( 267649 )  2025/02/19 17:20:04  
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2月16日に発表された石破茂内閣の支持率は30%で2ポイント増加し、2カ月ぶりに回復したが、政権は迷走を続けている。

与党が衆院で過半数を確保できなかったことや首相の国家ビジョンの不明確さが問題とされている。

与野党は2025年度予算案の議論を行っており、立憲民主党や国民民主党、日本維新の会などが予算案の修正や協議を進めている。

予算案の修正や成立に向け、野党の協力が不可欠である。

 

 

野党は物価高対策や社会保障改革などを提案しており、主要野党3党は教育無償化や暫定税率の廃止などで一致している。

野党は政府・与党に対して修正案を提出し、協議を進めているが、主導権争いが続いている。

また、石破首相の訪米成果やトランプ大統領との会談についても野党との評価が分かれており、日米同盟や経済政策などに関する議論が進んでいないとの指摘もある。

 

 

今後の予算案の承認と政治の進展において、野党の役割や自覚が問われている。

(要約)

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(c) Adobe Stock 

 

 毎日新聞が2月16日に発表した石破茂内閣の支持率は1月より2ポイント増の30%で2カ月ぶりに回復した。しかし、石破茂政権の迷走は止まらない。昨年秋の総選挙で大敗し、与党が衆院で過半数を確保できなかった事情はあるものの、明確な国家ビジョンを持たない首相の姿勢も加わり「決められない政治」が続いているのだ。一方、好機を迎えたはずの野党も主導権争いに終始し、活路を見いだせていない。経済アナリストの佐藤健太氏は「今の政治状況は野党が一丸となれば何でもできる。一体、野党はいつまで寝ているつもりなのか」と厳しい。 

 

 デッドラインは3月2日―。国や地方自治体、国民生活に直結する2025年度予算を今年度内に成立させるためには、憲法の規定で3月2日までの衆院通過が欠かせない。単独で可決することができない与党は立憲民主党や国民民主党、日本維新の会などの賛成を取り付ける必要があり、予算案の修正を含めた協議を重ねている。 

 

 野党第1党の立憲民主党は「予算を人質に取るやり方は国民生活を考えれば望ましいことではない」(野田佳彦代表)として物価高対策などを盛り込んだ予算修正案を示し、与党との協議を進める。高校授業料の無償化や社会保障改革を唱える維新は、与党が提示した無償化スキームについて検討。国民民主党は「年収103万円の壁」見直しを突き付け、政府・与党はデッドラインを前に苦渋の判断を迫られる。 

 

 2月13日の衆院予算委員会で立憲の重徳和彦政調会長は「与党が過半数割れした衆院はムダな予算を国民生活応援の予算に置き換える議論をする格好の場だ」と指摘した。まさに、その通りと言えるだろう。会計検査院は昨年11月、無駄や改善が必要な税金の使われ方が345件・約650億円に上ると指摘したが、政府・与党が衆院で過半数を確保できていない今の状況は「ムダ撲滅」の絶好のチャンスと言える。 

 

 だが、残念でならないのは野党同士で主導権争いをしているように映ることだ。繰り返すが、自民党と公明党、同調する無所属議員を足しても過半数に満たないということは、逆に言えば「野党系」が一丸となれば法案を可決し、成立させることが可能となる。もちろん、「野党系」にも保守系からリベラル系まで混在するため一筋縄でいくわけではない。ただ、政府提出の予算案に反対の立場ならば、少なくとも「修正」においてまとまることができるはずである。 

 

 

 たとえば、立憲はガソリン価格に上乗せされている「暫定税率」の廃止や小中学校の給食費無償化、高校授業料無償化などを予算修正案に盛り込む。維新は教育無償化に加え、市販薬で代替可能な薬を公的医療保険の適用外とすることや医療のデジタル化など、社会保険料引き下げ策の早期スタートを予算案賛成の「必要条件」としている。国民民主は昨年12月、「年収103万円の壁」見直しや「暫定税率の廃止」で与党と合意している。 

 

 これを見れば、少なくとも「教育無償化」や「暫定税率の廃止」は主要野党3党でまとまることができるはずだ。物価高対策や社会保険料の引き下げ策なども程度の違いはあれ、政府・与党に「野党案」を突き付けていくことが可能と言える。もちろん、財源とセットで示す必要性が生じるが、それもスキーム次第だろう。石破政権は、患者の医療費自己負担を抑える「高額療養費制度」の上限額引き上げを検討しているが、これも野党が結集すれば凍結できる。 

 

 立憲の野田代表は2月14日の記者会見で「現実的に実現可能な予算だ」として、政府予算案に対する総額3兆8000億円規模の修正案を発表した。基金や予備費、地方創生関連交付金などを削減して財源を捻出し、給食無償化や高校無償化、「暫定税率」の廃止、高額療養費制度の自己負担上限額の引き上げ凍結などを政府・与党に迫る。 

 

 ただ、今夏の参院選の「1人区」で野党候補を一本化する可能性を模索するくらいならば、野党第1党として維新や国民民主と足並みをそろえて政府・与党に突き付ける方が良いのではないか。自民党サイドからすれば、一部の野党議員の賛成を取り付けさえすれば予算は成立できる。それが立憲だろうが、維新だろうが、国民民主であろうが構わない状況の中で政策実現のための「ディール(取引)」があまりに下手と感じてしまう。 

 

 維新の前原誠司共同代表は2月12日の党役員会で「来週中頃には予算案の賛否は決めなくてはいけない」と述べた。国民民主は玉木雄一郎代表の役職停止期間が3月頭に終了するが、先に触れた通り予算案の自然成立期限は3月2日。政府・与党は、いずれかの党の主張を踏まえて修正に応じるのだろう。つまり、野党全体にとって「絶好の好機」が到来したにもかかわらず、主導権争いでまとまることができず、政府・与党の掌で転がされて終了する見通しなのだ。 

 

 

 壮絶な「ディール」で世界中を翻弄する米国のトランプ大統領のようなパワーを発揮することまでは期待しないが、少数与党の衆院においては野党も責任があるという自覚を持ってもらいたい。率直に言えば、2月7日に米ワシントンで行われた石破首相とトランプ大統領の首脳会談を「一定の議論ができたのではないか」(野田代表)、「日米同盟の抑止力・対処力強化を確認したことを歓迎する」(前原共同代表)、「率直に評価したい」(国民民主党の古川元久代表代行)などと野党幹部が一様に評価していたことにも疑問を抱いてしまう。 

 

 石破首相が自画自賛する訪米成果が「幻」であったことは、日に日に明らかになってきている。「金の兜」を持参し、約150兆円の対米投資や液化天然ガス(LNG)の輸入拡大などを“土産”とするヨイショ外交が行われたが、トランプ氏は鉄鋼とアルミニウムの輸入に25%の関税を課す大統領令に署名。日本も対象となる見通しの「相互関税」導入を検討している。 

 

 林芳正官房長官は対象除外に向けて「米側と意思疎通している」と述べているが、「大きな土産を持って行っても関税は課せられた」(立憲の福山哲郎元幹事長)となれば、あれだけのヨイショは何だったのかと思いたくもなる。首相は「率直な意見交換を通じて信頼関係構築に向けた一歩とすることができた」と首脳会談の成果を誇示するが、もはや首相を「(トランプ氏を相手に)結論から話せましたね、すごい!」「よくできましたね~」などと持ち上げる人は少ないのではないか。 

 

 何よりもビックリしたのは、首相が米国からの追加関税に関し「首脳会談で議論はなかった」と述べていることだ。さらにウクライナ情勢は「取り上げることはできなかった」といい、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収計画については「具体的な出資割合に関する議論はなかった」、核兵器禁止条約の締約国会議参加に関しても「特段のやり取りを行っていない」という。つまり、肝心要のことは日本のトップリーダーとして「議論していない」のだ。 

 

 初めての対面での首脳会談で「果実」を求めるのは酷であるとの指摘もあるだろう。ただ、何か具体的に得られたものはあるのだろうか。国内に目を移しても、石破政権になって政治が前進したと感じている人々はどれだけ存在しているだろう。 

 

 150兆円規模の対米投資に石破首相が言及したことをめぐり、国民民主の榛葉賀津也幹事長は「日本国民にも投資してもらい、減税をしっかりやってほしい」と述べているが、物価高に苦しむ国民に寄り添うのは宰相としての責務であるはずだ。 

 

 野党時代の自民党重鎮は筆者に「3歩進んで、2歩下がる。そうすれば1歩は必ず進んでいる」と民主党政権に対する戦略を明かしたことがある。政府・与党の失政は野党を中心に国会を通じて正し、国家と国民生活を守るのだという意志を感じたものだ。だが、今の主要野党からは迫力も戦略もあまり感じられない。来年度予算案をめぐる攻防が最終局面を迎える今、責任政党としての自覚が問われる。 

 

佐藤健太 

 

 

 
 

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