( 263249 ) 2025/02/10 16:44:15 1 00 キンライサーがダチョウ倶楽部とアンミカさんを起用したテレビCMをフジテレビで再開したことが話題になっています。 |
( 263251 ) 2025/02/10 16:44:15 0 00 ダチョウ倶楽部とアンミカさんが出演するキンライサーのテレビCM(画像:同社の公式サイトより)
給湯器の設置などを行うキンライサーは2月7日、公式X(旧Twitter)でフジテレビでのCM放映を再開したことを発表した。この投稿を受けて、同日に「キンライサー」がXでトレンド入りしている。
多くの企業がフジテレビからCMを引き上げる一方で、CM放映を続けたり、再開したりする企業も散見される。
1月31日には、通信販売事業者の夢グループがメディアの取材を受けて、フジテレビへのCM出稿を継続することを表明して話題になった。
他社の判断に逆行して、CM継続・再開を行っている企業はどのような意図で行っているのだろうか? 彼らに勝算はあるのだろうか。
■フジテレビへのCM出稿は賛否両論
キンライサーのCM再開発表の前日、回転寿司チェーン「スシロー」は、笑福亭鶴瓶さんを起用した広告や販促物の掲載再開することを発表した。同社は、中居正広さんのバーベキューパーティーに参加していたとされる鶴瓶さんが出演する広告を削除していた。
両者ともに、中居正広さんとフジテレビの一連の問題を受けての対応である。ただ、鶴瓶さんの一時取り下げは「とばっちり」と言うべき事案だ。そしてキンライサーの場合は、いまだ問題が沈静化していない中でのCM出稿であり、状況は異なっている。
ネット上の声を見ても、鶴瓶さんの広告再開はおおむね歓迎されている一方で、キンライサーのCM再開は賛否両論の意見が飛び交っている。
キンライサーに関しては、特に「愛国系アカウント」からの批判が目立っている。
韓国にルーツがあることを公表しているタレントのアンミカさんがCMに起用されており、かつ過去にフジテレビが「韓流推し」で炎上したこととも結びついて、同社が「韓国寄りだ」とバッシングの対象になってしまっている。
「不買運動」の投稿まで見られるが、利用者や利用検討者が騒いでいるようには見えないので、実効性はさほどないように思える。
高須クリニックもフジテレビにCMを放送し続けているのだが、不思議なことに「愛国系アカウント」の方々は、そちらは批判をしないのである。
また、夢グループがCM継続を表明した際には、どちらかと言うと、ポジティブな意見が目立っていた。
依然として、CMの継続・再開は批判されるリスクが高いことは間違いないのだが、企業や業態によっては、おおむね許容されているというのも事実のようだ。
■幾度も持ち上がる「テレビCM不要論」
フジテレビから企業CMが消えていく中で、「テレビCMは本当に必要なのか?」という議論が巻き起こっている。
「企業のCMをACのCMに差し替えても、売り上げには有意な影響は見られていない」という報告もある。テレビCMの「費用対効果」が疑問視されるに至っているのだ。
ただし、こうした議論はいまに始まったことではないし、多くの企業はテレビCMを控えたところで、短期的に売り上げに影響しないことはよく理解している。
例えば、コカ・コーラがテレビCMに1億円を投下したところで、企業側はコカ・コーラの売り上げが1億円以上増えるとは期待していない。テレビCMの効果は、短期的にあらわれるとは限らないし、売り上げを左右する要素は広告以外にもたくさんあり、複合的に決まってくるものだからだ。
統計データから見てみよう。テレビメディアの広告費は、東日本大震災が起きた2011年に一時的に落ちたが、その後しばらくは経済回復とともに、右肩上がりで上昇している。
東日本大震災の直後の1カ月程度の間、テレビCMのAC差し替えがあった他、広告の自粛が行われた。このときも、テレビCMをはじめとする“広告不要論”は巻き起こっていた。しかしながら、その後の広告市場の回復を見る限りでは、“広告不要論”は杞憂に終わったといえるだろう。
とはいえ、2016年以降で見れば下落基調にある。2020年にコロナで急減して、翌年には回復しているが、長期的に見れば、テレビ広告費は右肩下がりといえる。
一方で、広告費全体は右肩上がりで成長しており、特にインターネットメディアが急成長している。テレビCMをはじめとするマスメディア広告が、インターネットメディアに侵食されているという傾向は顕著に見られる。
今回のフジテレビ問題で、“テレビCMは不要”という流れにはならないはずだが、テレビCMの衰退を加速させる可能性は十分にある。
いずれにしても、現在の特殊な環境下でのCM放映は、テレビCMの価値を見直すいい機会になることは間違いない。
■逆風下でも「フジテレビでCM放映を続ける」意義
フジテレビで現在もCM放映を続けている企業は、何をメリットに考えているのだろうか? 下記の4点が考えられる。
1. リーチ(到達)の確保 2. 商品・企業のイメージアップ 3. 売り上げへの貢献 4. 副次的な効果 インターネットをはじめ、その他のメディアの広告にはない、テレビCMならではの価値は、1で挙げた到達力の大きさにある。
フジテレビに企業がCMを出せなくなったからと言って、他のテレビ局がCM枠を増やして対応することは、規制面で困難だ。十分な視聴者に広告を到達させるために、あえてフジテレビにCMを出稿しよう――という判断があってもおかしくはない。
少しややこしくなるが、広告出稿量の指標に「シェア・オブ・ボイス(Share of Voice)」がある。この指標は、競合他社と比較した広告出稿量の比率を示すものだ。
通信販売大手のジャパネットHDは、1月下旬にフジテレビへのCM差し止めを決定したが、夢グループがCMの放映を続ければ、同社の「シェア・オブ・ボイス」は向上し、競合に対する優勢を確保することができる。
2つ目の「商品・企業のイメージアップ」効果は、フジテレビのイメージが地に落ちている現在では、なかなか望めない。しかしながら、さほど知名度の高くない企業・商品・サービスが、いまのフジテレビにCMを出稿すれば、一定の存在感を示すことはできるだろう。
■テレビCMで売り上げが拡大した「あの商品」
「テレビCMは短期的な売り上げと連動しない」と先に書いたが、例外もある。成長途上の商品やサービスにおいては、テレビCMが売り上げを促進させる効果を持つことがある。
例えば、メガネ型拡大鏡の「ハズキルーペ」は2018年に100億円規模のテレビCMを大量投下することで、大きな市場を獲得している。
大手の生命保険会社がいち早くフジテレビからCMを引き上げる中で、ライフネット生命は依然としてフジテレビにCMを流し続けているが、1の「リーチの確保」と同時に、3の「売り上げへの貢献」も見込んでいるのではないかと思われる。
現在公開中の映画『BLUE FIGHT〜蒼き若者たちのブレイキングダウン』は、フジテレビのみでCMを放映している。テーマとなっているブレイキングダウン自体が物議をかもしやすい格闘技イベントだけあることもあいまって、フジテレビ限定のCM放映に対して、賛否両論が巻き起こっている。
注目と話題を集めたことは間違いなく、興行収入にどのような影響をおよぼすのか、注視しておきたい。
そしてほとんど語られていないが、意外に重要なのが4つ目の「副次的な効果」だ。
「相手が困っているときに手を差し伸べる」という行為は、善意云々(うんぬん)の話にとどまらず、損得勘定の話でもある。
成長して株式上場を果たした後でも、創業時の資金不足や、業績悪化で運転資金が足りなくなったときに貸し付けを行ってくれた銀行に対して、メインバンクとして取引を続けている企業も少なくはない。
具体的な見返りを期待しているかはさておき、CMを続けている企業は、「いまのうちにフジテレビに恩を売っておこう」という意図は少なからずあるのではないかと思う。
他にも、テレビCMの放映には、取引の促進、従業員の士気向上、人材採用効果――といったさまざまな効果がある。最近、BtoB企業がテレビCMを放映している事例が目立つが、彼らは短期的な売り上げ向上のためではなく、さまざまな副次効果も考えたうえで広告展開を行っている。
■CMの費用対効果はむしろ上がっている
テレビCMの運用支援サービスを行っているノバセルによると、1月中旬から同月末にかけて、AC差し替えを行わず、フジテレビでCMを出稿し続けている企業の指名検索(製品やサービスや企業名での検索)効率は、他局よりも高いという結果が出ている。
現在は、放映CM数も減っており、ACジャパンのCMやフジテレビの番組宣伝のシェアが高まっている中で、企業のCMは相対的に目立つ存在となっている。その点においては、CMの費用対効果はむしろ上がっているといえるかもしれない。
CM枠の料金は、一般に視聴率に紐づいて決まるので、通常は大幅な値下げは行わないはずだ。しかしながら、大量にCM枠の在庫が生じている状況では、値下げも余儀なくされているのではないだろうか(ただし、広告会社にいても、実際の広告枠の取引額は担当者でないとわからないので、公表されることはないだろうが……)。
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