( 259251 ) 2025/02/02 19:13:01 0 00 中居正広、フジテレビ本社(C)ピンズバNEWS
元SMAPリーダーで国民的タレントだった中居正広(52)の女性トラブルで、フジテレビも未曾有の危機に直面している——。
被害女性が“意に沿わない性的行為を受けた”とされ、中居が巨額解決金を払って示談したと2024年末より報じられているこのトラブル。中居は1月23日、芸能界からの引退を発表。フジテレビは一貫して否定しているものの幹部社員も関与しているとも報じられ、女性を守れなかったことなどを含めて、27日には局上層部が記者会見を開くに至った。
10時間超に及んだ会見には港浩一氏(72)、嘉納修治氏(74)、遠藤龍之介副会長(69)、フジ・メディア・ホールディングス(フジHD)の金光修社長(70)、港氏に代わり新社長に就任するフジHD・清水賢治専務(64)が登壇。一連の責任を取って社長だった港氏と会長だった嘉納氏が辞任することが会見冒頭に発表された。また、28日には遠藤副会長も第三者委員会の報告書が提出される3月末をめどに辞任する意向だと報じられた。
さらにトラブルに関与していると報じられた幹部社員が、30日付で人事異動していたことも明らかになった。人事局付となり、編成幹部としての仕事は上司が兼任することになるという。
「1月27日の会見では、フジテレビや系列局の関西テレビ(カンテレ)の記者からも経営陣に対して厳しい質問が飛びましたが、それだけフジテレビや系列局の社員も危機感を抱いているということ。上層部への怒りは、1月23日に行なわれた社員説明会でも明らかだったそうですしね」(ワイドショー関係者)
1月23日、東京・台場のフジテレビ本社では全社員に向けた社員説明会が行なわれた。嘉納氏と港氏らが出席し、会場には500人分の座席が用意されたが、座りきれずに立ち見も出るほどだったほか、オンラインでの参加もあり、全社員の約9割となる合計1100人が参加した。
この説明会では社員から怒号が上がる場面もあり、「日枝久相談役を含めて経営陣は責任を取るべきだ!」と幹部の辞任を求める声や、「(1月)27日にちゃんと会見できるのか」などの声が飛び交ったほか、「社員の生活保障という部分で安心するために今、しゃべれることをうかがいたい」という問いに、嘉納氏は「今のところ会社として蓄えがあるから大丈夫です。今のところは」と応じるなど、4時間30分という長時間の説明会となった。
芸能プロ幹部はこう話す。
「フジテレビの社員が怒りを示したり、生活保障を訴えたそうですが……フジで仕事をしている制作会社の社員やフリーのディレクターの多くは、“しわ寄せがくるのは俺らですよ”と口をそろえます。フジテレビはメディア事業がメインですが、フジ・メディア・ホールディングスは不動産事業なども展開していますし、堅調です。今後も社員の給料が支払われなくなるわけではない。
フジテレビでは多数のCMが放送差し止めとなり、4月以降の新規の契約も見えない。25年3月期の広告収入は、当初の予想より233億円の減収となることが発表されました。この結果、間違いなく起きるのは、番組制作費の大幅カットです。予算がない、と制作中止になる番組も出てくるでしょう。
これで本当にマズい状況になるのは“下請け”として番組に携わるスタッフです。テレビ局で実際に現場で番組を作っているのは制作会社の人やフリーのディレクター。1つの番組でテレビ局の社員は数人、特番などではプロデューサー1人だけが社員、なんてこともあります。その社員が“下請け”となる制作会社やフリーのプロデューサー、ディレクターに仕事を依頼していくわけですが、フジテレビに限らず多くのテレビ局がこのような形で番組を制作しています。
長らく続くテレビ不況でCMの単価も落ち、番組の制作費は年々削減されている。5年前の6〜7割ほどの予算で番組が作られているのが現状で、下請けスタッフに支払われるギャラも激減しています。そこに“中居&フジテレビ問題”が勃発してしまったと……」
一連のフジテレビの対応を受け、CMを降板したスポンサー企業は80社近くにも上り、一時、同局で流れるCMはACジャパンのものばかりになってしまった。
「フジテレビが潰れることはないでしょうが、今後の番組制作が非常に厳しくなるのは間違いありません。そしてやはり、しわ寄せを受けるのは同局から発注を受ける“下請け”の方々でしょう」(前同)
あるフリーディレクターが現在のテレビ界の裏側を明かす。
「フジテレビではないんですが、少し前、あるキー局の特番の1つの企画を担当したんです。“これぐらいならギャラは40万円ぐらいかな”という仕事でした。それは、仕事を依頼してきた番組プロデューサーもわかっていました。ギャラの相場は、共通の認識としてありますからね。
企画会議があり、打ち合わせを経て撮影、編集をして納品したのですが、オンエア後いざギャラの支払いの段階で“この仕事のギャラは通常なら40万円だと思うんですけど、いろいろと経費がかかり番組制作費が厳しくなりまして……申し訳ないんですが、30万円でお願いできませんか?”と言ってきたんです。これは私だけではなく、多くのスタッフにこうした提示があったそうです。さすがに話が違いますから、フリーランス新法のことも話し、“いや、それは飲めません”と難色を示したところ、結局40万円で決着はしたのですが……」
テレビ各局の特番などではオンエア後に、正式にギャラが決まることが常態化しているという。
「受けた仕事に何も問題はないのに、番組の別のところで出費がかさんだから、といった理由でギャラが減らされてしまうことがよくあるといいます。これでは生活していけませんよね。
被害が特に顕著なのが、若いフリーのディレクターだと言われています。具体的なギャラはオンエア後に提示されるのですが、最終的に予算オーバーとなってしまった際には、外注の、それも若手ディレクターからギャラが下げられることになると。実績のあるベテランディレクターにギャラを削る相談はできませんからね。
その際、若手ディレクターは、難色を示したら次から声をかけてもらえなくなる、と思ってしまう。だから、文句を言えないんです。相場以下のギャラで買いたたかれ、条件が悪くても飲まざるを得ない。
今、不況のテレビ界でこうしたケースが増加しているわけですが、スポンサーが撤退しているフジテレビの番組では、大幅に制作費が減らされる可能性が高いですよね。
今後、フジテレビの番組での制作会社、そしてフリーディレクターに払われるギャラは酷いことになるのではないか、と心配されています。フジテレビの社員も大変でしょうが、それ以上に制作会社やフリーのプロデューサー、ディレクターは“もう明日が見えない”と嘆き、戦々恐々としていますよ」(前出の芸能プロ幹部)
長引く“テレビ不況”のなかで、増えてきているという“フリー”への酷い扱い。前述のフリーディレクターのケースでは、法律的にはどんな問題が生じるのだろうか。弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士に聞いた。
「オンエア後、番組プロデューサーが、さまざまな経費がかかってしまい、番組制作費が厳しくなり、通常は40万円のところ30万円にしてほしい、と言ってきたことは、フリーランス新法(正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)に違反して、違法です。
まず最初に、フリーランス新法は、一人で仕事をしている人を守る法律です。人を雇わず一人で仕事をしているのであれば、会社にしていても、個人のままにしていても守られます。フリーディレクターの方は一人で仕事をしているので、フリーランス新法で守られます」
正木弁護士は続ける。
「次に、フリーランス新法は、フリーランスの方が引き受ける仕事の種類を決めています。このフリーディレクターの方はキー局の特番を制作したということで、フリーランス新法の『映画、放送番組その他映像又は音声その他の音響により構成される情報成果物の作成』に当たります。仕事の報酬について、番組プロデューサーとフリーディレクターの方との間にこのくらいの仕事だと40万円という共通認識があったのですから、報酬について合意(法律的には『黙示の合意』)があったといえます。
それでここからがポイントです。フリーランス新法第5条第1項第2号には『特定受託事業者(フリーランスのこと)の責めに帰すべき事由がないのに、報酬を減じること』を禁止すると決められています。『責めに帰すべき事由がない』とは“フリーランスが悪くないのに”ということです。
番組プロデューサーは、“さまざまな経費がかかってしまい、番組制作費が厳しくなり”と言っていますが、それはフリーディレクターの方には関係のない話、フリーディレクターの方が悪かったことではありません。フリーランス新法は、“経費がかかり、番組制作費が厳しい”というフリーディレクターの方に関係のないことでフリーディレクターの方の報酬を減らすことを禁止しているわけです。
ですから、番組プロデューサーが、通常は40万円のところを30万円にしてほしい、と言ってきたことは、フリーランス新法に違反し、違法ということになります。フリーディレクターの方が、それは飲めない、今はフリーランス新法もありまずいのではないかと言われたことは、適切な対応をされたと考えます」
さらに正木弁護士は、テレビ界ほかでまだ行なわれているギャラの後交渉についてもこう話す。
「ギャラの後交渉について、そもそも報酬を定めていない場合、フリーランス新法では原則、業務委託事業者(テレビ局)は、特定受託事業者(フリーディレクター)に対し業務委託をした場合は、直ちに取引条件(給付の内容、報酬の額、支払期日等)を書面または電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならないと定めています。そのため、ギャラの後交渉は取引条件を明示しておらず、違法となる可能性があります。
仕事の内容が定まらないといったケースも考えられますが、テレビ局側の都合などで特定受託事業者を不安定な状態に置くことは、正当な理由がなく、認められないでしょう。
書面等は契約書等の形式にかかわらないので、報酬を含めた取引条件に関する共通見解があった場合、共通見解がメール等で明示されていた場合、適法となるケースもあり得ますが、口約束や慣例などだけでは違法となります」
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今、フジテレビは危機的状況にあるが、国民の“テレビ離れ”による業界の不況は以前からのもので、ますます深刻化している。そのしわ寄せを受けているのは、テレビ局から依頼を受け、実際に番組を制作している制作会社の社員やフリーのプロデューサー、ディレクターたちなのだ。この状況下で今、テレビ制作の担い手たちは、次々と業界を離れる動きを見せているという。テレビ界は今、大きな変革が求められている、と言えそうだ。
正木絢生(まさき・けんしょう) 弁護士 弁護士法人ユア・エース代表。第二東京弁護士会所属。消費者トラブルや借金・離婚・労働問題・相続・交通事故など民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける。 BAYFM『ゆっきーのCan Candoit!』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などメディア出演も多数。YouTubeやTikTokの「マサッキー弁護士チャンネル」にて、法律やお金のことをわかりやすく解説、配信中。 弁護士法人ユア・エース BAYFM『ゆっきーのCan Candoit!』 YouTube「マサッキー弁護士チャンネル」
ピンズバNEWS編集部
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