( 266979 )  2025/02/18 05:15:25  
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ホンダと日産の経営統合が破談に終わった経緯が報じられている。

ホンダの三部社長は会見で、完全子会社化案への方針転換を明らかにし、日産の内田社長もこれに反対しました。

経営の自由奪取や株式交換手法に対する反感が一因とされる中、今後の再編や新たな戦略提携に期待が高まっています。

(要約)

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(写真:読売新聞) 

 

 「合意が撤回される可能性も考えたが、それ以上に恐れることは統合が遅々として進まず、より深刻な状況に陥ることだ」 

 

 13日午後5時頃、ホンダ社長の三部敏宏は都内でオンライン記者会見に臨んだ。共同持ち株会社を新設する経営統合ではなく、完全子会社化という強硬策に出た理由を明かした。 

 

 約1時間後、横浜・みなとみらい地区の日産自動車本社。社長の内田誠は子会社化案に対し「日産の潜在力を最大限引き出せるのか、確信を持つに至らなかった」と険しい表情を見せた。 

 

 昨年12月23日、両社は経営統合に向けた基本合意を交わした。三部と内田はそろって会見を開いた。それから、わずか50日余り。20キロ・メートル以上離れた場所で2人は別々に「破談」を発表した。 

 

 子会社化案は、ホンダが日産の経営権を完全に掌握することになる。当初うたったはずの「対等」とは全く異なる。日産幹部は「狂気の判断」と憤慨する。内田も会見で「両社とも非常に歴史がある」と不快感をのぞかせた。三部は「電気自動車(EV)で先行する会社があり、時代はどんどん進む。会社を作ることに労力を割いている場合ではない」と淡々と語った。 

 

 両社は、EVなどでの協業検討は継続する。一度、生じた溝を埋めることができるのか。交渉を見守っていた大手銀行幹部は嘆く。「もうよりを戻すことはないだろう」(敬称略) 

 

 賛成2票――。 

 

 2月5日、横浜市の日産自動車本社で開かれた取締役会。論点は、ホンダが提示した日産を完全子会社化する案を受け入れるかどうか。12人の取締役のうち、受け入れに賛成したのは2人だけだった。 

 

 「驚いた」「おかしい」。社長の内田誠もホンダへの不信感をにじませ、反対票を投じた。 

 

 経営の自由を奪われることへの反発に加え、「株式交換」と呼ばれる子会社化の手法も日産側の反感を買った。株式交換は、例えばホンダ株1株に対し日産株10株を交換するイメージだ。 

 

 企業買収に用いられる株式公開買い付け(TOB)では、直近の株価に2~3割程度のプレミアム(上乗せ価格)を付けるのが一般的だ。日産株の約36%を保有し、高値売却を目指す仏ルノーは13日、「(ホンダの提案には)株価への上乗せ対価が含まれておらず、受け入れられるものではなかった」とコメントした。 

 

 

 日産経営陣は、財務面を支援するメインバンクのみずほ銀行に対しても疑心暗鬼に陥った。 

 

 みずほ側は水面下でホンダと接触し、日産が反対する子会社化を後押ししていた。日産単独での経営再建が暗礁に乗り上げれば、国内だけで1万社を超える日産グループの取引先に影響が及ぶことを懸念した。大手銀首脳は「日産は取引先をないがしろにしていないか」と不満を隠さない。 

 

 取締役会翌日の6日午前。内田は、都内のホンダ本社を訪問。出迎えた社長の三部敏宏や副社長の青山真二らに切り出した。「(子会社化に)イエスとは言えません」。三部は「そういうことですね」と応じ、協議はわずか1か月半で幕を下ろした。 

 

 三部は13日の記者会見で、当初の持ち株会社案では「会社が複雑な形態を持つ。議論に時間を要し、判断のスピードも鈍る」と子会社化提案の意図を語った。 

 

 破談は、次なる再編の呼び水となる。 

 

 5日の日産の取締役会では、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業との提携容認論も浮上した。海外自動車大手との協業も水面下で模索しているという。ある国内自動車大手の首脳も日産に「困ったことがあれば」と秋波を送った。 

 

 内田は13日、「新たな戦略提携を積極的に模索する」と述べた。三部は「日産へのTOBは考えたことがない」と話すが、国内外の第三者が日産に触手を伸ばす可能性は高まっている。大手銀幹部は話す。「第2ラウンドのゴングは、もう鳴っている」 

 

 もっとも、ホンダと日産の両首脳は足元を固める必要もある。一連の統合協議はそれぞれの社内に混乱を広げた。 

 

 日産内では、急速な業績悪化に伴って大規模リストラに追い込まれていることについて、「無策な経営陣による人災だ」(幹部)と不満も高まっている。 

 

 ホンダ内部でも、業績好調な二輪事業部門を中心に、統合には反対派が多数を占めていたとされる。ある中堅技術者は「大勢の人が振り回された。首脳陣の求心力低下は不可避」と話す。 

 

 

 三部と内田は「単独での生き残りは難しい」と繰り返してきた。新たな戦略を早期に示すことが急務だ。(敬称略) 

 

 国内2位と3位による「世紀の統合」は破談に終わった。協議の裏側と、今後の展望を追う。 

 

 

 
 

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