( 265564 )  2025/02/15 06:22:16  
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2024年の猛暑後、2025年の冬は積雪が予想されていたが、雪が降らない地域でも積雪があり、冬用タイヤの重要性が再び話題になっている。

スタックした車のほとんどがノーマルタイヤであり、冬用タイヤの着用率が低いことが問題となっている。

冬用タイヤの装着には費用がかかることや雪の積もり具合を予測する難しさなどがあるが、冬用タイヤの重要性は交通安全だけでなく、経済面でも重要である。

(要約)

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スタッドレスタイヤで走るイメージ(画像:写真AC) 

 

 最近、各地で大雪に関するニュースが話題になっている。2024年の猛暑を受けて、2025年の冬は積雪が多くなると予想されていたが、例年雪が降らない地域にも降雪があり、予想外の影響を与えている。雪に関するニュースが流れると、必ず報じられるのが積雪によって進めなくなり、立ち往生している車の映像だ。先日も、神奈川県箱根で山道途中の道路で立ち往生している車が映し出されていた。 

 

 この状況は「スタック」と呼ばれ、スタックした車のほとんどがノーマルタイヤで走行していたという。近年、スタッドレスタイヤなどの冬用タイヤが普及し、国土交通省をはじめ多くの関係機関が冬季に早めに冬用タイヤを着用するよう呼びかけている。それでも、依然として冬用タイヤを装着せずに走行し、雪道でスタックする車が後を絶たない。 

 

 雪道で車がスタックすると、当然交通に影響が出る。それが経済的な損失にもつながる。実際、2018年1月には首都高速で山手トンネルの西新宿JCTから大井JCTまでの約12kmで約10時間もの立ち往生が発生した。この原因は、トレーラーがジャンクションの坂道でスタックしたことにあり、トレーラーはチェーンを装着していたが、タイヤはノーマルタイヤだった。 

 

 2025年2月現在、日本の道路では冬になると積雪によってスタックする車が各地で発生しており、そのほとんどが冬用タイヤを装着していないという現実が続いている。なぜ、これほど話題になっているにもかかわらず、いまだに冬用タイヤの着用率が低いのか、また、道路でのスタックがもたらす経済的影響について考える必要がある。 

 

東名高速道路で冬用タイヤを使っている車の割合は低い(画像:都野塚也) 

 

 ニュースでも繰り返し取り上げられ、国土交通省やNEXCOからの呼びかけが続いているにもかかわらず、多くの人が冬用タイヤを装着しない理由は幾つかある。 

 

 一番大きな理由はコストの問題だ。冬用タイヤを装着するには予想以上の費用がかかる。主な費用はタイヤ購入代、交換作業代、そして保管代だ。 

 

 冬用タイヤを購入しなければならないが、その価格は車種や性能によって異なる。普通車であれば、安いものでも4本セットで約5万円、性能が良い高級タイヤでは10万円以上かかることもある。さらに、タイヤ交換作業を自分で行う場合は交換キット代のみで済むが、専門業者に依頼すると、2万円前後の費用が必要となる。 

 

 また、ノーマルタイヤとスタッドレスタイヤの両方を保管しなければならないが、保管場所に余裕があれば自宅で保管できる。しかし、外に保管する場合、気温の変化や日差し、雨、雪などによってタイヤが劣化しやすく、耐久性が低下するリスクがある。そのため、保管場所を借りる場合は保管代が発生し、決して安くはない。 

 

 また、雪の積もり具合を予測するのが難しいことも大きな要因だ。特に、普段雪が降らない地域に住んでいる人々にとって、雪の降り方を予測する経験が少ないため、冬用タイヤが必要かどうかを判断するのが難しい。実際、普段雪が降らない地域ほど、冬用タイヤの着用率は低くなりがちだ。 

 

 2024年末にNEXCO中日本東京支社・八王子支社が実施した調査によると、東名高速道路では冬用タイヤ未着用率が 

 

「69.5%」 

 

に達し、中央道・長野道では17%だった。雪が少ない地域を通る東名の低い着用率が目立つが、最近では神奈川県箱根でも積雪が観測されており、周辺地域で積雪のリスクがあることを考えると、やはり冬用タイヤの着用は重要だ。 

 

 

路面が凍結している冬の高速道路(画像:写真AC) 

 

 積雪による車のスタックが道路で立ち往生すると、交通マヒを引き起こすだけでなく、経済的な損失にも繋がる可能性がある。日本は世界的に見ても豪雪地帯として知られ、人口が多い豪雪地帯という点では他国と比べて特異な存在だ。この事実は意外かもしれないが、雪に対する準備や対応が甘くなる原因のひとつは、この事実を知らない人が多いためではないだろうか。 

 

 例えば、古いデータではあるが、2012(平成24)年の新潟県で「大雪による道路通行妨害」による走行損失は約12億円に上る。この金額だけでもかなりの規模だが、経済的損失には他にもさまざまな要因があり、実際の損失額はさらに大きいと考えられる。雪による経済的ダメージの主な要因は、渋滞や事故、物流の遅延、そして通勤や業務の混乱だ。 

 

 まず、渋滞や事故が挙げられる。雪による車のスタックは、立ち往生だけでは済まず、二次災害として事故を引き起こすリスクもともなう。渋滞や事故は交通のマヒを引き起こし、経済損失時間として失われた時間は計り知れない。 

 

 次に、物流の遅延がある。雪で立ち往生した物流トラックは、商品の配送予定時刻に大幅な遅れを生じさせる。これにより、スーパーやコンビニの商品が急激に欠品する、あるいは郵便物が届かないといった状況が発生することは、誰もが経験しているだろう。 

 

 また、通勤や業務の混乱も深刻な影響を与える。雪によるスタックで交通がマヒすれば、通勤や業務にも影響が出る。実際、大雪の日には出勤できた者もいたが、他の社員は道路の停滞や電車の運休によって、事実上出勤できなかった。そのため業務にも影響が出て、その日のみならず、後日にしわ寄せがいき、長期的な負担が生じることもある。 

 

提案イメージ(画像:写真AC) 

 

 雪による車のスタックと立ち往生は、さまざまな影響を及ぼす。運転者がその影響を理解し、雪に備えるための対策を講じる必要があるが、今後どのように進めていくべきかが課題だ。 

 

 まず、啓発活動の強化が求められる。国土交通省やNEXCOはすでに冬用タイヤの着用を呼びかけているが、その効果はまだ十分ではない。CMやポスターを活用し、さらに冬用タイヤの重要性を強調する必要がある。 

 

 とはいえ、冬用タイヤの購入には一定の費用がかかる。そこで、国や自治体による冬用タイヤに関する補助金や助成金制度の導入が望ましい。現在の日本の道路事情において、冬用タイヤの着用は非常に重要だ。 

 

 私(都野塚也、ドライブライター)は運輸業界で働いており、冬用タイヤの重要性について理解しているが、業界以外の人々や運転機会の少ない人々は、冬用タイヤの必要性すら理解していないかもしれない。企業が社員に対して冬用タイヤの着用を推奨する活動も有効だろう。いずれにせよ、冬用タイヤの重要性を広く認知させることが最優先事項だ。 

 

豪雪の高速道路(画像:写真AC) 

 

 冬用タイヤの着用は、交通の安全を守るだけでなく、経済的な面でも重要だ。しかし、冬用タイヤの購入には費用がかかるため、その対策は個人に任せるのではなく、国や自治体が支援すべきだ。 

 

 雪が降る期間は予想以上に長く、11月から4月にかけて雪が降る地域もある。実際、大学の入学式の時期に粉雪が降った経験があるため、冬用タイヤを早めに装着し、できるだけ長期間使用することが大切だ。 

 

 冬用タイヤの重要性を理解し、危険が高まる冬季の道路を、安全で快適に運転できるように心掛けることが必要だ。 

 

都野塚也(ドライブライター) 

 

 

 
 

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