( 264174 )  2025/02/12 15:15:16  
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元タレントの中居正広氏とのトラブルがきっかけでフジテレビが混乱状態に陥り、スポンサーが80社近く離れ、視聴率も低下している。

現在、米国の投資ファンドが取締役相談役の日枝久氏に辞任を求めており、第三者委員会の調査結果を待つ状況。

フジテレビは厳しい状況にあり、社外取締役たちが重要な役割を果たす可能性もある。

CMの復帰も人権侵害の疑いが晴れるまで難しい状況が続いている。

(要約)

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日枝久・フジテレビ取締役相談役(写真:ロイター/アフロ) 

 

 (放送コラムニスト:高堀冬彦) 

 

 元タレントの中居正広氏(52)と女性のトラブルに端を発し、フジテレビで混乱が起きてから約2カ月が過ぎた。 

 

 スポンサーは80社近くが去った。視聴率もジリジリと落ちている。民放は大きな不祥事を起こすとイメージが悪くなり視聴率が落ちる。最近では「『セクシー田中さん』問題」(2024年)を起こした日本テレビがそうだった。 

 

 フジの場合、港浩一前社長(72)が放送記者クラブのみを対象とする記者会見を行い、猛批判を浴びたのは1月17日で同第3週。この週の全日帯(午前6時〜深夜零時)の個人視聴率は2.3%だった。 

 

 在京キー局の中で4位。テレビ東京を除くと最下位である。同4週の全日帯は2.2%。4位であることに変わりはないが、数字が下がった。わずかに見えるものの、1週間単位の数字なので実際には大きい。 

 

 フジは今後、どうなるのか。 

 

■ 何度も「戦い」を越えてきた日枝氏のテレビマン人生 

 

 親会社であるフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の株を8%以上持つ米国の投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」は2月3日、FMHの取締役相談役・日枝久氏(87)に辞任を求める書簡を送った。日枝氏はこれを呑むのかというと「突っぱねる」(フジ関係者)という。 

 

 「それどころかダルトンと戦うつもりです」(フジ関係者) 

 

 日枝氏は戦うことが嫌いではない。1992年には当時のフジ会長でオーナー一族だった鹿内宏明氏(79)をクーデターによって追い出した。 

 

 2005年にはフジの経営権を奪おうとしたライブドアの堀江貴は氏(52)と衝突し、経営権を守った。日枝氏のサラリーマン人生は闘争の歴史でもある。 

 

 日枝氏にとってダルトンの存在以上に大きいのは、第三者委員会の調査結果である。3月末までには出る。 

 

 「日枝氏は自分とトラブルが無関係であることが証明されると信じている」(フジ関係者) 

 

 だが難しいだろう。社長になってから36年。フジの企業風土のほぼ全ては日枝氏がつくり上げたと見て間違いないのだから。 

 

 「第三者委員会は2月末か3月上旬に、中間報告を出すとも言われています。まず、これに注目です」(フジ関係者) 

 

■ 「驚くほど厳しい」第三者委員会の調査 

 

 緩い調査だと誤解している人もいるが、実際には「驚くほど厳しく行われている」(フジ関係者)。委員長の竹内朗弁護士はこれまでに東京女子医大トップによる背任事件などを調べる第三者委員会に所属してきた。 

 

 なにより、竹内弁護士はあらゆる第三者委員会の報告書を精査し、格付けする委員会の事務局長なのだ。第三者委員会のお目付役というわけである。万一、自分で緩い報告書をつくったら、示しが付かないのである。 

 

 第三者委員会の中間報告、最終報告で、日枝氏とトラブルが関わっているとされたら、さすがの日枝氏も辞任しなくてはならない。そのまま日枝氏が辞めずに6月のFMHの株主総会に臨んだら、間違いなく大紛糾するからだ。 

 

 「それは日枝氏も避けたい」(フジ関係者) 

 

 株主総会前はFMHの7人の社外取締役がキーパーソンとなる。第三者委員会が日枝氏にも責任ありという結論を出したら、ただちに辞任を求めるだろう。 

 

 

 7人とは産経新聞相談役の熊坂隆光(76)、文化放送の齋藤清人社長(60)、キッコーマン取締役名誉会長の茂木友三郎取締役名誉会長(89)、総務省出身の吉田真貴子氏(65)たちである。 

 

 「産経新聞の熊坂氏は日枝氏の指名。日枝氏に弓を引くようなことはしません。齋藤氏の文化放送はフジサンケイグループの一員ですが、ニッポン放送と違ってフジとはやや距離がある。文化放送として約3%持つFMH株の価値を毀損させたくないから、現在のフジに一番厳しく見えます。社外取締役のリーダー格です。キッコーマンの茂木氏は日枝氏の長年の盟友ですが、早々とCMを引き揚げ、日枝氏と距離を置くようになった。日枝氏に勝ち目はないと思ったのではないですか」(フジ関係者) 

 

■ 新任の清水社長も「暫定政権」 

 

 社外取締役が日枝氏に辞任を促す場合、齋藤氏が先頭に立つことになるだろう。同時に日枝色の濃い取締役も一掃されるはず。つまり、ほぼ全ての取締役である。 

 

 日枝氏の独断専横を止められず、結果的に個人視聴率(全日)は4年度連続で4位、CM売上高も4年度連続で4位という大不振を招いてしまったからだ。現在のフジは民放で1人負けなのである。社員も現取締役陣の続投を望まないはずだ。 

 

 1月28日に就任したばかりの清水賢治社長(64)も日枝氏の指名である上、周囲が「暫定」(遠藤龍之介副会長)と念押ししているので、任期は株主総会までになるはず。 

 

 株主総会前に日枝氏が辞任しようが、それで終わりとはならない。日枝氏や西武百貨店出身の金光修FMV社長(70)らには株主代表訴訟という試練が待ちそう。 

 

 珍しい話ではない。紅麹の成分を含むサプリメントをめぐって、会社が大損害を蒙った小林製薬も香港の投資ファンドから山根聡社長(65)たちが約110億円の賠償を求める株主代表訴訟を起こされる見通しだ。 

 

 FMVの場合、2025年3月期のフジの放送収入は、従来予想から233億円も下回る見込みとなっている。これが訴訟の対象になるのではないか。株主が黙って損失を受け入れるとは思いにくい。 

 

■ フジ幹部の子息もワンサカの広告代理店 

 

 CMはいつ戻るのだろう。「電通、博報堂などの広告代理店はすぐにでも戻ってもらいたい。代理店マンたちも困っている」(日本テレビ関係者)。電通、博報堂にはフジの身内があちこちにいるから。余計に早くCMの正常化を図りたいだろう。 

 

 だが、CMの正常化はフジが人権侵害をしていないことが証明されない限り、難しい。人権侵害をしている企業に資金を出すと、今度はその企業がステークホルダーに糾弾されるからだ。 

 

 港浩一氏と元編成担当の専務で現在は関西テレビ社長の大多亮氏(66)は、女性と中居氏のトラブルを1年半も社内のコンプライアンス推進室と情報共有しなかった。さらに中居氏がMCの「だれかtoなかい」を継続した。 

 

 女性の人権よりビジネス面でメリットのある中居氏との関係を優先したと見られても仕方がない。このため、フジのCMはかなり長期間にわたって戻らない見通しだ。 

 

 1月18日にCMをいち早く引き揚げたトヨタは綱領で「人権の尊重」と謳っている。「事業活動に関わるすべての人々の人権の尊重」としている。クオリティカンパニーの大半は人権を大切にする。トヨタがCMを引き揚げるのは当然のことだったのだ。 

 

 

 一方、現在のフジにCMを出している少数派の企業も第三者委員会の調査結果が深刻なものだった場合、態度を硬化させる可能性がある。 

 

 制作費が枯渇したら、再放送を流すことなどが検討されている。利益はほとんどないものの、制作費はかからない。スポンサーが付いていないのに自腹で番組をつくるわけにはいかない。 

 

■ 立て直しの舵取りは誰が 

 

 深刻な状態にあるフジを立て直す新トップは複数の名前が社内で挙がっている。そのうちの1人がFMHの稼ぎ頭であるサンケイビル社長の飯島一暢氏(78)である。三菱商事出身で同社の衛星通信事業を手掛けていた。 

 

 1997年にフジ入り。2005年のライブドアによる買収騒動では企画調整局長として防戦に当たった。 

 

 「抜群に頭が切れて、腹も据わっている」(フジ関係者) 

 

 ただ、社長候補として名前が挙がっている人物には反対意見も強い。「女性アナたちと東京の白金のラウンジで飲むのが好きだった。時節柄、妥当とは思えない」(フジ関係者) 

 

 フジの迷走迷路はまだ続く。 

 

高堀 冬彦 

 

 

 
 

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