( 263819 )  2025/02/11 18:07:46  
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日本では受験の若年齢化が進み、特に大都市圏では小学校の受験も一般的になってきている。

有名私立小学校の受験数も増加しており、受験成功には多額の費用がかかり、親の財力が影響するとされている。

教育を投資と考える親も多く、子どもに過度な期待をかけることでストレスを抱えさせるケースもある。

一部の家庭では幼い子どもに高額な教育を受けさせるための環境を整え、子どもに多くの習い事をさせている。

共働きの親にとっては子育てと仕事の両立が課題で、家庭学習などに苦労することもあり、教育へのストレスで家族関係にも影響が出ている。

時代の流れや家庭環境により、教育への考え方や取り組み方が多様化する中で、親や子どもたちが適切なバランスを見つけることが重要とされている。

(要約)

( 263821 )  2025/02/11 18:07:46  
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写真:iStock 

 

受験の若年齢化が進む日本、特に大都市圏では小学校の受験も珍しくなくなった。私立学校の教育水準の高さや独自のカリキュラム、さらには親の教育熱心さもまたその加速に拍車をかけているようだ。 

 

東京都では、毎年2万人前後の子どもたちが受験。慶應義塾幼稚舎や早稲田実業学校初等部、青山学院初等部など、いわゆる有名私立小学校では年々受験者数が増加しているという。 

 

これら有名私立に合格するには、一般的に多額の費用がかかるとされ親の財力が大きく影響すると言われている。 

 

総務省の就業構造基本調査(2022年)によれば、30代の子育て世代の世帯年収中央値で見ると全国では約690万円に対し東京23区内では約1000万円と、およそ300万円もの開きがある格好だ。 

 

特に世帯年収の高い家庭においては、教育を「投資」として考える傾向が高いと見られている。有名大学への進学や一流と言われる就職先への道が開かれるチケットにはまず学歴は必須という視点で考える親も多いと聞く。 

 

そのため、幼い我が子に過度な期待をかけてしまい、それにプレッシャーを感じた子どもが過剰なストレスを抱えてしまって受験どころではなくなるといったケースも多いにあるようだ。 

 

「夫も私も偏差値60超えの都内の大学卒です。受験はとても大変でしたが、無駄なことだとは一切思ったことはありません。多額の教育費をかけてくれた両親にも感謝しています。有名大卒なので学歴フィルターも突破して、第一希望の会社に就職することができましたし」 

 

こう話すのは、5歳の一人息子を育てながら、正社員でフルタイムの仕事をこなすヨシコさん(仮名、37歳)だ。夫婦共働きで世帯年収は約1000万円。昨年には都内に新築の戸建てを購入した、比較的お金のある一家の主婦でもある。 

 

ヨシコさんと夫も中学受験経験者で、小学5年生ごろから大学入学までの17年間を勉強漬けの毎日で過ごしたそうだ。友人と遊びたい盛りの当時、ゲームやお出かけなど勉強以外の時間を制限される生活に”小さな不満”はあったものの、希望する学校に進むためには必要なことだったと今では理解できると話す。 

 

学力に高い意識を持つヨシコさん夫婦は、一人息子にも高い水準の教育を受けさせたい考えを強く持っている。特にヨシコさんのその熱量は、出産直後からはじまっていた。 

 

0歳時には知育系の幼児教室へ、4歳になると有名私立小学校の受験を見据えた教室に通わせ、ほかにも水泳、絵画、知育、運動教室も習わせている。その費用は毎月15万円ほどと高額で、しかも驚くのは5つの習い事はすべてヨシコさんの休みの日に通わせていることだ。 

 

「習い事に通わせているのは、もの心がつく前に学習習慣を身に着けてほしいからです。最初は学習系だけのつもりでしたが、教室を見学するとどれも魅力的でひとつふたつと増えてしまって。 

 

休みの土日を使って、朝から夕方までスケジュールはびっしり。送迎は主に私がやっていますが、友人とランチに行くときなど用事があれば夫が代わってくれます。 

 

平日は私たち夫婦は仕事で息子は保育園。なので休日はゆっくり休みたいし、子どもと遊びにも行きたいのが本音ではあるんですが、世間の教育事情は加熱するばかりで、のんびりなんてしていられません。 

 

これからの時代、ちゃんとした学力を身につけさせたければ、子どもを遊ばせることは難しいんじゃないでしょうか。正直ヘトヘトですが、息子の将来を思えば頑張るしかないと踏ん張っています」 

 

 

吉田みく著『誰にだって言い分があります』 

 

夫婦ともに中学受験を勝ち抜いたきた人生、いまの暮らしがあるのはそのおかげで、それを支えてくれた両親の愛情を理解できるからこそ自分の子どもにも与えたい。そんな意識がヨシコさんの話の端々からこぼれる。 

 

「私たちが10代の頃は中学受験は珍しいほうでしたが、今ではもう当たり前のように受験をするご家庭が増えていまし、年々激化が激しい。そんな状況ならば、小学受験をさせて中学受験を回避したほうがいいと思うようになったんです。 

 

ですが夫はやや複雑な気持ちのようで、『受験は中学からでいいんじゃないか』と言っています。金銭面と幼いのうちから満員電車で小学校に通わせることへの不安からです。 

 

でも私たちは共働きだし、一人っ子なのでお金ならなんとかなります。通学もしばらく通ったら慣れると思うんです。わが子も同じように中学から私立に進ませればいいと…。今の時代の流れから微妙にズレている夫にモヤモヤしてします。 

 

というのも、夫も小学校受験に前向きならば、私のモチベーションももう少し上がるのにと思っていて。学習系の習い事では必ず宿題が出るので、私だけでそれをこなすのがしんどい。 

 

苦手分野は家庭学習でカバーしなくてはいけないのですが、平日は仕事で疲れていてそれどころではないんです。でも、休日は習い事でいっぱいいっぱいで家庭学習をさせるには平日しかなくて。夫も業務多忙で、平日の家庭学習まで頼みにくいし、保育園の送迎で精一杯な状態です」 

 

平日の時間をどうにかやりくりして、勉強を教えようとしたが、余裕のなさからイライラしてしまい、子どもに強く当たって泣かせてしまったこともあった。いまは、家庭学習が上手くいかなかったことがトラウマとなり、勉強を教えることが億劫になっているという。 

 

「学生時代の我が家の様子を振り返った時、状況が全然違うことに気づきました。父親は公務員、母は専業主婦。直接母から勉強を教わった記憶はありませんが、落ち着いた環境で勉強に打ち込めていました。 

 

自分が育った余裕のある環境で子育てをしたいと強く思いましたが、夫だけの収入では今のような経済的に恵まれた暮らしは厳しい。私が専業主婦になれば、小学受験どころか中学受験も金銭的に無理でしょう」 

 

そんなヨシコさんだが、さらにまた別の問題が浮上する。学習塾の平日授業の開始だ。 

 

今の状態でもいっぱいいっぱいのヨシコさんだが、それでも諦めたくないと言うには意外な理由がある。その詳細を<「ママ、行きたくない」…ぐずる息子、意見が食い違う夫「教育沼」に落ちた、共働きの妻「家族の亀裂」の危ないサイン>でお伝えする。 

 

吉田 みく(ライター) 

 

 

 
 

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