( 262299 )  2025/02/08 17:44:12  
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日本の人口減少による影響について、多くの人が正確な理解を持っていないことが指摘されている。

しかし、『未来の地図帳』によると、人口減少が進む中で福岡市が人口を大きく吸い寄せる傾向にあり、それに伴い周辺地域からの流入も増加していることが明らかにされている。

福岡市は、「大福岡市」の誕生という可能性もあるほど、九州全体から人口を集めている。

特に若い女性が多く移り住むことで、福岡市には女性向けのブランド店などが集中することも示唆されている。

また、若者が福岡市を選ぶ背景には、地元に戻りやすい立地や交通網の整備が影響していることも示唆されている。

福岡市のような地域が人口を集める一方で、東京圏への流出も続いており、人口減少がもたらす影響についてさらなる考察が必要である。

(要約)

( 262301 )  2025/02/08 17:44:12  
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〔PHOTO〕iStock 

 

人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 

 

100万部突破『未来の年表』シリーズのベストセラー『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか?人口減少が10〜20年後の日本のどの地域をどのような形で襲っていくのか?についての明らかにした必読書だ。 

 

※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。 

 

都市に勢いが出てくると人々を魅了するものだが、福岡市への人の流れは大きなものとなっている。総務省の「住民基本台帳人口移動報告(2018年結果)」によれば、2018年の転入超過は6138人だ。同じ九州にある政令指定都市でも北九州市は2202人、熊本市は455人の転出超過となっており、九州の中では福岡市が人口を大きく集めていることが分かる。 

 

どこから人を集めているかといえば、九州一円および関門海峡の対岸である山口県だ。創生本部の人口移動分析概要(2017年)を見てみよう。 

 

都道府県の中で最も福岡市に人数を送り出しているのは長崎県だ。福岡市へと引っ越した人は5051人で、2102人の転入超過となっている。 

 

山口県と九州各県のうち、長崎県に次いで転入超過数が大きいのは熊本県の1363人である。以下、鹿児島県が1100人、大分県972人、佐賀県950人、宮崎県829人、山口県626人である。山口県と九州各県から7942人もの人口をかき集めた計算だ。福岡県内の各市町村からも1808人、九州各県や東京圏を除いた道府県からも1721人の転入超過となっている。 

 

これらの数字をもう少し詳しく分析してみよう。例えば、長崎県だ。同県の「異動人口調査結果」(2018年)によれば、この年の福岡県への転出超過数は3400人。東京圏への1717人の2倍だ。福岡県と東京都への転出者数だけで比べてみても、東京都へは2672人だが、福岡県には9696人が移り住んでいる。 

 

こうした傾向は九州の他県にも見られるが、九州の政令指定都市のひとつである熊本市も例外ではない。「熊本県推計人口調査結果報告」(2017年版)が県内市町村からの移動者数を整理しているが、熊本市から福岡県へは4672人転出しているのに対し、東京都へは2143人だ。熊本市から福岡県への転出超過数は632人である。長崎市も東京都への376人を大きく上回る1088人(2018年)の転出超過となっている。 

 

このように福岡市は、九州各地の政令指定都市や県庁所在地からも人口を吸い寄せ、まるで吸収合併を始めようとしているかのように膨張を続けているのである。 

 

九州各地の大都市の人口差、とりわけ若い女性の人口差が開いてくると、女性向けのブランド商品や銘品店がますます福岡市に集中する。それがさらに、若い女性を福岡市に向かわせることとなる。 

 

とりわけ、新幹線を利用すれば短時間で往来できる政令指定都市の北九州市や熊本市は若い世代の人口が多いぶん、福岡市への“若者供給地”となりやすい。九州内での“福岡一極集中”の流れがさらに強まるようなら、いつの日か、3市が事実上一体化した「大福岡市」の誕生ということになるかもしれない。 

 

 

福岡市へと移り住んでいる年代を調べてみよう。「熊本市人口ビジョン」(平成28年3月)が2014年度の転出超過数について5歳階級別に分析している。少々データが古いが、福岡県への転出者は男性は20~24歳が、女性は15~19歳、20~24歳が他の年齢層に比べて際立って多い。これらの年齢層に限れば東京圏への流出が大きいが、それでも福岡市を目指す若者も決して少なくないというわけだ。 

 

「大分県の人口推計報告」(2018年版)を見ても、県外転出者で最も多いのは男女とも「20~24歳」である。転出超過数でもこの年齢層が男性687人、女性1200人となっているが、福岡市の若者率の高さを考えれば、九州各県から20代の若者、とりわけ女性が進学や就職を契機として福岡市に流れ込んでいることを示すデータだといえよう。先に紹介した若者率の高さを裏付ける数字でもある。 

 

若者が福岡市を目指す背景には、九州が東京圏から距離的に離れていることが関係する。距離的に離れた東京まで行くより、すぐに地元に戻れる福岡県に勤務先や進学先を求める人が多いということだ。 

 

都会に出たいという願望は、いつの時代の若者にもある。しかし、両親にしてみれば、帰省するにも交通費が嵩み、往来が簡単ではない東京圏へと送り出すことに抵抗のある人も少なくない。その点、“ミニ東京”ともいえる福岡市は両者が折り合える最適の地だ。九州新幹線や高速バスなど、九州各地と福岡市を結ぶ交通網は充実しており、こうしたことも福岡市への垣根を低くしている。福岡市は「東京圏から遠い大都市」である特徴を、メリットとして十二分に生かしているのである。 

 

こうした福岡市からも人口を吸い上げているのが、東京圏である。創生本部の人口移動分析概要(2017年)によれば、人口流出は2167人だ。人口増加が続く福岡市にあってさえ、東京一極集中の流れを止めきれていない。 

 

つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、多くの人がまだまだ知らない「人口減少」がもたらす大きな影響を掘り下げる。 

 

河合 雅司(作家・ジャーナリスト) 

 

 

 
 

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