( 268779 )  2025/02/22 16:14:43  
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ドン・キホーテの運営会社が営む渋谷の商業施設「道玄坂通」が苦戦しているが、そこで人気の店も存在する。

施設は通路を兼ねたユニークな構造で、特に注目を集めている店はタピオカドリンク店「ゴンチャ」である。

他のテナントが撤退する中、「ゴンチャ」は施設や店のコンセプトとマッチし大盛況である。

他にも施設内で「道玄坂通」ならではの取り組みを試みる店があるが、うまくいっていないところも多い。

ドンキは次なる「ダジャレ」を模索しているが、良い意味での「おドろき」を提供するテナントを期待している。

(要約)

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ドンキの運営会社が営む渋谷の商業施設「道玄坂通」が大苦戦している。しかし、そこで一人勝ちする店もあるようだ(筆者撮影)  

 

 渋谷の商業施設「渋谷サクラステージ」がガラガラだ――という話題が盛り上がっている。東急不動産が2024年7月に全面オープンしたものの、人の姿もまばらな施設内の写真がSNSで拡散されるなど、悪い意味で注目を集めてしまっている。 

 

 が、実はそれだけでない。同じく渋谷の商業施設「道玄坂通 dogenzaka-dori」(以後、「道玄坂通」)の集客状況も芳しくはなさそうだ。  

 

 「ドン・キホーテ」で知られるパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(以後、パン・パシフィック)が2023年8月、鳴り物入りで開業したものの、2025年2月半ば現在、全9区画ある1階飲食店ゾーンでは既に2つのテナントが撤退している。 

 

 残るテナントは健闘しているところもあるが、一部はリニューアルを繰り返すなど厳しい状況にある。  

 

 そんな中、大盛況の店もある。本稿では同施設の状況を解説しつつ、一人勝ちしている「ある店」の勝因について考察したい。  

 

■施設が通路を兼ねたユニークな構造  

 

 まず「道玄坂通」について説明したい。  

 

 名前の通り渋谷・道玄坂にあるこの施設は、1階部分に出入口が3カ所あり、施設の中と外が道のようにつながっているのが特徴だ。施設を利用しなくても通路として活用でき、街の回遊性を高めている。 

 

【画像16枚】立地は最高なのに大苦戦の渋谷「道玄坂通」。“おドろき”満載な店のチョイスとその並び 

 

 その通路沿いに飲食や小売のテナントが複数並び、2階にはジムや歯医者、ダンススクール、さらにその上階はオフィスやホテルになっている。  

 

■パンパシ本丸の「ドンキ」が2度の閉店で“おドろき”を提供  

 

 同施設の目玉は、パン・パシフィック本丸の「ドン・キホーテ」だ。開業当初はおドろき専門店「ドミセ」としてオープン。「ドン・キホーテ」のPB商品を中心に“おドろき”を届けるという新ブランドだった。 

 

 

 しかしお客はまばらな状態が続き、2024年4月、店側から「大々的なオープンから1年を待たずして閉店という一番の『おドろき』を提供する事態になりました」という自虐的なリリースとともに閉店した。  

 

 その後、「キラキラドンキ」にリニューアル。Z世代やSNSを意識したブランドだったが、これもうまくいかず、数カ月足らずで閉店。2回目の“おドろき”を提供してくれた。  

 

 現在は「MEGAドンキ渋谷別館」として営業しているが、やはり客入りは厳しいように見える。 

 

 すぐ向かいにある「MEGAドン・キホーテ渋谷本店」はインバウンドなどの買い物客でごった返しているのを見ると、ずいぶん対照的だ。  

 

■カフェVSカフェの“おドろき”の配置  

 

 それ以外にも“おドろき”があった。文化村通り沿いの入り口には、「猿田彦珈琲」と「THE CITY BAKERY(ザ シティ ベーカリー)」が向かい合うかたちでオープンしたのだ。  

 

 この2店舗はどちらもカフェ業態。通常、商業施設では同じフロア内、ましてや向かい合って競合となる業態を入れることはめったにない。「猿田彦珈琲」はスペシャルティコーヒーの店、「THE CITY BAKERY」はベーカリーカフェという違いはあれど、商品もかなり重複する。 

 

 「THE CITY BAKERY」はコーヒードリンクにも力を入れているし、「猿田彦珈琲」は「オキーニョ」というベーカリーブランドを持っており、「道玄坂通」の店舗でもそのパンを提供している。  

 

 飲食業界的にはある意味掟破りであり、本来はあり得ない組み合わせだが、狙ってなのだろうか。それとも、どうしても他のテナントを見つけることができなかったのだろうか。  

 

■1個715円のジェラート店が撤退  

 

 そんな「道玄坂通」では、ここのところ、テナントの撤退が続いている。昨年秋には、ジェラート店「Giolitti(ジョリッティ)」が、そして今年に入って惣菜店の「eashion fun SHIBUYA(イーション ファン シブヤ)」が相次いで撤退。現在、この2区画が歯抜けになっているのだ。 

 

 

 「Giolitti」は、他に原宿や有楽町にも店舗があるが、今回は立地と業態に決定的なズレがあったように思う。  

 

 筆者もふらりと入ってみたことがあるが、ジェラートは一番安いシングル(1種)でも715円、トリプル(3種)のコーンだと935円、また2000円近いパフェもあった。  

 

 この時は、筆者も「使い方を間違えたな」と思った。通路の途中にあり気軽な休憩で入ったつもりが、価格帯的にもう少し楽しみにしながら行く店という印象を持った。ジェラートは美味しかったが……。 

 

 あまり客入りはよさそうに見えず、特に冬場は厳しそうだった。案の定、閉店となってしまったが、抜け殻になった店舗の前で通りがかりの親子が「ママー、なんであのジェラート屋さん閉店したの?」「高いからだよ」と会話していたのが聞こえた。  

 

 一方で「eashion fun SHIBUYA」は、駅ナカ施設やデパ地下を中心に出店している惣菜ブランド「eashion」の新業態だ。「道玄坂通」の店舗では、施設上階オフィスや近隣のワーカーのランチ需要を狙ったであろう弁当が多く並んでいた。 

 

 筆者の印象だが、野菜など栄養バランスは考えられていたもののややボリュームが足りず、その割に値段も安くなかった。ちょっと特別感のあるデパ地下であれば違和感はないが、ワーカーの普段のランチ使いとしてはズレが生じていたように思う。  

 

 また、若者に向けた韓国グルメや「推し色ドリンク」など、「道玄坂通」ならではの商品を打ち出していたが、安易にトレンドを取り入れた感も否めず、これも奮わなかったようだ。  

 

 どちらのブランドも、他の店舗はうまくいっているところも多いようだ。決してブランドの魅力がないわけではなく、今回は立地にうまくハマらなかったと思われる。 

 

■そんななか、「ゴンチャ」だけやけに混んでいる  

 

 そんな中、道玄坂小路に面した入り口すぐの区画で営業する「ゴンチャ」には、いつも人が集まっている。店内のイートインスペースはいつもタピオカを楽しむ若者でいっぱい。店内のみならず、周辺にあるベンチにもタピオカ片手にくつろぐ人があふれている。  

 

 この「道玄坂通」には、自由に座れるベンチが至るところに設置されている。アフターコロナ以降、コロナの反動によるリベンジ消費やインバウンドの増加も相まって渋谷の人出はすさまじい。休日ともなればカフェはどこも激混みで、座ってひと休みできる場所を探すのもひと苦労だ。 

 

 

 「道玄坂通」のベンチは、おそらくこうした状況を踏まえて意識的に設置していると思われる。座れる場所を用意することで、人の集まる場所になるし、テナントのテイクアウト商品の購入も促進される。  

 

 「ゴンチャ」のドリンクは疲れたときやリフレッシュしたいとき、ちょっとしたご褒美として購入するのにうってつけの商品。 

 

 渋谷の人ごみに疲れてようやく見つけたベンチでひと息ついたら、すぐそこに「ゴンチャ」が。ついつい、タピオカでも飲みたくなってしまうし、寒い冬でも、この店は温かい飲み物がある……。 

 

 「ゴンチャ」大盛況の要因は、施設の造りと店のコンセプトが見事にマッチした結果に他ならない。ドリンク片手に友人とひと休み。施設が実現したかったのは多分この光景だったはずだ。  

 

■ドンキ、次なる“ダジャレ”を披露…  

 

 そんななか、つい先日、「eashion fun SHIBUYA」跡に自販機専門店なる店舗がオープンするとの張り紙が。 

 

 おそらく、テナントは決まらないものの空気に貸しておくよりは自販機を置いて何かしらの賑やかしをつくりたい考えなのだろう。確かに、自販機であれば人件費もかからず低コストで運営できる。 

 

 「ドミセ」の“おドろき”から懲りていないのか、「ジハン.キホーテ」という店名で、やはりダジャレを利かせることに余念がない。  

 

【本文中で紹介できなかった画像も!】立地は最高なのに大苦戦の渋谷「道玄坂通」。“おドろき”満載な店のチョイスとその並び 

 パン・パシフィックはダジャレを考える前に、この立地で業態の魅力が最大限に発揮されるテナントを入れてほしい。なにせ立地はとてもいいので、「ゴンチャ」の盛況を一筋の光として、テナント次第では大化けもありうるはず。 

 

 多くの人が集まる場所をつくり、次こそいい意味での“おドろき”を提供してほしいと切に願っている。  

 

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