( 259691 ) 2025/02/03 17:32:04 0 00 TSMCの熊本第1工場(中央奥)の左側の空き地に第2工場が建設される。クレーンが並ぶ場所はソニーグループが建設中の画像センサーの新工場で一帯は激変している。奥は大津町の街並み(昨年12月23日、熊本県で、読売機から)=佐伯文人撮影
今月下旬、熊本県菊陽町の田園地帯。半導体受託製造世界最大手・台湾積体電路製造(TSMC)の巨大な第1工場に隣接する広大な土地が、白い塀に囲まれていた。第2工場の建設予定地で春までに着工予定だ。第1工場は昨年12月に本格稼働した。投資額は第2工場と合わせ3兆円超に上る。
近くでは20本超の巨大クレーンが林立している。ソニーグループによる画像センサーの新工場の建設現場だ。半導体製造装置大手・東京エレクトロンも開発棟を整備中で、一帯は世界が注目する産業拠点に様変わりする。日本の経済安全保障の要にもなる。
周辺ではホテルやマンションの建設も相次ぎ、地価は全国トップレベルの上昇率で、人口も増えている。同町はTSMC工場近くを再開発し、研究機関や大学などの集積も図る。三菱商事や三井不動産など大手企業も検討に加わる。「日本の中で熊本だけが、昭和の高度成長期のようだ」。ある国土交通省幹部はこううなる。
読売新聞
交通インフラ(社会基盤)の整備にも巨額の投資が行われる。政府は熊本市北部と大分市を結ぶ「中九州横断道路」の建設を加速。県はJR豊肥線肥後大津駅から熊本空港(熊本県益城町)への鉄道延伸を計画している。JR九州は菊陽町で同線の新駅を29年以降に設置する。複線化の議論も進む。
熊本市は市東部で路面電車の延伸を予定。県と同市は市中心部と九州道や熊本空港を結ぶ都市高速道路を新設する考えだ。同市や菊陽町など12市町村で構成する熊本都市圏(人口約110万人)は大変貌する。
熊本に変革の波を起こしたTSMCはなぜ、日本に進出したのか。背景には国際情勢がある。米国と中国の対立が激化する中、台湾は中国による侵攻の懸念があり、工場を分散する必要があったと指摘される。
では、なぜ熊本だったのか。答えは太古からの悠久の歴史の中にある。阿蘇山の火山活動などで形成された地層の豊富な地下水が、大量の水を必要とする既存の半導体産業を支え、TSMC進出の下地を作ったからだ。
存在感を急激に増す熊本。明治時代など戦前は、政府の出先機関が多く置かれるなど九州の中心都市として繁栄していた。現在は福岡市(人口約160万人)がその座を奪っているが、変革の波は今後、その構図を変える可能性も秘めている。
第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「熊本が福岡に匹敵する経済規模になる可能性は十分ある。失われた30年からの脱却に向け、福岡と熊本というダブルエンジンを持つ九州は、日本経済を牽引する存在になり得る」と話す。(姫野陽平、中尾健)
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