( 260296 ) 2025/02/04 18:32:43 0 00 自動車(画像:写真AC)
かつて「車は一括で買うもの」という価値観が一般的だった。しかし、近年はその考え方が大きく変化している。資産を流動的に活用し、手元の現金を確保しながら計画的に支払うことが合理的とされ、ローンは広く受け入れられる選択肢となった。
特に、
・40代のローン利用率が高い ・世帯年収400万~600万円の層が最も積極的に活用している
という調査結果がある(以下参照)。
この傾向は、社会の購買行動や経済環境の変化を象徴するものだ。なぜこの年代と年収層にローン利用が集中するのか。その背景を探る。
直近でローンを利用して購入した車の購入費用(画像:ネクステージ)
ネクステージ(愛知県名古屋市)は、全国の20歳から59歳の男女1050人を対象に、「自動車購入とローン」に関する調査を実施した(発表は2025年1月23日)。
車の購入費用は車種やオプションの有無、オプションの種類によって大きく異なる。ローンを利用して購入した車の価格帯は「200万円~400万円」が最も多く、特に「101万円~200万円」が22.7%を占めた。
車両価格が50万円以下の場合、20代と30代のローン利用率は16.1%にとどまるが、40代では
「48.4%」
と大幅に増加した。一方、300万円までの車では20代のローン利用率は17.5%とほぼ変わらないものの、30代では28.0%、40代では
「46.0%」
となり、30代での利用率が10ポイント上昇する傾向が見られた。同社の調査によると、ローンを利用して車を購入した人の世帯年収で最も多かったのは
「400万円~600万円」
だった。この結果から、
「一定の収入がある層ほどローンを利用する」
傾向があることがわかった。
ローンを利用して車を購入した人の属性(画像:ネクステージ)
40代のローン利用率が高い理由として、以下の3点が考えられる。
まず、収入の安定性が挙げられる。40代はキャリアの中盤から後半に差し掛かる時期であり、企業内での役職が上がることで収入が安定する。これにより、ローンを利用しても返済の見通しが立てやすくなる。また、住宅ローンを組む世代でもあるため、「借りること」に対する心理的なハードルが低い。
次に、家族構成の変化が影響している。30代で子どもが生まれ、40代になると子育てが本格化することで、家族全員の移動手段として車の重要性が増す。共働き世帯の増加により、安全性や利便性を重視する傾向が強まり、スポーツ用多目的車(SUV)やミニバンといった価格帯の高い車を選ぶケースが増える。
最後に、予算の柔軟性がある。収入が安定すると、一括で高額な支出をするよりも、計画的に分割で支払う方が良いという考えが生まれる。貯蓄を一気に減らすよりも、ローンを活用しつつ生活費の余裕を確保する方が安心感がある。特に、教育費や住宅ローンなど複数の支出を抱える世代にとって、負担を分散させることは重要な選択肢となる。
本調査の結果から、車の購入においてローンは幅広い世代で活用されており、特に40代では収入の安定やライフスタイルの変化に伴い、その利用率が高まる傾向が見られた。
自動車(画像:写真AC)
年収400万~600万円の世帯がローンを利用する背景には、いくつかの理由がある。
まず、年収400万~600万円の層は、日本の典型的な「中間層」に該当する。この層は、生活費や貯蓄、住宅ローンなどの固定支出がありつつも、ある程度の余裕を持って消費ができる。しかし、300万円以上の車を一括で購入すると、貯蓄に大きな影響を与え、急な出費に対応できなくなるリスクを避けるため、ローンを利用するケースが多い。このように、手元に資金を残しつつ車を購入するための手段としてローンは有効である。
次に、車の購入価格帯と実際の市場価格にはギャップがあることも、ローン利用の一因だ。一般的に車の購入目安は年収の半分と言われるが、年収400万~600万円の世帯にとっては、適正価格帯は200万~300万円程度だ。しかし、実際には軽自動車やコンパクトカーでも200万円を超えることは珍しくなく、ミニバンやSUVでは300万円を超えることが一般的となっている。この価格帯の車を現金で購入するのは厳しく、無理な借金を避けたいという思いから、ローンを活用することが最適な選択肢となる。
さらに、共働き世帯の増加もローン利用を後押ししている。共働き世帯では収入が安定しており、ローンの支払い計画を立てやすい。また、車は通勤や子どもの送迎、週末のレジャーなど多目的に使用されるため、必要性が高い。最近では、低金利ローンや残価設定ローンなど、月々の支払い負担を軽減できる金融商品が増えており、これらを活用することで家計への負担を抑えつつ、希望する車を手に入れる世帯が増えている。
ローンを利用して車を購入した人の属性(画像:ネクステージ)
ローン利用の変化と今後の展望については、いくつかの重要な要素が浮かび上がる。
まず、カーシェアやサブスクリプションサービスの普及により、「所有から利用へ」という考え方が広がっている。しかし、家族での利用や地方での移動手段としては依然として「マイカーを持つ」ことが重要視される。そのなかで、ローンは「柔軟に支払いながら必要な車を確保する」という有効な手段として定着している。
次に、日本が長年にわたって低金利の状態が続いているが、今後の金融政策によっては金利が上昇する可能性がある。金利が上がれば、これまでのように気軽にローンを組むことが難しくなり、より慎重な資金計画が求められるだろう。さらに、リースやサブスクリプション型ローンなど、新たな購入手段が拡大することで、従来のローン利用者層にも変化が見られる可能性がある。
また、ローンを活用する理由のひとつとして「手元資金を残す」という考え方が挙げられるが、これは資産運用の考え方とも密接に関係している。特に貯蓄や投資を積極的に行う層にとっては、「車に現金を使うよりも、資産を増やす方が合理的」と考え、ローンを選択するケースが増えている。
自動車(画像:写真AC)
40代のローン利用率が最も高く、特に世帯年収400万~600万円の層においてローン利用が顕著である。
この背景には、安定した収入と支払い能力、ライフスタイルの変化、さらには「無理なく車を購入する」という新たな価値観の浸透がある。
かつては「現金一括で購入することが最善」という考え方が主流だったが、現在では「適度な負担で、必要なものを手に入れる」という意識が広まり、ローンを賢く活用する傾向が強まっている。
この流れは今後も続き、ローンの利用方法や金融商品の多様化が進む中で、ますます柔軟な購買スタイルが定着していくと考えられる。
鶴見則行(自動車ライター)
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