( 262229 ) 2025/02/08 16:21:55 1 00 立憲民主党が衆議院に提出した「保険証復活法案」では、従来の“紙の保険証”を2024年12月に新規発行が停止された後も復活させ、マイナ保険証と併用することを目指している。 |
( 262231 ) 2025/02/08 16:21:55 0 00 立憲が“紙の保険証”復活法案を提出し議論に
1月28日、立憲民主党が衆議院に提出したのは「保険証復活法案」。その名のとおり、2024年12月に新規発行が停止された、従来の“紙の保険証”を復活させようという法案で、今後一本化されるマイナ保険証との併用を目指し、提出された。
立憲は2024年11月にも、従来の保険証の「廃止を延期する法案」を国会に提出。ただ、野党の賛同が得られず、審議入りすることはなかった。それにも関わらず、なぜ再び保険証復活法案を提出したのか。
2024年12月時点でのマイナ保険証の利用率は、未だ25%。また、ANN世論調査でも、マイナ保険証の一本化に不安を感じる人が57%に上っている。さらに、医療現場からも不満が噴出。2024年4月には、マイナ保険証に対応する機器の導入義務などを巡り、医師と歯科医師ら約1400人が「義務は違法であり無効」だとし、国を相手取り裁判をおこす事態となった。その後、この請求は棄却されたが、「廃業する医師も出るのでは」など不安の声がある。
果たして、紙の保険証は復活すべきか、否か。『ABEMA Prime』で、立憲民主党の“ネクストデジタル大臣”中谷一馬議員と考えた。
“保険証の代わり”資格確認証
中谷議員は今回の法案について、「“マイナ保険証併用法案”でもあり、デジタル化を推進しながら、紙の健康保険証を残したほうがコストも安く済むという話だ」と説明。「資格確認証を導入すると平デジタル大臣もおっしゃっているが、導入経費はシステム改修に281億円、資格情報のお知らせに107億円、資格確認証の印刷に150億円ぐらいかかる。現状の健康保険証は約200億円前後で運用されているので、併用したほうがバランスよく進められるのではないか」と話す。
また、「そもそも、マイナンバーカード自体が任意で取得するもので、マイナ保険証も義務ではない。100%移行する制度設計にはなっていない」とし、「マイナンバー制度が最もうまくいっていると言われている国がデンマークだが、1968年から57年の月日をかけて使えるようになっている現状がある。日本はまだ9年。もう少し腰を据えて、みんなが納得感を持てる状態まで成熟させていく必要がある」との見方を示した。
そんな中、インフルエンザになった娘を病院に連れて行ったところ、マイナ保険証がシステムエラーで使えない出来事があったという。「結局、健康保険証を出すことになった。また、健康保険証とマイナ保険証だけなら2パターンで済むのだが、資格確認書が増え、システムエラーの際はマイナポータルの画面を見せたりなどで、8パターンほど増えていく状況がある。(病院側の)カードリーダーも、スマホ搭載に対応するためには機種を変えなければならないので、二度手間だ。一度立ち止まって、医療DXを見直したほうがいいのではないか」と訴えた。
マイナ保険証 利用率は25%(2024年12月時点)
在宅医療を中心に診療する医師で、紙の保険証の必要性を訴える木村知氏。「外来と入院、在宅医療を行う地域密着型の診療をしている。発熱外来の患者さんの普及率は25%に近い実感があるが、在宅医療になるとガクンと下がる。400人中10人いないぐらいで、2.5%。ほとんどの方が紙の保険証を使わざるを得ないのが現状だ」と説明。
また、「そもそも法律の立て付けで(マイナ保険証は)義務ではないし、作りたくても作れない人もいる。彼らを置き去りにして“紙の保険証は停止だ”とするのはあまりにも強引だった。システムダウンや災害の時に、紙の健康保険証を持っていなくて診療を諦めてしまう、というのは危険。リスク管理・リスク分散としては紙を永遠に残すべきだ」との考えを述べる。
これにパックンは、「維新の吉村さんが『過剰診療や重複投薬をできる限り防ぐ』と反論したとおり、全て一元化して、マイナ保険証を見れば病歴や治療歴、投薬の履歴がわかると。診断や面倒くさい手続きは半分以下に減ると思う。その将来の目的地には賛同できるのではないか」と投げかける。
木村氏は「政府の説明が誤誘導だ。メリットとして、重複投薬や過剰医療を避ける、とたしかに書いてある。ただ、載せるデータは漏洩した時にセンシティブなもの。今のマイナ保険証は診療には役に立っておらず、お薬手帳に毛が生えたぐらいだ」とした。
それより推進すべきは電子カルテだという。「電子カルテ自体、100%の医療機関で導入されていないし、医療機関ごとのデータも統一されていない。政府のアナウンスは、“マイナ保険証でそれらが連携できる”かのようなニュアンスだが、今はできていない。国はそれを正直に言うべきだ」と促した。
中谷氏は「厚労省はアンフェアな喧伝をしている。河野さんが廃止とする前、元々厚労省は健康保険証とマイナ保険証の併用で医療DXが進められる環境を作ろうとしていた。重複投薬もオンライン資格確認の中で、健康保険証のIDでチェックすることは現実的にできる。重複投薬のコストは2020年度で16億7000万円とされているが、このために数百億円、数千億円を使うのは費用対効果が良くないので、しっかりと考えていかなければならない」と指摘。
セキュリティ面については、「シンガポールで、人口の27.5%の個人情報が流出したことがある。首相のものまで流出して非常に問題になったが、サイバーセキュリティ対策をしっかりやっていかないと、日本も同じ轍を踏むことになる。そこも慎重にやっていく必要がある」との見方を示した。
保険証復活法案 他の野党は?
中谷氏は、自身が見据える医療DXについて、「“みんなに持たせると便利になる”のではなく、“便利になったからみんな持ちたくなる”だと思う。電車の切符も、元々そんなにストレスはなかったと思うが、ICカードをかざせば改札に入れるという便利さを享受した結果、80〜90%の人が交通系ICを使うようになった。これが本来、政府がやるべきソリューションの提供。マイナ保険証はまだその便利さを実感していないから、利用率が低い状況にある」と語る。
そのため、立憲として医療DXに関する法案を提出する予定だという。「国民の健康増進にプラスにならなければいけないし、質の高い医療情報を適切に提供できる環境を作る必要がある。医療機関の業務の効率化もそうだし、システムや人材の有効活用を考えていかなければならない。私たちは、ここにかかりつけ医をセッティングしていくことによって、予防医学だったり、健康寿命、将来の介護などを見据えていくような法案を、今国会で提出したい。そして、2030年までにはそれを実現できるような医療DXのあるべき姿を実現したい」とした。
木村氏は「臨床の現場にいると、ハンデのある人が置き去りにされる、多数派向けの制度に感じる。今立憲が反対しても、野党の一部の人も“ここまで来ちゃったんだから後戻りできないだろう”と言う。考え直すことができたはずで、取りこぼされる方たちをどう拾うかをもう少し議論してほしい」と訴える。
これにパックンは、「拾うためのデッドラインが今だと思う。在宅医療に行く時に、“あと半年ですよ。あと3カ月ですよ”と言い続ければ、どこかで切り替えてくれるのではないか。限られたリソースを元の制度に戻すよりかは、次の制度に当てたほうが将来的に医療現場もすごく楽になる」と返した。
弁護士の南和行氏は「立憲も“失敗だった”かのようにもう今言うのではなく、きちんと話し合う。与党も“すぐ廃止と言ってしまったけど、ごめんなさい”というかたちで、嘘をつかずにマイナ保険証の便利さもアナウンスすることを考えてほしい」と訴えた。(『ABEMA Prime』より)
ABEMA TIMES編集部
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