( 268834 )  2025/02/22 17:10:31  
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2月13日に署名された「相互関税」について、記事ではトランプ政権が元々計画していた一律の関税よりも穏やかな措置であると解説している。

一律関税は政治的に困難であり、代わりに相互関税が提案された。

相互関税は、トランプ政権としては連邦議会との摩擦を避けやすい政策であり、共和党内からも支持を得やすいとされている。

第一次トランプ政権時代にも提案されたアイディアであり、第二次トランプ政権でも影響力を持つ人物が推進している。

(要約)

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(c) Adobe Stock 

 

 なかなか実現が叶わなかったトランプー石破会談。それが2月7日(日本時間2月8日)、ついに開かれた。この会談の成果については意見がわかれており、「初めての会談としては上出来」「日本はお土産ばかりで何も得られなかった」と様々だ。そんな中で、2016年にトランプの初当選を予言した国際政治アナリストで早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏はどう見るのか。全3回に渡って解説していく。第3回は相互関税についてーー。 

 

 トランプ大統領が2月13日に覚書に署名した「相互関税」が世界経済を揺らしている。しかし、筆者にはこの相互関税は当初予定されていた「全ての輸入品に対する一律関税」に比べれば非常に温い内容に思える。むしろ、トランプ政権が貿易問題に対して譲歩した政策を取ったと考えたほうが良いだろう。 

 

 トランプ大統領が元々表明していた全世界から米国に輸出される製品・サービスに一律20%程度の関税をかける政策は、国際緊急経済権限法を用いれば法的には実行可能なものだった。しかし、実際には「緊急性」に関する大義名分は欠けており、トランプ大統領の決定に対して、司法府が疑義を唱えて介入する余地が残っていた。そうなった場合、共和党内からも一律関税に対する潜在的な不満が表面化する可能性もあり、連邦議会側から大統領の権限を抑制する法改正が実現する余地が行われかねない。 

 

 そのため、現状の連邦議会における与野党議席差は非常に小さいことに鑑み、トランプ政権としては連邦議会議員との無用な衝突は避けるインセンティブがあることは確かだ。したがって、トランプ大統領にとって、当初の一律関税のアイディアはやろうと思えばできるが、政治的には絵に描いた餅となっていたと言えよう。 

 

 そこで、代替案として登場したのが「相互関税」だ。一律関税と同じように、全世界の国々に対して関税強化を検討することは同様であるが、貿易相手国と同レベルの関税を課す、という相互関税は、共和党内からの政治的に理解が得やすい。実際、相互関税の導入の大統領覚書に対して、マイク・ジョンソン下院議長からも称賛の声が寄せられている。相互関税導入自体は第二次トランプ政権下での政治的ハードルは高くはなさそうだ。 

 

 

 実は、相互関税のアイディアは、第一次トランプ政権下でも提唱されたものだ。「米中もし戦わば」の著者として知られるピーター・ナヴァロ氏がホワイトハウス貿易製造政策局在任時に押し進めた政策であり、商務長官のウィルバー・ロスも一定の理解を示していた政策でもある。ナヴァロ氏は第二次トランプ政権に対する共和党保守派グループ(プロジェクト2025)からの政策提言集である「Mandate for Leadership 2025」の中で、公平な貿易に関する章の執筆を担当し、相互関税の導入に関しても強く推していた。 

 

 第二次トランプ政権下においても、同氏はホワイトハウスの通商・製造担当上級顧問に就任しており、トランプ大統領の貿易政策に関して影響力を持っている。第一次トランプ政権時代は、関税引き下げによる自由貿易を主張する共和党内の声が今よりも強く、大規模な相互関税政策は日の目をみることはなかったが、第二次トランプ政権では早速目玉政策として採用される形となった形だ。 

 

 

 
 

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