( 260729 )  2025/02/05 17:10:00  
00

元SMAPメンバーの中居正広氏の問題を巡り、週刊文春が記事の一部を訂正したことが話題になっている。

橋下徹氏が指摘し、楊井人文氏の記事が反響を呼んだ。

フジテレビも10時間の釈明会見を行った後、週刊文春が編集部コメントとお詫びを発表した。

記事の変遷と訂正をめぐって意見が分かれている状況で、中居氏とX子さんの話題の核心がブラックボックスになり、真相がわからない状況が続いている。

(要約)

( 260731 )  2025/02/05 17:10:00  
00

(c) Adobe Stock 

 

 元SMAPメンバーでタレント・中居正広氏の問題を巡り、週刊文春が一部記述を訂正していた。そのことを指摘したのは橋下徹氏であり、さらにその指摘をもとに書かれた楊井人文氏の記事が大きな反響を呼んでいる。なぜGoogleやLINEヤフーから多額の支援を受け続けている日本ファクトチェックセンターではなかったのだろうか。月刊Hanadaと月刊WiLLの元編集者で『「“右翼”雑誌」の舞台裏 』(星海社)の著者でもある梶原麻衣子氏が語るーー。 

 

〈世の中の「ほんとう」がわかります〉――キャッチフレーズにそう掲げるのは文春オンラインだ。その文春オンラインにも記事を出している週刊文春が、皮肉にもファクトチェックの洗礼を浴びることになった。 

 

 記事は昨年末から話題の、元SMAPメンバーでタレントの中居正広氏が、フジテレビ局員のⅩ子さんと何らかのトラブルを抱え、そこに同じくフジ局員でX子さんの上司に当たるA氏が関与しているという疑惑を報じたものだった。そのA氏のかかわり方についての表現が「こっそり」変えられていたと指摘されたのである。 

 

 指摘したのは橋下徹氏。具体的な経緯はこの件を記事化している楊井人文氏のyahoo記事を参照されたい(https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/191f61880348ac4c9ea706bdbcf93316d33dbea0)。文春オンラインの電子版オリジナル記事だった橋下氏の記事だけでは多くの人が週刊文春の表現修正に気付かなかったところ、楊井氏が記事化したことで多くの人々の知る処となった。 

 

 しかも、1月27日にフジテレビが驚異の「10時間釈明会見」を行ったことが話題になっていた中、28日朝に楊井氏の記事が公開されたため、大きな波紋が広がった。報道各社も後を追うように報じ、週刊文春も改めて編集部コメント、そして編集長による「フジテレビ・中居問題 記事の訂正について」というお詫びを発表することになった。 

 

 その変遷の核の部分は次の点だ。 

 

〈昨年12月26日発売号では、事件当日の会食について「Ⅹ子さんはフジ編成幹部A氏に誘われた」としていました。しかし、その後の取材により「Ⅹ子さんは中居氏に誘われた」「A氏がセッティングしている会の“延長”と認識していた」ということが判明したため、1月8日発売号(第2弾)以降は、取材成果を踏まえた内容を報じてきました〉 

 

 

 ただ、お詫びではあるものの、週刊文春竹田編集長は〈第2弾以降で報じてきた通り、事件直前、フジ編成幹部のA氏はⅩ子さんを中居氏宅でのバーベキューに連れて行くなどしています。またⅩ子さんも小誌の取材に対し、「(事件当日の会食は)Aさんがセッティングしている会の“延長”だったことは間違いありません」と証言しています。以上の経緯からA氏が件のトラブルに関与していた事実は変わらないと考えています〉 

 

 これについて、「訂正前後で、A氏やフジテレビの関与については全く意味合いが変わる」という意見もあれば、週刊文春の意見と同様に「本質的には訂正前後でフジやA氏の責任に変化はない」とするもの、週刊文春は訂正を出す必要はなかったとするものまで、様々意見が分かれている。 

 

 そもそも当事者である中居氏とX子さんが示談していることで「(二人が認識している)事実関係を話すことができない」状況になっている中では、肝心の部分がブラックボックスになっているため、実際のところはわからない。というか、ブラックボックスが開かれたところで、中居氏とX子さんの認識が食い違っている可能性もある。 

 

 そういう状況にあるだけに、世間的には各種記事に書かれている周囲から漏れ伝えられる情報、当事者から核心に触れない形で発せられるメッセージを読者がおのおので「解釈」し、ブラックボックス部分は自らの想像によって埋める形で事件の全体像を認識するほかない。 

 

 これ自体がどうかと思うが、さらにどうかと思うのはフジテレビ会見で役員を糾弾していた記者らの認識だ。週刊文春の記事は最低限、読んだうえで来場したに違いないが、記事のトーンの変遷にどのくらいの記者が把握していたのか。気づいていて「本質的にはフジテレビの責任に影響なし」と判断したのか、そもそも気づいていなかったのか。 

 

 これは恐ろしいことである。確かに書いてあったことを読んではいただろうが、気づかなかったか、大したことではないと判断していたものが、こうしてファクトチェックによって記事のトーンの変遷を指摘され、大きく報道されたことによって、議論の行方が大きく変わりつつあるのだ。 

 

 

 実際、メディアで働いた経験のあるOBの中にも、週刊誌系媒体の記事が配信されるがままに「素直に」反応し、完全にメディアに踊らされている人も散見されるので、一般読者や視聴者にリテラシーを求めるのはさらに難しいことが分かる。 

 

 もちろん、一部がブラックボックスになっているにもかかわらず、義憤やゴシップへの興味から「解釈」が肥大し、当事者への非難を増幅させていくのはSNSやネットの作用による部分が大きい。しかし、「ネット上」にあるだけで、その出元は週刊誌や出版社、新聞社系のオールドメディアと呼ばれる既存のメディアであることも確かだろう。 

 

 GoogleやLINEヤフーなどの支援を受けている日本ファクトチェックセンター(JFC)が設立されたのは2022年10月のことだ。そのガイドラインの第一条に「インターネット上の情報に関するファクトチェックの実施」とあり、新聞・テレビに対しては実施されないとしたことから、大炎上した過去がある。 

 

 実際には設立経緯から「プラットフォーム上の自主的対策、信頼性の向上」がJFC創設の根幹であったため、新聞・テレビが対象とならないのは当然だと法政大学の藤代裕之氏は指摘している。(https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/75885e38d0f23a31eab9cc0a974cda45bd4b8e6f) 

 

 ただし新聞・テレビの報道内容がネットで配信されることから、そうしたものに対しては対象となる可能性があるとしている。しかし見たところ、少なくともこの一年間はチェック対象のほとんどはSNSやショート動画で投稿された、メディア以外の発信元のものである。 

 

 チェック対象になっている話題を見ていただくとわかるが、普段SNSをそれなりに見ている人でも「こんな話がいつ広まっていたのか」と思うような荒唐無稽な情報も散見される。確かに陰謀論が情報環境の安全保障に響く時代ではあり、それぞれの話題の閲覧回数も数十万単位になってはいるが、その影響は(週刊誌を含む)既存メディアのものと比べると、かなり限定的である。 

 

 藤代氏も指摘するように、新聞は社会を揺るがせるような誤報を出せば検証記事や第三者委員会による調査が行われ、テレビにはBPOがある。では雑誌やスポーツ新聞、それらを母体とするネット配信記事はどうなのか。 

 

 そもそもスマホやブラウザという「共通の画面」であらゆるコンテンツに触れられる時代、あらゆるプラットフォ―ムにあらゆる媒体のコンテンツが流入している時代に、受信者側がどの程度媒体を意識して読んでいるかもわからない。 

 

 中居氏とX子氏の件にしても、フジ局員のA氏が「セッティングした飲み会をドタキャンして中居氏とX子氏を二人きりにさせた」件を最初に書いたのは『女性セブン』だったが、ウェブの「ニュースポストセブン」配信記事で読んだ人が多かったであろうこと、その後の週刊文春の後追いでも一部引用したことで「文春が『ドタキャン』も報じていた」と誤認していた人も少なくないだろう。 

 

 

 週刊誌記者経験のあるライターは「最近は、『週刊誌だから』という立場が読者に理解されていない。『週刊誌だから』で許されないし、そもそも読み手は媒体が何であるかを意識せず、yahoo上の、ネット上の記事としてしか読んでいないのではないか」とこぼしていた。 

 

 その中で「文春」という媒体は独自性を残してきた面があり、だからこそ読まれ、称えられ、そして問題を起こせば猛烈に非難されるのだろう。「たかが週刊誌、されど週刊誌」とライターの西谷格氏は指摘しており(https://www.newsweekjapan.jp/nishitani/2025/01/post-16.php)、その通りだと思うが、読み手の感覚はやはりかなり変わりつつある。「そうはいっても週刊誌の記事だから、しばらくは判断保留」というリテラシーが、どれほど共有されているのか。 

 

 ただそれでも、週刊文春が「忖度しない調査報道」をするという名目(ブランディング)で寄付を募っている(https://bunshun.jp/denshiban/articles/b6599)以上、「たかが週刊誌」と見ることの限界もあろう。週刊文春自身が「我々、所詮は週刊誌ですから」というスタンスを取っていないのだ。 

 

 読み手としても大変難しい状況だが、西谷氏も指摘しているように、「週刊誌はざら紙、ではなく、新聞も週刊誌記事も同じ画面上にあり差別化されていない」ことによる読み手の意識への影響は否定しがたい。 

 

 もっと言えば、X上でそれらしきサムネイルとタイトルが表示されるカードだけでは、取り上げられているニュースの真偽や、発信元の信頼性は判断がつきづらい。 

 

「明らかにフェイクな内容、あり得ないような出来事を、ニュースのように配信している」サイトの記事を、それこそメディア関係者(特にOB)が事実であるかの如く紹介しているのを見かけることは、日常茶飯事となっている。 

 

 

 
 

IMAGE