( 268619 )  2025/02/22 04:31:45  
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投資における注意点は、長期投資が必ず儲かるという根拠はないことが挙げられる。

多くの人が「長期投資ならリスクが低い」と考えがちだが、実際には将来を予想することは容易ではない。

また、経済が右肩上がりだった過去のイメージが長期投資のリスク低減に寄与している面もある。

投資のプロも長期投資を真剣に考えることは少なく、インデックス投資でも必ずしも利益が得られるわけではない。

つまり、過去の経済状況や投資結果に惑わされず、リスクを理解した上で投資を行うことが重要である。

(要約)

( 268621 )  2025/02/22 04:31:45  
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pattanaphong Khuankaew 

 

投資をする際の注意点は何か。経済ジャーナリストの荻原博子さんは「ここ10年間で株価が上昇に転じただけで、これから10年間は下がり続けるかもしれない。簡単に予想できる1週間よりも、予想できない10年のほうが投資のリスクは少ないというのは根拠がない」という――。 

 

 ※本稿は、荻原博子『65歳からは、お金の心配をやめなさい』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。 

 

■「長期投資は確実に儲かる」に根拠なし 

 

 短期の投資は危ないけれど、「長期投資」なら損をするリスクが低くなるのではないかと思っている人がかなりいます。 

 

 それは、「投資のプロ」がそう言っているからです。 

 

 投資アドバイザーを名乗っている人たちは、口を揃えて、「長期投資、分散投資、積立投資こそ、投資の王道だ」と主張します。 

 

 それを聞いた多くの方が長期投資、分散投資、積立投資なら、素人が投資してもリスクは低いと思い込んでしまうのです。 

 

 でも、それはほんとうでしょうか? 

 

 それでは、まず、長期投資の常識を疑うところから始めましょう。 

 

 突然ですが、簡単なクイズを出します。 

 

 皆さんが投資をするとしたら、どちらのアドバイスに従いますか? 

 

 ・「目先の値上がりが見込めそうなので、短期投資でいきましょう」 

・「将来に備えた投資ですから、長期でじっくり投資していきましょう」 

 

 ほとんどの人が、後者を選ぶのではないでしょうか。 

 

 なぜなら、短期投資だと価格が下がるだけというリスクもあるので怖いけれど、長期投資なら価格が上下しても、右肩上がりならリスクも低くなると思い込まされているからです。 

 

 はたして、長期投資なら、ほんとうにリスクは低いのでしょうか。 

 

■10年後より、1週間後のほうが予想しやすい 

 

 身近な例で考えてみましょう。 

 

 皆さんは、1週間後と10年後、どちらの未来を予想しやすいですか? 

 

 1週間後は、いまとほとんど変わらない生活をしているだろうと簡単に予想できますよね。 

 

 けれど、10年後となると、定年退職して日々の生活はずいぶん変わっているだろうとか、親の介護をしているだろうとか、妻に先立たれて1人暮らしをしているかもしれないなど、いろいろな状況が想像できます。なかには、10年後のことなど、まったく予想できないという人もいらっしゃるでしょう。 

 

 「投資」の世界も同じで、10年後を予想できる人はいません。 

 

 この5年間を振り返ってみただけでも、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻など誰も予想していなかったことが起こりました。10年先を予想するのは、神様でも難しいでしょう。 

 

 それなのに、なぜ、簡単に予想できる1週間よりも、予想できない10年のほうが、投資のリスクは少ないと断言できるのでしょうか。 

 

■右肩下がりになると、売りたくても売れない状況に 

 

 長期投資の方がリスクが低いと思い込んでしまうのは、日本経済が右肩上がりだった頃のイメージを捨てきれていないからではないでしょうか。 

 

 たしかに日本経済が右肩上がりに発展していた高度経済成長期やバブル期には、「長く続けていけば、いつか良くなる」と信じられましたし、入社時には低い給料でも、年功序列制度で誰もが出世できて、給料も上がっていきました。 

 

 「会社を辞めたい」と愚痴を吐いても、先輩から「もう少し辛抱しろよ。長く働いていたら、この会社にいて良かったと思える日が来るから」と諭されたものです。 

 

 その先輩の言葉どおり、我慢して働き、気がついたらけっこう良いポストに就いていた。そんな自分の経験と重ね合わせて、「長期」という言葉がすんなり受け入れやすかったのでしょう。 

 

 しかもこの世代は、貯金の金利が高かった時代に、長期で預けたお金が大きく増えて戻ってきたという経験もあります。 

 

 けれど、「投資」と「貯金」は違います。 

 

 「貯金」は年月をかけて計画的に積み上げていけば必ず増えていきますが、「投資」はその時の経済情勢によって増えたり減ったりするし、必ずしも増えるとは限りません。 

 

 バブル崩壊後の不動産のように、右肩下がりに下がっていくと、時間が経つほど値下がりして、売りたくてもますます売れない状況になります。 

 

 

■投資のプロは、「長期」など考えない 

 

 投資を考えている人が金融機関へ相談に行くと、必ず見せられるグラフがあります。直近10年間の日経平均です。 

 

 「10年前に1万円で買った投資信託が、いま3万円になっています」などと言って右肩上がりのグラフを見せられると、「長期投資なら、こんなに儲かるのか」と思い込んでしまいます。 

 

 けれど、株価が上昇に転じたのはここ10年間ほど。 

 

 バブルが崩壊してから、日経平均は10年間下がり続けました。1989年の年末には3万8915円でしたが、10年後には1万5000円を切り、2003年には8000円を切るまでになったのです。 

 

 同じ10年間のグラフでも、株価がだだ下がりしているグラフを見せられれば、投資などしようとは思わないでしょう。 

 

 つまり、同じ10年間でも、切り取り方によって素晴らしく見えたり、怖く見えたりするのです。 

 

 しかも、これらはすべて過去のこと。この先も右肩上がりになるとは限らない。もしかしたら、これから10年間、下がり続けるかもしれません。 

 

 そもそも、「長期投資」を考えて運用しているプロは、1人もいないと言っていいでしょう。 

 

■35年前に買った日経平均のインデックス投信売却で損も 

 

 「長期投資におすすめの商品ですから、長い目で見たら安心です」と言われても、これを運用するファンドマネージャーは、短期間で良い運用実績を出すことしか考えていないと思います。 

 

 投資信託の運用では、3カ月ごとに決算日があるものが多く、そこで運用実績が悪いとボーナスが減るかもしれないし、外資系などでは、クビになるケースもあります。 

 

 そんな人たちが、長期投資を本気で考えるわけがありません。 

 

 もちろん、インデックス投信など、ファンドマネジャーが運用するのではなく、特定のインデックス(市場の動向を示す指標や指数)に連動して自動的に買っていく投資信託もあります。 

 

 ただ、インデックス投信も必ず右肩上がりになるわけではありません。 

 

 たとえば、1989年の年末に3万8915円だった日経平均は、2024年9月末現在で3万7919円。もし、日経平均のインデックス投信を35年前に買っていたら、長期で儲かるどころか、売却すればマイナスになる(この間、手数料も引かれている)のだと肝に銘じておいたほうがいいでしょう(平均利回り1〜2%程度のリターンはあります)。 

 

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長期投資で儲かったのは、 

経済が右肩上がりだったから! 

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荻原 博子(おぎわら・ひろこ) 

経済ジャーナリスト 

1954年、長野県生まれ。経済ジャーナリストとして新聞・雑誌などに執筆するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとして幅広く活躍。難しい経済と複雑なお金の仕組みを生活に即した身近な視点からわかりやすく解説することで定評がある。「中流以上でも破綻する危ない家計」に警鐘を鳴らした著書『隠れ貧困』(朝日新書)はベストセラーに。『知らないと一生バカを見る マイナカードの大問題』(宝島社新書)、『5キロ痩せたら100万円』『65歳からはお金の心配をやめなさい』(ともにPHP新書)、『年金だけで十分暮らせます』(PHP文庫)など著書多数。 

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経済ジャーナリスト 荻原 博子 

 

 

 
 

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