足か」→他責 ----------
被害者や報道が原因で中居氏が引退したかのように書くのは、他責だ。また、中居ファンのネガティブな感情を被害者に向けさせかねず、扇動の意味も持つ。
騒動が大きくなったのは、中居氏とフジの初動が悪かったためだ。そもそもの発端となった出来事をしなければよかったのだし、発覚後も誠実に対応していれば現在の事態には至っていないだろう。
芸能人はイメージや好感度を「商品」とする職業で、だからこそ得られる名声や報酬も大きい。中居氏はその価値を自ら傷つけたのだから、これまで通りの仕事ができなくなっても仕方ないのではないか。
---------- 「真相はわからない」→事実の否認、歴史修正 ----------
中居氏の「トラブルがあったことは事実」「相手様に対しても心より謝罪申し上げます」という発表、彼の代理人弁護士のコメント、フジテレビやカンテレの会見、いずれを見ても、何らかの落ち度が中居氏とフジテレビにあったことは明らかだ。それでもなお「真相はわからない」と、繰り返すのは、あたかも「真実は別にある」かのように暗示し、事実を曲げようとする態度である。
■「示談」を盾に被害者を責めるのは、筋違いだ
---------- 「示談の意味がない」→倫理的責任の無視。 ----------
多くの弁護士が指摘しているが、解決金等の支払いは、あくまでも、被害者が民事上の損害賠償請求をしないといった限定的な解決を意味する(示談の内容はケースバイケース)。出来事そのものが消せるわけではなく、倫理的責任は残る。
性犯罪は2017年から非親告罪となり、刑事告訴もありえる。また2023年7月13日には性犯罪に関する法律が再度改正されており、今回のケースは2023年6月発生ということだが、トラブル発生の日時によっては扱いがさらに変わる。
被害者が自ら名乗りもあげず、中居氏の名前も出さず、詳細も話していないのだから、この件において解決金は十分に効力を発揮しているといえるだろう。
■元SMAPの5名は二次加害に加担せず、沈黙を貫く
---------- 「秘密保持契約が〜」→いいがかり ----------
もし解決金の支払い時に秘密保持契約が結ばれていたとしても、締結以前に被害者が他に相談している可能性はある。またフジテレビ社内で対応していた案件なので、他の人から漏れた可能性もある。
なお、欧米ではワインスタイン事件(ハリウッドの映画プロデューサーが複数の女優たちに性加害をしていた)を受けて、性被害における秘密保持契約を禁止にする動きが始まっている。なぜなら犯罪の隠匿そのものにつながりかねないからだ。
---------- 「袋叩き」「自分のことに集中しようぜ」→口封じ ----------
性加害についての言及そのものを非難している。それについて話されると何か困ったことでもあるのだろうか?
一方で、中居氏と同じ元SMAPのメンバーの対応はというと、キムタク(木村拓哉)は沈黙を守り、草彅剛、稲垣吾郎、香取慎吾は「言葉にならない」、オートレーサーの森且行は、「驚いております。コメントは控えさせていただきます」にとどめた。出来事を矮小化したり、被害者女性をおとしめたりするような発言は一切見られない。
また、中尾ミエは情報番組で中居氏の行動について「ありえない」「先輩たちの事例に学んでいない」と断言し、二次加害コメントのあふれる中、Xでは「こういう(真っ当な)意見を聞くと安心する」といった意見が見られた。
著名人による二次加害コメントは男性によるものが多かったが、女性なら被害者の気持ちに寄り添って二次加害をしない、というわけでもない。一部の熱心な中居ファンによる誹謗中傷もネットにはあふれた。
■フジテレビ社員だった女性のSNSに、1万件以上の誹謗中傷
被害者と推定されている女性のインスタグラムには中居氏引退当日だけでざっと1万件以上の誹謗中傷コメントが寄せられた。「中居くんを引退に追い込んで満足ですか?」「示談金返せ」など、正視に耐えない言葉が並ぶ。
その一方で「二次加害しないで」「中居くんのやったことは悪いこと」「書き込まないで」とSNS上で呼びかける中居正広ファン、元SMAPファンも多い。
中居氏はその心あるファンに応えるためにも「二次加害しないように」といま一度呼びかけるべきではないか。引退メッセージで「全責任には自分にある」と書きつつ、文末の「さようなら……」で未練を暗示したことが、二次加害の呼び水となってはいないか。
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