( 264049 )  2025/02/12 05:37:01  
00

2025年1月30日、スズキが発表した「ジムニー ノマド」は、初のジムニー5ドアモデルで4日で5万台の受注を獲得し、大ヒットとなった。

ジムニーは元々3ドアクロスカントリー車として人気だったが、ファッションアイコンとしての需要の増加やファミリーユースの要望から5ドアが求められるようになった。

スズキはバランスを保ちつつ機能性を拡張し、ジムニーらしさを維持するために、設計全体を見直し、新しいジムニーを作り直す作業を行った。

(要約)

( 264051 )  2025/02/12 05:37:01  
00

2025年1月30日、スズキが発表した「ジムニー ノマド」。日本初となるジムニーの5ドアモデルは、発売からわずか4日で5万台の受注を受け、オーダーストップとなるほどの爆発的な人気を見せた。 

 

もともとコンパクトな3ドアのクロスカントリー車として長年愛されてきたジムニーに、なぜ今5ドアが必要とされたのか? そして、スズキはこの新たなモデルを開発するうえで、どのような課題に直面したのだろうか? 

 

エスエスシー出版  ジムニー物語第1巻 ホープスターON型4WDとスズキジムニーLJ10の誕生   

 

今でこそスズキを代表する一台となったジムニーだが、意外にもその誕生はスズキの手によるものではなかった。 

 

その原型は、ホープ(ホープ自動車)が1967年に開発した「ホープスター ON型4WD」に遡る。後にゲームセンターでよく見た「ワニワニパニック」を製造していた会社だ。 

 

ホープ自動車は当時としては画期的な小型オフロード車を開発したが、経営難によりこのモデルをスズキに売却。スズキはこれをベースに独自の改良を加え、1970年に初代「ジムニー LJ10」として発売した。 

 

以来、ジムニーは4代にわたって進化を遂げてきた。その中でも、「コンパクトな3ドアであること」はジムニーの絶対条件だった。それゆえに、スズキは5ドアモデルを開発する予定すらなかったのだ。 

 

ジムニーは、「機能に徹したデザイン」を掲げる本格オフローダーだ。しかし近年のSUV市場では「街乗りSUV」としての需要が急増している。 

 

「スズキ・ジムニー ノマドのすべて」(三栄書房、2025) によると、かつてのジムニーユーザーは、林業や建設業など本当に4WDを必要とするプロフェッショナル層が中心だった。しかし、2018年の4代目ジムニーからは「このスタイルが好きだから」という理由で購入する人が増えた。 

 

レトロでミニマルなボクシーデザインは今のデザイントレンドとも合致し、アウトドアブームの後押しもあって、もはやファッションアイコン的な存在となった。その結果、より実用性を求めるユーザーの声が増えたのは自然な流れだった。 

 

ジムニーはもともと2ドアレイアウトのため、後席へのアクセスが悪く、ファミリーユースには向いていなかった。特にアウトドア需要が高まる中で、荷物の積載性や後席の快適性を求める声は日に日に大きくなっていた。 

 

 

スズキにとって、5ドア化は大きな賭けだった。元々想定していなかったデザインを拡張することは、単にパーツを付け足して延長すれば解決する話ではないからだ。 

 

たとえば、コンパクトなリュックにあとから「もっと荷物が入るように」とサイズを変更した場合、単に布の面積を延長するだけでは、背負った際に全体のバランスが崩れてしまう。それと同じで、ジムニー5ドアの開発は「元のバランスを崩さずに機能性を広げる」ことが求められた。 

 

ジムニーの最大の特徴は、小回りの良さと悪路走破性にある。しかし、ホイールベースを延長し、ボディを大型化すれば、これらのメリットは損なわれてしまう。 

 

では、スズキはどのようにして「ジムニーらしさ」を維持したのか?その答えは、単に5ドアを追加したのではなく、設計全体を見直したことにある。 

 

例えば、ホイールベースの延長に伴い、前席ドアのサイズを10cm短縮。これは間延びした印象を防ぐだけでなく、キャビン全体のプロポーションを最適化するための措置だった。また、ラダーフレームの補強やサスペンションの最適化により、走行安定性を向上させながらも、オフロード性能を維持することに成功している。 

 

これらは、単なるボディ拡張ではなく、「新しいジムニー」をゼロから作り直すに等しい作業だったと言えるだろう。 

 

山中将司[プロダクトデザイナー] 

 

 

 
 

IMAGE