( 262859 )  2025/02/09 18:23:34  
00

2025年になると、マンション価格や住宅ローン金利が上昇し、特に首都圏の新築マンションは供給が増加しつつあります。

しかし、郊外部では新築マンションの供給戸数が減少する可能性が高くなっています。

デベロッパーは土地取得費用や建築費用の上昇を受けて、郊外の比較的リーズナブルなマンションを値上げしにくいため、都心部やその周辺を重点的に開発しています。

さらに、住宅ローン金利の上昇により、購入購買力の低下や返済負担が増えてしまう可能性があります。

この状況がデベロッパーのマンション供給意欲にどのような影響を与えるかが懸念されています。

(要約)

( 262861 )  2025/02/09 18:23:34  
00

郊外新築マンションの発売戸数が激減する状況に(写真はイメージ、anju901/Shutterstock.com) 

 

 マンション価格や住宅ローン金利の上昇で、マイホーム購入後の負担が一段と重くなりそうな2025年。首都圏の新築マンションの供給は増えそうだが、郊外部で割安感のある物件は激減する可能性があるという。住宅ジャーナリストの山下和之氏が最新のマンション事情をレポートする。 

 

■ 新築マンションの発売戸数は都心部の高額物件が中心 

 

 いま、東京都心部やその周辺の高額マンションを購入しているのは、富裕層や高額所得者が大半を占めており、居住用ではあっても資産価値上昇を期待して購入する人も多い。そのため、多少値上がりしても購入意欲が衰えることはなく、むしろ購入意欲が高まる傾向にある。 

 

 マンション開発を行うデベロッパー各社は、都心やその周辺でのマンション開発にしのぎを削っているが、今年もタワーマンションを中心に高価格帯のマンション販売が増えそうだ。 

 

 不動産経済研究所によると、【図表1】にあるように2024年の首都圏の新築マンション発売戸数は2万3003戸にとどまったが、2025年は2万6000戸に増えると予測している。 

 

 増加の大半を占めるのが東京23区だ。2024年の東京23区の発売戸数は8275戸だったのが、2025年は1万2000戸に増えるとみられている。 

 

 神奈川県も4917戸から5500戸に増えると予測されているが、その一方で、東京都下は2041戸から2000戸に、埼玉県は3313戸から3000戸、千葉県は4457戸から3500戸に減るとみられている。 

 

 こうして見ると、首都圏全体の新築マンション発売戸数は昨年より増えるものの、2023年以前のレベルと比較すると低水準にとどまっている。しかも、増加は高額物件中心の東京都心部やその周辺が中心になり、平均的な所得の会社員に手が届きそうな郊外の物件は減っていくことになりそうだ。その背景にはどんな事情があるのだろうか。 

 

■ デベロッパーが郊外マンションを値上げしづらい理由 

 

 マンション開発を行うデベロッパーは、マンション適地を見つけて土地を取得し、ゼネコンに建築を依頼してから販売に入ることになる。 

 

 2024年〜2025年にかけては、土地の取得費用、建築費用ともに依然上昇しており、その傾向はしばらく続きそうだ。都心部やその周辺の高級物件は、比較的購入余力のある高額所得者、富裕層が中心なので、値上げをしてもついてきてくれる人が多い。そのため、原価の上昇分を価格に転嫁しやすい。 

 

 しかし、郊外の比較的リーズナブルなマンションの購入層は平均的な所得の会社員が中心で、価格を上げると購買力が低下する可能性が高いため、デベロッパーとしては簡単に値上げするわけにはいかない。その結果、価格を上げやすく、利益を取りやすい都心やその周辺に力を注ぐことになるわけだ。 

 

 首都圏の郊外部では4000万円台〜5000万円台が平均的な会社員の購入価格帯となっている。エリアにもよるが、そこから1割、2割と上がってしまうと主要購買層の30代、40代の会社員は負担が重くなってしまう。賃上げが進んでいるとはいっても、1割以上の価格上昇は購買力の低下につながってしまう。そのため、郊外部でのマンション開発には慎重な姿勢をとるデベロッパーが増えている。 

 

 【図表2】をご覧いただきたい。これは、三菱UFJ信託銀行がマンションデベロッパーを対象に、建築費上昇がマンション素地(用地取得対象となる民有地)の仕入れにどのような影響を与えるかを聞いた結果をグラフ化したものだ。 

 

 都心の駅近立地は、59%が土地の仕入れを「増加させる」としており、都心の駅遠については「増加させる」と「減少させる」が34%の同数で、都心なら駅遠でも土地を仕入れたいとするデベロッパーが少なくないことがうかがえる。 

 

 それに対して、郊外部では駅近立地であっても「増加させる」は24%で、「減少させる」が45%と、減少が21ポイント多くなっている。さらに、郊外の駅遠になると「増加させる」は21%にとどまり、「減少させる」が69%と圧倒的に多くなる。 

 

 前述したように、マンションは土地を仕入れてから商品化の詳細を確定し、建築依頼したゼネコンが建設を開始してから販売をスタートさせる。土地の入手から販売まで時間がかかるので、郊外部でのマンション用地の仕入れを減らすことになると、1、2年後の販売数減少につながってくる。 

 

 郊外でも快速電車などが停車する人気の駅であれば、それなりに供給が続く可能性はあるものの、そうでない駅、例えば各駅停車しか停まらず、駅前に生活利便施設が整っていないような駅では、発売戸数が激減することになりそうだ。 

 

 都心部やその周辺のマンション価格は高くなり過ぎているので、郊外部のリーズナブルな価格帯の物件購入を考えている人は、マンションの新規発売が激減する前に、手を打っておいたほうがいいかもしれない。 

 

 

■ 住宅ローン返済の「必要年収」は金利上昇でどれだけ増えるか 

 

 しかも、2025年は住宅ローン金利の上昇が本格化する可能性が高い。金利が上がれば毎月の返済負担が増え、消費者の購入意欲が低下する。特に、比較的リーズナブルな価格帯の物件ほど、その影響は大きくなる。 

 

 埼玉県や千葉県での購入を想定すると、2024年の新築マンションの平均価格は埼玉県が5542万円で、千葉県が5689万円となっている。これらのエリアで新築マンションを購入する場合、一定の頭金を用意しても、5000万円ほどの借り入れが必要になる。そこで、5000万円の借り入れを行う場合、どの程度の年収が必要になるのかを試算したのが【図表3】だ。 

 

 金利0.5%だと、35年元利均等・ボーナス返済なしの毎月返済額は12万9792円。年収に占める年間返済額の割合を示す返済負担率を、銀行の審査基準の上限である35%とすれば、必要年収は445万円になる。それが、金利が0.5ポイント上がって1.0%になると返済負担率35%の必要年収は484万円に上がる。 

 

 しかも、0.5%の金利は変動金利型であり、金利上昇局面ではリスクが大きくなるので、リスクの小さい固定金利型にするとすれば、2%前後の金利となる。金利2.0%の返済負担率35%の必要年収は568万円となり、1.0ポイント上がって3.0%になると660万円に跳ね上がる。 

 

 年収の35%を住宅ローンの支払いに回さなければならないとなると、かなり家計を圧迫する。それだけに、返済負担率はできるだけ30%、25%、さらに20%に抑えるのが安心だ。実際、住宅金融支援機構の「フラット35」を利用して新築マンションを買った人たちの返済負担率は2023年度の平均で22.4%と、かなり慎重な返済計画を立てて買っていることになる。 

 

 そこで、返済負担率を25%とすれば、金利1.0%で必要年収は677万円、金利2.0%で795万円、金利3.0%で924万円となり、必要年収が1000万円近くになってしまう。これでは、購入に慎重になる人が増え、売れ行きの鈍化は避けられない。 

 

 それがデベロッパーのマンション供給意欲にどんな影響を与えるのかを聞いたのが【図表4】の調査だ。 

 

 金利0.5%の上昇でも、「供給戸数が減少する(10%以上)」と答えたデベロッパーが27%、「供給戸数が減少する(10%未満)」も38%いて、およそ3社に2社は供給するマンションが減るだろうと見ている。0.5%の上昇でこれだから、1.0%、2.0%と上がった場合には、供給減少割合がもっと大きくなり、発売戸数が激減する可能性が高い。 

 

 郊外の住宅地の中でも、ターミナル駅や生活利便施設の充実した駅周辺なら、一定のマンション開発が期待できるものの、そうでない駅だと新規のマンション開発が行われず、築年数の長い中古マンションだけになってしまう可能性がある。建物、住民の高齢化が進み、エリアの活力が低下すれば、資産価値も下がってしまうだろう。それだけに、郊外でのリーズナブルな価格帯の物件購入を考えている人は、エリアの見極めが重要になってくる。 

 

 いずれにせよ、今後、建築費や住宅ローン金利の上昇が負のスパイラルとなって、ますますマンションは“高嶺の花”になる可能性が高い。今なら何とか手の届く範囲に物件が多数あるはずだが、1年、2年先もあるとは限らない。近い将来マイホームを購入したいと考えているのであれば、早めに準備に入った方がいいかももしれない。 

 

山下 和之 

 

 

 
 

IMAGE