( 259181 ) 2025/02/02 17:57:10 0 00 (※写真はイメージです/PIXTA)
日本人の多くが懸念している、老後資金の問題。資金の不足を補うために投資にチャレンジしようと考える人は多くいますが、そのような思考は危険をはらんでいると、投資にくわしい経済評論家の塚崎公義氏は懸念します。悲しい老後に陥らないために、どのような備えが必要なのでしょうか?
筆者は仕事柄、多くの方から老後資金の悩みや投資の相談を持ちかけられるのですが、そこで感じるのは、老後資金の話を聞きたい人の多くは、投資で儲ける話を聞きたがっている人だ、ということです。老後資金が足りないから投資で殖やす必要があり、そのために情報がほしい、ということなのでしょう。
金融機関等のなかにも「老後資金が足りないなら、我が社の投資商品を買って儲けてみませんか?」といった勧誘をしているところも多いようです。
しかし、投資で儲けようとガツガツするとリスクをとる必要が出てきます。ただでさえ老後資金が不足しているのに、投資で損をしたら悲惨な老後になってしまうでしょう。それは避けたいですね。
筆者は投資を否定しているのではありません。もし投資をするなら「銀行預金はインフレに弱いリスク資産だから、インフレに強い株や外貨にも老後資金を分散しておいたほうがむしろ安全だ」といった守りの投資か、「余裕資金があるから、リスクをとって投資してリッチな老後を目指そう」という攻めの投資か、いずれかでしょう。
しかし、老後資金が足りないなら、働いて稼ぐのがいちばんだといえます。生活を見直して出費を抑えることも重要ですが、それについては別の機会に論じることにします。ビールを発泡酒にしてガマンする、といった節約も有益ではありますが、節約しすぎると心の余裕がなくなりますので、働いて生活を見直すほうを先に考えたいですね。
サザエさんの登場人物である波平氏は54歳という設定だそうです。高度成長期の定年が55歳だったことが納得できますね。いまの高齢者で波平氏より元気な人は大勢いますので、そういう人は大いに働いて稼げばよいでしょう。そうすれば、寿命が延びても健康寿命も延びているので、「老後」はそれほど延びずにすむはずです。
自営業者は定年がないので、元気な間はいつまでも現役として稼ぎ続けることができます。年金を受け取りはじめても仕事を続ければ、年金がそっくり老後資金として溜まっていきます。
サラリーマン(男女を問わず、公務員等を含む。以下同様)は、定年後再雇用を選ぶのが最も安易なのでしょうが、昔の部下にお仕えするのは精神的に辛いかもしれませんし、再雇用契約が数年で切れてしまう場合も多いでしょう。
現役時代の経験を活かせるような転職を探してみるというのも選択肢です。営業はもちろん、経理や人事管理の専門家を探している中小企業は多いはずですから、現役時代の経験が役立つ職場はきっとあるはずです。
幸い、兼職を認める企業も増えてきましたから、社内の出世競争に目処がついたら割り切って転職先探しのための副業に精を出すのもいいかもしれません。社内の雰囲気や相性等もわかれば、転職が失敗する可能性も減るでしょう。
老後は夫婦で喫茶店を経営したい、といった夢を持っている人もいると思います。もっとも、老後資金の大半を開業資金に使ってしまうと、失敗したときに惨めな老後になってしまうので、開業資金はできるだけ絞るほうが安全だといえます。当然ですが、実際に喫茶店でアルバイトをしてノウハウを身につけることも必要です。
以上、いずれの場合にも重要なことは、定年退職すると年功序列の世界を離れる、ということです。それまで比較的大事にされてきた人も多いでしょうから、気持ちの切り替えをしっかり行うことが大切ですね。
専業主婦(夫)も働きましょう。高度成長期の専業主婦は、子どもが大勢いて、全自動洗濯機も、ロボット掃除機も、コンビニ弁当もなかったわけですから、それと比べればいまの主婦(夫)は働くことが可能なはずです。そうでなくとも、子育てが一段落したら働きましょう。
働く際には、厚生年金に加入できるような働き方を選ぶと、老後の生活が安定します。配偶者がサラリーマンの場合、これまで払っていなかった年金保険料を支払う必要が出てきますが、老後の安定を考えれば払っておくほうがよいと思います。
「資金繰りが苦しいから払いたくない」という人は、むしろ思い切って長時間働き、厚生年金保険料を支払っても手取りが増えることを目指せばよいでしょう。
働くことにはメリットが多くあります。世間との繋がりが持てますし、日々の生活のリズムも整いますし、世の中の役に立っているという満足感も得られるでしょう。
そして、専業主婦(夫)の場合は、働くことが「広義の保険」にもなります。配偶者が失業したり、死亡したり、あるいは配偶者と離婚した場合に、自分が働いて収入を得ていれば最低限の生活はできるからです。
なお、正社員で結婚や出産を契機にやめる人がいますが、可能であれば万難を排して正社員の地位を死守しましょう。短期的には辛いですし、金銭的にも家事代行やベビーシッターなどへの支払いが嵩みますが、ずっと正社員だった人とそうでない人では、生涯所得がまったく違いますから。
本稿は以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
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塚崎 公義 経済評論家
塚崎 公義
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