( 266289 )  2025/02/16 18:11:13  
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66歳の元会社員で年金受給を繰下げた結果、想定外の体調不良や収入減で計画が白紙になった事例が紹介されています。

年金は65歳から受給可能で、繰上げや繰下げもできます。

繰下げにより受給額が増えるため、長い老後への備えとして魅力的に思えますが、計画倒れになる可能性もあることが示唆されています。

繰下げにはメリットだけでなくデメリットもあり、慎重に検討が必要です。

(要約)

( 266291 )  2025/02/16 18:11:13  
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年金を増やして長い老後に備えます…年金月11万円・貯金1,200万円・66歳元会社員の誤算。「年金繰下げ」を決断も、想定外の事態で計画白紙に「自分のことを過信していました」 

 

年金は基本的に65歳から受給できますが、繰上げ・繰下げも可能です。特に年金が増額する繰下げは、長い老後を考えるとメリットが多いように思えます。しかし、繰下げ前提で老後の計画を立てても、想定外のことが起こることも……。 

 

まずは簡単に年金制度からおさらいしましょう。日本国内に在住している20歳以上60歳未満の人は、公的年金の制度に加入して年金保険料を納める義務があります。 

 

自営業者やフリーランスは国民年金に、会社員や公務員は国民年金と厚生年金に加入します。基本的な受給開始年齢は65歳ですが、65歳より前(最大60歳)まで繰上げて受け取ったり、65歳より後(最大75歳)まで繰下げて受け取ったりすることもできます。 

 

繰上げをすると受給額は減少し、繰下げをすると受給額は増えます。このうち、繰下げについては、1ヵ月繰下げるごとに0.7%増加。1年間では0.7%×12ヵ月=8.4%増えます。 

 

この計算で5年間繰下げすると42%増加、最大の10年繰下げると84%も増加します。例えば、65歳から受給できる年金額が月10万円の場合、5年間繰下げすることにより月14万2,000円の受給額に。10年繰下げると月18万4,000円になります。 

 

年金は自動的に振り込まれるのではなく、自分で年金受給開始の手続きをする必要があります。そのため、65歳になって年金受給の権利がある人が繰下げをしたい場合、年金受給の申し込みを行わないことで、65歳より後に受給することができます。 

 

繰下げは、国民年金(老齢基礎年金)、厚生年金(老齢厚生年金)それぞれ分けて適用できるので、片方を通常通り65歳から受け取り、もう一方を繰下げることもできます。 

 

繰下げによる年金増額の割合は、この低金利自体においてかなり大きく魅力的ですが、受給のない期間(待機期間)の見通しが甘いと、計画倒れになることも。例えばこんなケースです。 

 

 

年金を5年繰下げると5年で年金が42%増える。これはかなり魅力的な数字です。元会社員の松山和夫さん(仮名・66歳)もそう感じた1人でした。 

 

松山さんの年金額は月11万円程度。また、働いていた会社には退職金制度がなかったため、コツコツと給料やボーナスから貯めた約1,200万円が貯蓄のすべてでした。 

 

家賃も含めて毎月16万円程度で暮らすとしても、月々5万円、年60万円の赤字です。1,200万円あれば20年間持つ計算ですが、月16万円で収まらない月も出てくるだろうし、単身の松山さんにとって安心な金額ではなかったといいます。 

 

そんな時に知った繰下げの仕組み。70歳まで繰下げれば、月15万6,200円ほどになります。松山さんは、早々と引きこもっても仕方ないからと元々70歳ぐらいまでは働くつもりでした。 

 

年金をもらわない5年間をアルバイトの収入で乗り越えれば、残りの人生はぐっと楽になる……そう思い、65歳になっても年金受給開始の申請はしませんでした。 

 

ところが、66歳になってすぐの松山さんの身体に異変が。胃癌が見つかったのです。手術を受け退院したものの、体調や精神面の不安などが影響して事故があっては大変だと、収入を得るために請け負っていた介護施設の送迎のアルバイトは、いったん休むことに。 

 

「自分が長生きするとは限らない」という事態に直面したこともあり、5年の繰下げは早々と撤回。老齢年金裁定請求書を提出し、繰り下げた分だけ増額した年金を受け取り始めました。 

 

「日本人は癌になる確率が高いとはわかっていたんですが、自分事では考えていなくて……。過信しすぎていました。長生きしたらということばかり考えていましたが、今は逆になっちゃいました」そう話す松山さん。年金については、わずかな増額ではあるものの、受給のありがたみを感じているとか。 

 

このように「ここまで繰下げれば〇〇円に年金が増えるから……」そんな風に計画を立てても、想定外のことが起こることもあります。 

 

繰下げをやめたければ申請書を提出することで受給できるので、取り返しのつかないことにはなりませんが、「繰り下げて、受給のない期間は働いて埋める」といった老後の資金計画は頓挫する可能性があることは認識しておく必要があります。 

 

また、繰下げには「年金が増額すると税金や社会保険料の負担が増えるので、手取りでは42%などの増加は得られない」「受給開始が遅くなる分、ある程度長生きしなければ得をしない(損益分岐点)」といったデメリットがあります。 

 

結婚している場合、「年下の妻がいる場合に通常は対象になる加給年金が受け取れない」「夫の死後に妻が受け取る遺族厚生年金の額は、65歳時点の年金額を基に計算するため繰下げで増えた分が反映されない」といった注意点も。繰下げについては、メリット・デメリットをしっかり把握したうえで検討するとよいでしょう。 

 

THE GOLD ONLINE編集部 

 

 

 
 

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