( 264349 )  2025/02/12 18:31:59  
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国が京都府で北陸新幹線の説明会を開く方針が決定したが、地元や市民から懸念が寄せられている。

京都府や京都市の要望や懸念があり、地元負担の軽減などが求められている。

特に、北陸新幹線のルートや環境への影響、地元の負担、市民の不安などが問題視されている。

国や整備委員会は説明会を通じて理解を得たいとしているが、反対の声が収まらず課題が残っている。

(要約)

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北陸新幹線(画像:写真AC) 

 

 北陸新幹線の京都延伸で国が京都府で説明会を開く方向となった。京都府市が延伸ルートに懸念を示し、計画が遅れているためだが、府民の理解を得るのは難しそうだ。 

 

「科学的知見に基づく情報を知っていただくことが重要。協力をお願いしたい」 

 

2025年2月10日、京都府庁で北陸新幹線与党整備委員会と京都府の西脇隆俊知事、京都市の松井孝治市長が面談した。整備委員会の西田昌司委員長は、国が京都府内で説明会を開催するにあたり、協力を求めた。 

 

 竹内譲整備委員会委員長代理や国土交通省鉄道局、鉄道・運輸機構の幹部が同席するなか、西脇知事、松井市長は協力に同意した。説明は建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が当たる形で、国交省と京都府市で日程などを調整する。 

 

 しかし、面談の席上、西脇知事は地元負担の軽減を要請、松井市長は 

 

「北陸新幹線を地元として要望しているわけでない。市民の体感的な納得を得る必要がある」 

 

とあらためて懸念を伝えた。 

 

米原駅の位置(画像:OpenStreetMap) 

 

 整備委員会が推進するのは、敦賀駅(福井県敦賀市)から福井県小浜市へ向かったあと、京都府内を南下し、新大阪駅(大阪市淀川区)へ至る小浜・京都ルート。京都府北部を山岳トンネル、京都市内の大半を地下40m超の大深度地下トンネルで通す予定だ。 

 

 だが、石川県では、敦賀駅から米原駅(滋賀県米原市)へつなぐ米原ルートの再考を求める声が高まっている。小浜・京都ルートを支持してきた馳浩石川県知事も、2月初旬の県政懇談会で次の選択肢に言及するなど発言内容に微妙な変化がうかがえた。 

 

 与党整備委員会は2024年中に京都市内に設ける駅の位置など詳細ルートを決定し、2025年度中の着工を目指していた。しかし、2024年末のヒアリングで西脇知事と松井市長が環境への影響や膨大な額とみられる地元負担などに懸念を示したため、京都市内の駅設置候補を2案に絞るだけで最終決定を先送りし、2025年度中の着工を断念した。 

 

 懸念解消の手段として打ち出されたのが、地元説明会の開催だ。しかし、整備委員会と西脇知事、松井市長の面談中、府庁前では計画を疑問視する市民団体が 

 

「もうやめときなはれ西田はん!」 

 

と書かれた横断幕を掲げ、反対運動を行った。与党整備委員会は説明会で西脇知事や松井市長の納得を得たい考えだが、前途多難が予想される。 

 

 

琵琶湖の約8割に達する大量の水があるといわれる京都盆地(画像:Batholith) 

 

 松井市長は12月のヒアリングで四つの懸念を挙げた。 

 

・地下水への影響 

・建設残土の処分地確保と運搬 

・工事中の交通渋滞 

・重い財政負担 

 

市民の不安を代弁し、整備委員会に懸念解消を求めた格好になる。西田委員長は記者会見や自身のユーチューブチャンネルで 

 

「科学的知見に基づく正しい情報が浸透していない。発表の場ができれば必ずご理解いただける」 

 

と自信を見せるが、反対の声は一向に収まらない。反対の声はルート周辺の住民だけでなく、 

 

・保守系の地方議員 

・経済団体 

・仏教界 

 

にまで広がった。大学の研究者ら専門家からも地下水への影響などで問題点を指摘する声が相次いでいる。 

 

 京都府南丹市美山町で反対運動をしている長野宇規田歌区北陸新幹線問題対策委員長は 

 

「リニアのトンネル工事で水枯れや道路陥没が発生している。説明会には反対しないが、府民の不安に真摯に回答しなければ、火に油を注ぐ結果になるのでないか」 

 

と指摘する。京都市議の間では「説明会を開いても議論は平行線をたどりそう。整備委員会が説明会開催をアリバイに強行突破を図れば、余計に事態が混乱する」と悲観的な見方もあった。 

 

シールド工事で周辺の井戸に影響が出た中京区の市営地下鉄烏丸御池駅(画像:高田泰) 

 

 府民の間では国交省が2024年夏の斉藤鉄夫前国交相時代から何度も記者会見で「地元に説明する」としながら、説明会が開催されなかったことへの不満がある。市民団体から再三、説明会を求める要望が国交省に出されたほか、西脇知事は記者会見で「開催を催促しないが、府民の懸念を解消してほしい」と繰り返し発言した。 

 

 京都市では2024年10月に講演会が開かれ、国交省幹部が計画を説明したが、この会は自民党京都府連の主催。対象者も府内の保守系首長や自民党地方議員に限定された。京都府交通政策課は 

 

「国交省が説明しても、あくまで政党の催し。国の説明会とは違う」 

 

としている。 

 

 国交省鉄道局はこれまで、国の説明会が開かれなかったことについて「整備委員会でさまざまな議論が続いていたこともあり、開催が遅れた。整備委員会と京都府市で意見がまとまった以上、丁寧な説明に努める」と述べた。 

 

「与党の決定を国が追認する意思決定の形」 

 

を疑問視する声もある。整備委員会やその上部組織となる与党プロジェクトチームは法律に基づく組織でなく、与党の私的な検討会にすぎない。 

 

 国には鉄道施策を担当する国交省政務官を事務局長とし、国交省の政務三役で構成する整備新幹線問題検討会議、総務、国交、財務3省の政務官でつくる整備新幹線問題調整会議があるが、機能していない。反対住民の目には与党内だけで話が進む姿が密室協議のように映る。 

 

 そして何より問題なのは国側の不誠実な対応だ。鉄道運輸機構は反対住民との交渉で回答を拒む場面が度々見られた。国交省が2024年10月に自民党京都府連に示した資料では、京都市営地下鉄東西線の地下トンネルをシールド工法で進めた二条(中京区)-太秦天神川(右京区)間で 

 

「周辺井戸への影響がほとんどなく、補償件数ゼロ」 

 

と記載している。 

 

 しかし、京都市交通局が過去の資料を整理したところ、確かにこの区間で補償はなかったが、それより東のシールド工法区間で101か所の井戸に補償したことがわかった。都合の悪い質問に答えず、黒を白といいくるめる対応では府民の理解を得られまい。これまで通りの対応を続けると、説明会が小浜・京都ルートの“墓標”となりかねない。 

 

高田泰(フリージャーナリスト) 

 

 

 
 

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