( 264309 )  2025/02/12 17:54:36  
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日本の人口減少が進む中、消費マインドが冷え込み、特に高齢者の消費が大きく影響を受けていることが明らかになっています。

高齢者は固定費を節約しやすいため、若い世代よりも消費支出の変動が少ない傾向があります。

特にコロナ禍による衝撃では、高齢者の消費が顕著に減少しています。

若い世代と比較すると、高齢者の教養娯楽サービスや一般外食などの支出の落ち込みが大きく、消費行動に明確な年代差が見られます。

高齢者の支出の減少が、全体の消費低迷につながっている一方で、若い世代の消費マインドにも大きな影響を与えています。

(要約)

( 264311 )  2025/02/12 17:54:36  
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写真:現代ビジネス 

 

人口減少日本で何が起こるのか――。多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 

 

100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。 

 

(※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです) 

 

外出する機会の減少が消費マインドの冷え込みに直結するのは当然である。総務省の「家計調査」(2020年度)からはお金を貯めこむ傾向も明確になっている。特別定額給付金も消費には回らず、可処分所得は前年度に比べて実質4.0%増えた。その一方で消費支出は4.7%減った。消費の縮小ぶりを「家計調査」(2人以上の世帯)で確認してみよう。 

 

2020年全体の消費支出をチェックしてみると、全年齢での1世帯当たり月平均の消費支出額は27万7926円だ。物価変動の影響を除いた実質で前年比5.3%減となった。落ち込み幅としては、比較可能な2001年以降で最大であった。 

 

これを年齢別で分析してみると、65歳以上は前年比4.4%減(月平均1万1014円減)となる。高齢者の内訳では65~74歳は4.6%減(同1万2498円減)、75歳以上は3.9%減(同8845円減)であった。これに対し、35~44歳は5.7%減(同1万7128円減)、50~59歳は6.9%減(同2万4315円減)だった。現役世代よりもむしろ高齢者のほうがコロナ禍の影響は少なかったことになる。 

 

だが、これを額面通りに受け止めるわけにはいかない。高齢者よりも若い世代のほうが総じて消費が活発である点を勘案する必要があるためだ。暮らしていくのに最低限必要な食費や医療費、光熱水費などの「固定費」は節約しようにも限界があり、コロナ禍のような非常時でも影響を受けにくい。収入が少ない高齢者のほうが消費支出全体に占める「固定費」の割合は大きくなりやすい。加えて、年金収入が主柱である高齢者は、若い世代に比べれば収入の変動幅が小さかったこともある。 

 

コロナ禍の影響を受けたのは、「固定費」以外の“自分の意思で使い道が決められる支出”だったのである。こちらは収入の多い若い世代のほうが消費実額も大きい。 

 

2020年の消費支出の落ち込みに年代差がつかなかったのは、若い世代の固定費以外の支出の下落率がこの程度で収まったということであろう。 

 

チェックすべきは固定費以外の支出について、世代を問わず消費意欲が衰えてしまった状況からの回復時間に年代差が見られるかどうかだ。 

 

高齢者の消費マインドの冷え込みが目立つ消費項目とは、高齢者が消費のリード役として一翼を担ってきた分野である。例えば、2020年の旅行を含む「教養娯楽サービス」への支出は25~34歳が前年比25.6%減、35~44歳が同27.8%減だったのに対し、65歳以上は同33.0%減となった。 

 

「一般外食」はさらに顕著で、25~34歳が同11.5%減、35~44歳が同22.1%減に対し、65歳以上は同31.9%減だ。「洋服」の場合には65歳以上は同18.8%減だったが、35~44歳は同9.5%減にとどまっており、差が開いた。 

 

2020年の消費支出が全体として大幅下落した要因は、感染の拡大に伴って旅行関連や外食、衣料品などの消費が年代にかかわらず落ち込んだことにあるが、高齢者がより引き下げていたことが分かる。 

 

2020年の対面型のサービスの主要項目である一般外食、交通、宿泊費、パック旅行の支出を合計して改めて比較してみると、世帯主が65歳以上の2人以上世帯は8895円で、2019年の1万6979円より8084円少なかった。率にして47.6%ものマイナスである。高齢者の中では行動的である65~74歳でみると、前年より9409円少なく48.1%減だ。 

 

これを若い年代と比べてみると、25~34歳は前年比25.6%減、35~44歳が同35.2%減、45~59歳が同36.8%減で、高齢者の突出ぶりは明確である。 

 

つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。 

 

河合 雅司(作家・ジャーナリスト) 

 

 

 
 

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