( 261199 )  2025/02/06 16:59:37  
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ホンダと日産の経営統合協議が破談になる中、三菱自動車が注目されている。

三菱はASEAN地域とピックアップトラックに強みを持ち、経営統合の実現に向けて重要な存在感を示している。

また、ホンダは三菱の技術や生産力を活用して製品供給を行いたいと考えており、将来的には三菱と日産の関係にも影響を及ぼす可能性がある。

ホンダは三菱の株取得や資本提携を狙っており、将来的な3社連合の形成も予想されている。

(要約)

( 261201 )  2025/02/06 16:59:37  
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ホンダの思惑は(ホンダの三部敏宏・社長。写真/AFP=時事) 

 

 昨年末から続いていた日産とホンダの経営統合協議。ここにきてホンダが日産を子会社化する案を打診し、そこに日産側が反発、統合協議そのものが破談になったと報じられている。そうしたなかで注目されていたのが、日産が筆頭株主となっている三菱自動車の動向だった。自動車業界に精通するジャーナリスト・井上久男氏は、「経営統合が成立しなくても事業ベースで協力し合うことを続ける方針」と分析しているが、そこで三菱自動車はどのような存在感を示すのか。井上氏がレポートする。(本記事は週刊ポスト2025年2月3日発売号に掲載されたもので、記事執筆時点の情報をもとに掲載しております)【全3回の第3回。全文を読む】 

 

 現在の話に戻ると、日産はホンダから統合に向けて経営再建に関する厳しい“条件”を突き付けられているため先行きはまだ不透明だ。 

 

 ただ両社は仮に交渉が不調に終わり、経営統合が成立しなくても事業ベースで協力し合うことを続ける方針で、そこに三菱も加わる予定だ。 

 

 2024年度のグローバル販売台数の見通しはホンダが380万台、日産が340万台に対して、三菱はその4分の1程度の約90万台。三菱の規模は小さいが、実は統合実現に向けて大きな存在感を示している。 

 

 12月23日の記者会見で三菱の加藤隆雄社長はこのように語った。 

 

「当社の強みははっきりしている。それは、ASEAN(東南アジア諸国連合)とピックアップトラックであり、この分野で両社をサポートできる」 

 

 ここがまさにポイントだ。三菱自動車の収益源はタイとインドネシアの事業にある。タイではトラックをベースにしたピックアップトラック「トライトン」が稼ぎ頭になっている。 

 

 ホンダは、日産との協業・経営統合交渉に本格的に入る前は、手を組んで相乗効果が高いのは三菱だと見ていた。その理由についてホンダ関係者はこう説明する。 

 

「ホンダにはEVに移る過渡期で存在感を増しているプラグインハイブリッド車(PHV)がないが、PHVに強い三菱から商品供給を受けられないかと考えた。続いてホンダはタイの四輪事業を縮小し、生産を三菱に委託できないかとも考えている」 

 

 さらに別の関係者は「ホンダの軽自動車『N-BOXシリーズ』は日本で最も売れているクルマだが生産コストが高く、収益性が悪い。このため、コスト競争力が高い三菱の水島製作所(岡山県倉敷市)に委託できれば原価が下がる」と語る。 

 

 ホンダはトラックベースのピックアップトラックを開発・製造していない。また、小型ジェットやマリン事業も手がけているが、こうした分野の顧客は富裕層が多い。富裕層にクルーザーをけん引できるような大型ピックアップトラックを提供できれば、四輪事業の収益力向上に貢献できるとの見方もある。 

 

 

 こうした戦略の下、実はホンダは、日産が保有する三菱自動車株の取得を狙っていたと見られる。 

 

「ホンダは自動車に影響力がある三菱商事に接近。2023年にEVの電池のリースや再生、充電ビジネスで商事と提携したのも自動車との資本提携を見据えてのことではないか」 

 

 そう見る業界関係者もいた。前述のようにホンダと日産が計画している共同持ち株会社の傘下に三菱自動車が入ることは考えにくい。ただ、日産と三菱は資本提携を結んだ際に10年を機に関係を見直すことができる契約になっているとされる。その“期限”が来年(2026年)に迫っている。 

 

 その際に三菱は、日産が保有する27%分を買い戻すなどして一旦、日産との関係を解消するかもしれない。経営状態が悪化しておりキャッシュが欲しい日産は三菱株を売れば1700億円程度を得られる。 

 

 その後は、三菱が共同持ち株会社から20%程度出資を受ける形などが想定される。その持ち株会社は、社長と取締役の過半数はホンダが指名し、「ホンダ主導の会社」になる予定のため、ホンダは三菱に対する影響力で日産よりも優位に立てる。三菱の動き次第では両社の統合の形に影響を及ぼしかねない。 

 

 自動車の経営は持ち株会社と商事が相談しながら進めることになるのではないか。もしそうなれば、「3社連合」の新しい形ができるだろう。 

 

 * * * 

 現在、マネーポストWEBでは、関連記事《【全文公開】日産&ホンダ統合を左右する「三菱自動車株」問題 日産の持つ27%の三菱株の行方は…ホンダが引き受ければ新たな「3社連合」の形へ》にて、井上久男氏によるレポートの全文を公開している。 

 

【プロフィール】 

井上久男(いのうえ・ひさお)/1964年生まれ。ジャーナリスト。大手電機メーカー勤務を経て、朝日新聞社に入社。経済部記者として自動車や電機産業を担当。2004年に独立、フリージャーナリストに。主な著書に『日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年』などがある。 

 

※週刊ポスト2025年2月14・21日号 

 

 

 
 

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