( 266724 ) 2025/02/17 17:33:36 1 00 日本の中華・ラーメンチェーン「餃子の王将」が2月14日から値上げを実施した。 |
( 266726 ) 2025/02/17 17:33:36 0 00 写真:現代ビジネス
日本最大の中華・ラーメンチェーンである「餃子の王将」が2月14日から前年6月以来の値上げを実施した。
2023年、2024年と2年間で実に4回の値上げを実施したが、コスト上昇分を吸収できず、ここにきて再値上げに踏み切った形だ。値上げしても業績好調を維持したままの状態だった餃子の王将だが、今回の値上げで客足に変化はあるだろうか。
人手不足で苦しむ外食業界で、「餃子の王将」はその値上げした分を、確実に賃上げの原資にしており、人を大切にする企業としてのイメージ向上にもつなげている。
'24年の春季労使交渉で、基本給を底上げするベースアップと定期昇給などを合わせて平均月額3万9162円と過去最高の賃上げを実施した。しかし、賃上げはしたものの、原材料費、物流費、光熱費等の高騰分を補うまでには至らなかったとの理由で、今回の値上げに踏み切るようだ。
対象は、定番商品であり、特に米と小麦粉の高騰から麺飯類の値上げが目立っている。しかも、値上げ額が165円と大きなラーメンもあり、他も100円以上の値上げ品が多い。
「今までが安かったんだから仕方ない」と顧客が今まで通り来店してくれるだろうかが今後の見物だ。おそらく、値上げに対する顧客の不満を販促関係で補完し、お得感と満足感を出して客数減を回避してくると筆者は予想する。
外食業界は全体的に、物価高騰・円安・賃金上昇・水光熱費の上昇などコスト負担が増加傾向にあり、依然として厳しい状態にある。餃子の王将もその同じ環境下で運営しているが、順調に業績を伸ばしている企業の一つだ。
同社は基本であるQSC(クオリティ・サービス・クレンリネス)向上に一層努めたことに加え、新テレビCMの放映や「ぎょうざ倶楽部」お客様感謝キャンペーンを中心とした各種企画を効果的に実施している。そして、店内外の販促を強化して124万名の「ぎょうざ倶楽部」の会員数を獲得している。
こういった積極的な取り組みの結果、直営既存店実績('24年4月~12月)は売上106.5%、客数101.2%、客単価105.2%と軒並み増加している。直近の繰り返しの値上げにもかかわらず、客離れを起こさないどころか、FC(出荷)売上を含む全社売上は、35ヵ月連続で同月比過去最高を更新している。
結局のところ、「町中華ブーム」を追い風に、個人中華店と比較しても、まだまだ安く美味しい中華を食べられるからと顧客は餃子の王将に満足しているようだ。
なお、価格改定を行った商品については単なる値上げではなく調理の改良点とどこが変更されたかをわかりやすく説明しているなど、同社の顧客ファーストの姿勢は変わっていない。今後の原材料価格の趨勢を見極めながら、適正利益の確保に向け、次なる対策を講じているようだ。
ではここから、餃子の王将が値上げしても客離れを起こさない「強さ」について、個々の要素から検証していこう。
商品は、標準化した万人受けする味つけとなっている。少量サイズも拡充しており、追加点数を上げて客単価向上を狙っているようだ。なお、価格は、元々が安かったが、今回の値上げで町中華店との価格差は少なくなっている。
接客サービスは、フレンドリーな接客である。ロボットにはできないホスピタリティある接客を目指す餃子の王将。外部講師を招いて接客トレーナー研修の実施、清掃マニュアルのブラッシュアップによる徹底した衛生管理など従来の弱点克服に力を入れている。
また、餃子の王将を語る上で忘れてはいけないのが、チェーンとしての統一性を遵守しながら、地域の店舗ごとに個性を発揮している点だ。
店の基本姿勢としては、餃子の王将はチェーンとしての基本は守りながら、各地域のニーズに合致したオリジナルメニューの販売など、店舗にも独自のメニュー開発する権限を委譲し、従業員のやる気を引き出している。
また、可能な限りお客さんの要望も受け入れ、一定の範囲で顧客の要望を聞き入れたカスタマイズ化にも対応している。
ちなみに同じ看板でも店によってばらつきがあるのも特徴の一つだ。餃子の王将は、同じ看板であっても、立地タイプや店舗規模に大きなばらつきがあり、そこにフランチャイズも加わり、経営形態も違うから、店によって差が出ている。そこに魅力を見出す顧客も少なくない。
中華チェーン業界を見渡すと、店舗数ランキングでは1位が餃子の王将の724店舗(2024年12月末時点)で、2位のバーミヤン363店(2025年1月時点)とは、実に倍の差がある。
普通に考えれば、業界のプライスメーカー(価格決定者)として慢心になってもおかしくないのだが、そこは餃子の王将、おごりは一切無い。
店舗開発にしてもそうだ。中長期的視野に基づく経営戦略の一環である新市場開拓戦略として、新コンセプト店「GYOZA OHSHO」(現在4店舗)を出店。女性の視点と感性を発揮させた「王将女子チーム」による、女性をメインターゲットとした店舗だ。今後もマーケットニーズに合わせて、合致した業態開発をしていくという。
相次ぐ値上げで、もう行かないという選択肢もある。それでも餃子の王将に引き寄せられてしまうのは、このように市場における絶対的な「存在感」があり、顧客のブランドロイヤリティは高いからだ。
中華が食べたい=餃子の王将へ。この根強いイメージがある限り、たとえ値上げしようとも、しばらくは餃子の王将の地位は盤石であり続けるだろう。
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中村 清志(中小企業診断士・中村コンサルタント代表)
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