( 262479 )  2025/02/09 04:27:31  
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日本のスポーツメディア業界は変革の時を迎えており、休刊も相次いでいる。

スポーツ紙のビジネスモデルが持たなくなり、スポーツ報道の取材現場が崩壊していると指摘されている。

さらに放映権高騰により、テレビ局がスポーツ中継での視聴環境についていけなくなっている。

海外の動画配信サービスの参入により、視聴環境は大きく変わりつつあり、海外の動画配信サービスの影響力が増している。

特に大谷翔平の活躍でMLBの放映権も高騰しており、地上波での大谷の活躍を見られない可能性が高いとされている。

(要約)

( 262481 )  2025/02/09 04:27:31  
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スポーツ報道を支えてきた夕刊紙の休刊も相次いでいる 

 

日本のスポーツメディア業界が変革の時を迎えている。新興勢力の台頭に加え、「海外の動画配信会社が仕掛けるマネーゲームで、お茶の間のスポーツの視聴環境も激変する」(スポーツ紙記者)との予測もあり、場合によっては「世界のオオタニ」の活躍が一般視聴者に届かないという事態もありえるというのだ。 

 

■スポーツ報道の斜陽 

「時代の趨勢と言われればそれまでだが...」 

 

こうため息をつくのは、某スポーツ紙で長く記者を務めた50代のA氏。記者歴30年を数えるベテランのA氏だが、ここ数年は、自身が身を置くスポーツ報道の現場に吹き荒れる逆風の強さをまざまざと感じているという。 

 

「駅やコンビニでの即売がメインのスポーツ紙のビジネスモデルがいよいよ持たなくなってきた。取材現場でも経費削減がやかましく言われるようになり、ネットでの先出しが徹底され、PV(ページビュー)が人事評価に直結する成果主義も言われるようになった。新聞に見切りを付けた若手の離脱も年を追うごとに相次いでいる。すでに現場の取材体制は崩壊していると言っていいでしょう」(A氏) 

 

〝斜陽化〟が叫ばれて久しい新聞業界だが、昨年から老舗の媒体が次々と看板を下ろしている。1月末には、産経新聞社が50年以上発行を続けてきた夕刊紙「夕刊フジ」が休刊し、中日新聞傘下のスポーツ紙「東京中日スポーツ」も規模を縮小して2月1日から電子版に全面移行することが決まっている。 

 

■放映権高騰についていけず 

さらに、スポーツメディアのもう一つの柱である「中継」においても衰退の兆しが現れている。NHK、民放など日本のテレビ局の〝懐事情〟が、スポーツ中継でのお茶の間の視聴環境を様変わりさせそうな気配も見せているのだ。 

 

「ここ数年続いてきた放映権料の高騰に日本のテレビ局がついていけなくなってきている。五輪などの大きなスポーツイベントでは、国営放送であるNHK頼みの状況が続いてきましたが、値上げの勢いには民放はもちろん、もはやNHKでさえついていけないほど。 

 

高騰を招いているのは、英国の動画配信サービス『DAZN(ダゾーン)』など海外勢の市場参入。象徴的だったのが、昨年11月に行われたサッカー日本代表の一戦です」(民放キー局社員) 

 

昨年のW杯の出場権獲得を賭けたアジア最終予選で、「サムライブルー」の命運を賭けたアウェーの2連戦(インドネシア、中国戦)を、ダゾーンが有料会員のみならず全てのサッカーファンに向けて無料開放したのだ。 

 

前出の民放キー局社員はこう声を潜める。 

 

 

「ダゾーンの視聴が100万回を突破したことを受けたキャンペーンの一環で実現した試みです。X(旧ツイッター)などSNSで、『 

 

』というハッシュタグで周知されるなど、サッカーファンの間で話題になりましたが、単なるキャンペーンではなかった。 

 

放映権料高騰のあおりで、アウェー戦で地上波生中継ができなくなっている代替策として、日本サッカー協会(JFA)がダゾーン側に『なんとかしてほしい』と泣きついて実現したというのが真相です」(同前) 

 

関係者によると、件のW杯最終予選の放映権料は、その試合の重要性によって価格設定がされており、アウェーでの試合を差配している「アジアサッカー連盟」(AFC)が、「アウェーでも1試合で3~5億円」という強気の提示をしてきたのがそもそもの発端。 

 

AFC 側が仕掛けた価格交渉に、日本のテレビ局は太刀打ちできず、地上波生中継を断念したという。目下、タレント・中居正広氏の女性トラブルの煽りを受け、スポンサー一斉撤退の憂き目に遭うフジテレビの苦境が伝えられているが、ほかの民放も業績が好調とはお世辞にもいえない。 

 

「テレビの落日」というトレンドが市場のスタンダードとなる中で、ダゾーンがその存在感を際立たせている。 

 

「潤沢なオイルマネーを有するサウジアラビアの国営ファンドが10億ドル(約1100億円)の融資を検討したことも話題になりましたが、その影響力はすでに日本でも顕著で、すでにプロ野球11球団が契約している。1球団当たりの契約料は10億から15億円とも言われている。唯一、契約していないのが広島カープで、地元密着を掲げる球団らしく『地上波での生中継が減るのはありえない』として地方球団の意地を見せています」(同) 

 

■大谷の活躍でMLB放映権は高騰も 

昨年、「世界のオオタニ」こと大谷翔平の活躍が連日、地上波で流れて列島を熱狂させたメジャーリーグ(MLB)にもバブルの波は迫る。 

 

2022年、MLBは米国で全国ネットの主要テレビ局(FOX、ESPN、TBSなど)と、7年17億6000万ドル(約2260億円)という大型契約を結んでいる。日本勢はNHK、民放合わせてMLB側に年間推定6400万ドル(約95億円)を支払っているとされるが、それとは比較にならないほどの札束攻勢を仕掛けているのだ。 

 

すでに昨シーズンの大谷の大車輪の活躍によって、さらなる値上がりへの警戒感も広がっており、ある民放ディレクターは「地上波のテレビでは、大谷の活躍を見たくても見られないという状況になる可能性は極めて高いと言えるでしょう」と深いため息をつく。 

 

メディア側にとっても、スポーツファンにとっても、大きな曲がり角を迎えているのは間違いなさそうだ。 

 

 

文/高倉仁作 写真/時事通信社、photo-ac.com 

 

 

 
 

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