( 260276 ) 2025/02/04 18:13:14 0 00 photo by iStock
昔に比べ、卒業旅行はかなり一般化している。株式会社令和トラベルは、2023年に卒業を控える22〜24歳の学生(現役学生世代)とコロナ以前に学生時代を過ごした30歳以上の社会人(コロナ前世代)を対象に卒業旅行に関するアンケートを行なった。すべての人に「卒業旅行へ行く/行ったか」と尋ねると、現役学生世代が卒業旅行へ行く割合がコロナ前世代に比べ11.6%も増加したことが判明。また、どちらの世代においても、卒業旅行に行く人のうち「国内だけに行く」という意見が最も多かった。
海外を選択しなかった理由として「お金がない」「時代情勢で海外旅行が難しかった」「パスポートを持っていない」「治安、言語 、文化の違いが怖い」と両世代ともほぼ同じ内容を挙げている。時代が変わっても、卒業旅行で海外を選択することは、費用面が大きな障害になっていると言えるのではないだろうか。そんな中、娘の卒業旅行の費用を出すかどうかで頭を悩ませた親もいるようだ。
東京都在住の真由美さん(仮名・52歳)は、娘(楓さん・仮名・23歳)の卒業旅行の費用について思い悩んだ経験があると語る。彼女は、柔らかい雰囲気の持ち主で石田ゆり子に似ている。
「夫と、大学を卒業して社会人1年目になる娘の3人家族です。娘が大学生のころは学費が高額なので、私がパートをしていたものの、いつもギリギリの生活を送っていました。娘は大学3年生から就活を始め、大学4年生の6月の下旬には希望していた化粧品会社に内定が決まって。これでもうお金の心配をしなくてもいいと思い、ほっと胸をなでおろしていました」
夏になると、娘の楓さんが「友人(七海さん・仮名・23歳)と卒業旅行へ行きたい」と言い出したという。真由美さんが学生の頃は、今ほど卒業旅行が盛んではなかったので、いまいち明確なイメージがわかなかったのだとか。
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「最初は、テーマパークに日帰りで行く程度かと思っていました。それなら2万円もあれば十分だから、そのくらいならお金を出してあげようと考えていて。友人とのいい思い出になるし、社会人になったらまとまった時間を取るのは難しくなりますからね。そんな訳で、私は軽い気持ちで娘の卒業旅行を許可しました」
数日後、楓さんから友人と計画した卒業旅行について報告を受けたそう。話しを聞くと、なんと「ヨーロッパに5泊7日で行く」と言うので、真由美さんは驚きを隠し切れなかったという。
「娘は『費用は20万円ほどかかる』と平然と言ってのけたのです。続けて『イタリアに行って、ローマではコロッセオとトレビの泉を観光して、フィレンツェでは美術館を巡る』と熱く語り出して。私が眉をひそめると『ホテルは中心街から離れたところで、移動もバスや電車に変更したから、これでも費用は抑えられた方だよ。普通26万円は優に超えるんだから』と大きな顔をしてきました」
真由美さんは「その費用は親が出すってこと? そんなお金どこにあるの!」と思わず怒鳴ってしまったのだとか。それほど裕福な家庭ではなかったので、楓さんはアルバイトをしていたけれど、勉学に励んでほしい気持ちから、その頻度を制限していたという。
「すると、娘は『バイトで貯めたお金もさほどないので、卒業旅行の費用を少し支援してほしい』と申し出てきました。何でも友人は親が記念に費用をすべて負担してくれるそうで『全額は無理かもしれないけど、半額くらい出してもらえないかな』と食い下がってきたのです。さらに娘は『社会人になって返済するから今回は費用を立て替えて』と懸命に粘ってきたけれど、決して安くはない金額にとても『いいよ』とは言えませんでした」
楓さんは「もっと安くなるよう学割や格安航空の利用も考えてみる」と言って、寂しそうに笑ったという。娘の落ち込む姿を見て、真由美さんは少しかわいそうに思ったのだとか。
「娘の友人は何度かうちに遊びに来たことがありました。ブランド物で身を包んでおり、いかにもお金持ちのお嬢様といった感じ。就活はせず、父親の会社にそのままコネ入社すると娘から聞いていて。うちが裕福でないがゆえに、娘に思うような卒業旅行をさせられないことにジレンマを感じていました」
本当は気持ち良く娘を卒業旅行へ送り出したいけれど、20万円も出す余裕がないことに思い悩む真由美さん。しかし、彼女が抱えるモヤモヤはそう簡単に消えることはなかった。
記事後編は【「実家が太い」友人と卒業旅行をした大学生の娘…帰宅後、「悲しそうな顔」を見て50代母親が後悔したワケ】から。
菜花 明芽(ライター)
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